クラブ活動

混声合唱部

2022/06/28

<混声合唱部> 合唱祭出演報告

混声合唱部は6月18日(土)に新潟市音楽文化会館で行われた、第63回新潟県合唱祭に出場しました。

 

 その日、文化会館と周辺には音が溢れていた。行き交う人々の足音、芝の上で遊ぶ子供たち、木々のせせらぎ、虫の音、車の走行音、昼食を食べる高校生たちの会話、会場内での受付のアナウンス、検温の電子音、パンフレットを受け取り、期待を口にする観客の言葉、出番前の若者たちが、整列して廊下を渡る際のローファーのゴム底と磨かれた床の接触音。ホールの入り口で、現在演奏中の団体が奏でる和音をドア越しに聞き、遠くに鳴る拍手を確認してからそっと扉を押し開け、温度の違うホールの中に入る。素早く会場内を確認し、空いている中で最も音響の良さそうな所へ向かい、空席であることを確認して椅子の上に体を滑り込ませる。安堵の気持ちがまず胸を満たし、次に期待が高まる。そしてアナウンスがあって敬和の生徒たちが下手袖から舞台に入ってきた。一年生は緊張と不安を抑え込みながら、二年生はそれを落ち着かせるように、三年生は堂々と自信を持って。そして演奏が始まった。すると、それまで会場にあった音が消え、その場を1つの音楽が支配した。

 正確にはパンフレットをめくる音や衣擦れの音などはあるが、それを舞台上から放たれる歌が、エネルギーが飲み込み、音楽の一部にした。出自も歴史も、立場も年齢も違う人々が同じ場所、同じ時に集まり、そして音楽を通して一つとなる。これほど素敵な体験は滅多に出来るものではない。また聴衆と一体化する生演奏ならではの良さは、近年のコロナ騒動によってその価値が再確認され、以前よりいっそう大切にされつつある。歌い手は常に聞き手によって磨かれ、育てられる。それは昔から言われる真理の一つである。やがて音楽が終わり、拍手の中で彼らは舞台から去った。やり遂げた自信と、充実感をマスク越しの表情に浮かべながら。音楽から解き放たれ、口々に感想を述べながら、人々が入れ替わる。今ここで同じ音楽を共有した彼らと、再び交わるときがあるのだろうか、もしあるとすればそれはどの演奏会の時だろうか。そんなことを考えながら、ホールの扉を押し開け、再び音の満ち溢れる世界へ戻って行った。