毎日の礼拝

校長のお話

2016/07/04

「すイエんサー」(ローマの信徒への手紙11章33~36節)

私はテレビをよく見ます。その一つにNHK・Eテレの「すイエんサー」があります。

火曜日の夜に放送されています。

「すイエんサー」はかなりゆるめの科学エンターティメント番組です。

この番組が取り上げるテーマは日常生活の中にあるちょっとした疑問や、なんだか気になること、それでいて答えがそうそう簡単に見つけられないものです。

たとえば「あっち向いてホイに絶対勝つにはどうしたらいいのか」。

「超簡単に走るのが速くなる方法はないのか」などです。

この番組の人気コーナーにレギュラー出演しているのが「すイエんサーガールズ」と呼ばれる高校生たちです。

そして「すイエんサーガールズ」と対決するのが、東京大学、京都大学の学生、大学院生です。

大学の名前を聞いただけで、たいていの人はその学生は頭がよくて、勉強がよくできると思う大学の学生です。

科学的な問題で対決するのですから、大学進学などあまり考えていない、勉強が得意とは思っていない高校生の「すイエんサーガールズ」と、勉強ができることでは絶対的な自信のある大学生とでは、最初から勝負にならないと思われがちです。

しかし、結果はそうではありません。

たとえば東大生との最初の対決はペーパーブリッジ作りでした。

A4の紙15枚を使って橋を作り、そこにおもりを500gずつぶら下げていって、どこまで耐えられるかを競うものでした。

ルールは、作るのに与えられた時間は5時間、外からの情報は一切シャットアウト、自分たちだけで考えて作るというものでした。

結果、東大生の記録は5kgで、すイエんサーガールズは18.5kgでした。

彼女たちが圧勝したのです。

なぜこんな結果になったのでしょうか。

東大生がまず始めたこと、それはアイデアを黒板に書くことでした。

今までに身につけた知識や法則をあれこれ書いていきます。

そして黒板に書かれた数式や図を見ながら議論を始めます。

きわめて論理的に橋の構造を考えて作ろうとしたのです。

一方「すイエんサーガールズ」は科学的知識がほとんどありません。

その彼女たちが始めたことは、紙をあれこれ形にしていくことでした。

とにかく手を動かして作るのです。

その最中に誰かが何かひらめいたら、そこで話し合います。

それもいいんじゃない、それじゃやってみようと、相手のアイデアを否定せず、試していくのです。

彼女たちは失敗を恐れることなく、メンバーの意見を否定せず、ムダになってもいいからと前向きに、楽しそうに作っていったのです。

 

ガチンコ対決から見えてくるものがありました。

それは本当の賢さや知力、生きる力は、机の前で、そして頭の中で考えているだけでは身につかないことです。

手や指や体を動かしながら考える、それによって初めてわかることやできることがあるのです。

私はすイエんサーガールズの自由な発想と楽しそうな取り組み方に敬和学園の教育に通じるものを感じました。

敬和学園は身近なこと、そして行事にも真剣に取り組む学校だといわれます。

その理由は具体的に頭を使い、体を動かすことが、そして失敗やムダすることで、本当の知識や知恵を身につけることができると考えているからです。

そういう学び方を身につけることが、生きる力を育むと信じているからです。

そして大学生と「すイエんサーガールズ」の間には決定的な違いがあると感じました。

東大生は紙で橋を作る間、ずっと難しそうな顔をしていました。

笑うことが悪いかのように、楽しく取り組むことがダメとばかりの態度と表情でした。

とにかくよい結果を出すことがすべてのようでした。

それに対して、すイエんサーガールズは終始明るい表情で笑い声が絶えません。

あせることなく、考えること学ぶことを一緒に楽しんでいるようでした。

表情と雰囲気の違いが結果に出たということもできます。

 

今年の学校紹介パンフレットが、見たことがあるでしょうか。

これです。

表紙ですが、敬和学園を斜め上から見た見取り図です。

もともとのアイデアは、3月に卒業した山下智大君が作成した46回生の卒業アルバムの表紙です。

それを見た私が、これは最高、今年の学校紹介パンフレットは、このコンセプトでやらせてもらいましょうと、パンフレット用に編集しなおしてもらったものです。

驚きなのは、デザインのすべてがコンピュータのドットを使って描かれていることです。

びっくりなのは、描かれている人物ですが、すべて実在の人物だということです。

敬和学園の教職員と3月に卒業して行った46回生です。

山下君は、目を凝らして見れば、あるいは拡大して見れば、それが誰かわかるように描いているのです。

私も載せてもらっています。

そして我が家にいつの頃からか居候をしているネコの織姫もいます。

私はこの中に自分を見つけた時、自分の雰囲気はこんなもんだろうなと、変に納得して笑ってしまいました。

表紙をめくると、見開きで乗っているが、私たちが今いるチャペルの外観です。

白い点々はスプリンクラーでクラス畑に水をまいている時に映ったしぶきです。

学校紹介パンフレットを見た人は思うはずです。

表紙と表紙の内側の写真との間には大きなギャップがあると。

実はそこが大切なのです。

そのギャップの幅が、敬和学園が一人ひとりを受けとめる幅でもあるのです。

そこが一人ひとりの違いや個性を否定せず、よいものとして受けとめる幅になっているのです。

 

その敬和学園で学ぶ一人ひとりが取り組むべきことがあります。

さきほど、すイエんサーガールズの自由な発想と楽しそうな取り組み方に敬和学園の教育に通じるものを感じるものがあるといいました。

そして敬和学園は身近なこと、そして行事に真剣に取り組む学校だといいました。

その理由が、具体的に頭を使い、体を動かすことが、そして失敗やムダすることで、本当の知識や知恵を身につけることができるからだといいました。

そこで定期テストについて考えます。

行事でいうならば、定期テストは間違いなく行事です。

1年に5回行う定期テストは敬和学園にとって大切な行事です。

一人ひとりが主体的に取り組む行事以外の何物でもないのです。

その定期テストの2回目、第2定期テストが3年生2年生は明日から、1年生は明後日から始まります。

つべこべ言わずに、とにかく手を動かし頭を動かす、そこから道は拓かれます。

それを信じること、取り組むこと、それによって本物の敬和生になっていくのです。

本物の敬和生になっていくチャンスをしっかりつかみましょう。