敬和の学園生活

日常の風景

2014/07/07

授業訪問 <理科>

生物基礎

理科 真野 泉

 

  生物基礎は2、3年生対象の選択科目で、週2時間の授業です。本年度は約160人と非常に多くの生徒が履修しているため、全部で6クラス開講しています。

 遺伝子や健康、環境など日常生活や社会にかかわるテーマを通して生物や生命現象に対しての興味・関心を高め、生物や生命現象のもつ多様性を踏まえつつ、それらの共通する生物学の基本的な概念や原理・法則を理解するのが目標です。

 今学期は、DNAの抽出と観察の実験を行いました。

 「ブロッコリーの花芽をよくすりつぶして、台所洗剤と食塩と水で作った溶液とまぜあわせ、100円均一で購入した茶こしで濾す。得られた緑色の液に、消毒液でおなじみのエタノールを静かにそそぐとDNAがふわふわと浮かんでくる」、という手順です。

 この実験のミソは、遺伝物質DNAという、いかにも堅苦しく、手の届かない遠い世界に存在していそうなものが、自分の身の回りにあるものを使って、自分で簡単に取り出せるという意外性です。

 生徒たちは「えー?ブロッコリー?」「なんで洗剤なの?」と、目の前に並んだ理科の実験らしくない材料に目を丸くし、開始の合図とともに班のメンバーと協力し、試行錯誤しながら、楽しそうに実験をすすめました。

 中には手順を間違えて大慌てで修正する班や、なにをどうやったのかDNAの入った抽出液(もともとは台所洗剤)を泡立たせて慌てふためく班もありましたが、どの班もDNAの抽出がうまくできたようです。

 しかし、生徒は抽出されたDNAを前に「これがDNA?」「これでいいの?」と半信半疑。

 なぜなら、教科書に描かれたDNAは、とてもカラフルで機械的で美しい二重らせん構造。それに対し、目の前の本物のDNAはやわらかすぎてつまめず、触ると溶ける、調理中の鍋に浮かぶアクのようなブヨブヨしたもの。どうやら自分の頭で造り上げたDNAというイメージと実物の差に驚き、少しとまどっている様でした。

 生物基礎で学ぶ内容は、電子顕微鏡で見るほどとても小さいものが対象だったり、人体のしくみだったり、肉眼で確認しづらいものが多いのですが、今回の実験を通して生徒たちは、教科書やニュースでしか知らなかった事柄を、自らの体験に結び付け、身近に感じることができたとことと思います。

 この授業は、生徒たちが今まで考えたことのなかった目で見えないものの存在を学び、感じ取り、想像し、40億年地球上で受け継がれた生命のシステムに触れるチャンスです。日々の授業は難しく感じるかもしれませんが、一年間の学びを終え、振り返ったとき、いままでぼんやりとしていた生命の尊さ、大切さを再認識し、ひとが、また自分自身が、さまざまな生物や環境の下に存在している、生かされているということを感じ取ってくれることを期待しています。

 

< 6月24日 授業の様子 >