「本品に水を加え、耳たぶの硬さになるまでこねてください」一度だって納得できたことはなかった。何度も、粉で真っ白になった指先で自分の耳たぶに触れてみる。ふにふに、と。違う。これではない。お腹の中におさまることとなるものをこしらえる大事な工程なのに、こんな曖昧な基準に頼ってもよいのだろうか。小学生なりに考えていた。もう一度、耳たぶに触れる。今度は髪の毛まで粉をかぶる。ふにふに。違う。納得できなかった。私の耳が物足りないだけなんだろうか、隣に立つ姉の耳で確かめてみたいと思ったこともあった。

　こんな私の葛藤をよそに、ぼこぼこと泡の吹き出るお湯にぷかんと浮かんでくる白い丸たちは、いつ食べてもやわらかく、まるく、おいしかった。私の耳たぶなんかよりも断然すてきだった。さっき粉だらけの指で触れたところが、乾燥してかぴかぴになっていることも忘れ、至福のひとときに浸る。

　今日のランチは、白玉だんご。向かいに座っていた生徒が一口食べて、一言「おいしい。」しらたまだんご、この言葉がぴったりのまん丸な笑顔をしていた。

(M.A)