自分探しの敬和学園で 人を、自分を、好きになる。
2011/01/23
< 感謝 >
早いです、残り一週間となりました。何かわかりますよね?そう3年生と一緒に過ごす期間です。来週の火曜の朝に彼らは大望館を出て行きます。彼らの居場所はもう無くなるのです。若干名、不本意で残る者もいると思いますが、その人達は館の片隅で、寂しく小さくなって過ごすことになります。そして、次に全員が揃うのは修了礼拝前日。その次はもうありません。言い換えるなら、41回生のぞみ寮大望館生の寮生活があと一週間で終ることになります。
何故か今年は、あとわずかだというのに全く実感が湧きませんでしたが、3年生のラストメッセージを聞く日が続いていくうちに「卒業」という文字がはっきりして来ています。でもって、極めつけは、大望一のモテ男?じゃなくてネタ男の彼の話です。これにはやられました。不覚にも、子を持つ父親として、育つんだったら、こんな風に育って欲しい。そんな思いに駆られてしまいました。
前日のことです。S司君が自習時間中に私の所に来て言います。「明日の礼拝の話をここで作っていいですか?」でも、よくよく聞いてみると話は出来上がっているけれど、これでいいのか?悩んでいる様子でした。彼の口からはこんな言葉も出てきました。「場違いのような・・・」私の頭の中をその言葉が駆け巡りました。まさか、彼の口から「場違い」なんてキーワードが出てこようとは!?少しの間パソコンに向かい、出来上がったのか?画面をそのままにして出て行っていたので、読んでみたのが次のお話です。
<1月17日 礼拝より>
今日で大望館でのお話が最後ということで何を話そうか考えましたが、俺には人に偉そうに説ける経験もなく、かといって人を笑わせるようなユーモアもありません。そんな俺には何があるかと自分自身の過去を振り返ってみたところ、両親への感謝の気持ちが大きいことがわかりました。しかし直接面と向かって言うのも恥ずかしいのでこの場を借りて感謝の言葉を送ろうと思います。おこがましいようですが、もし良ければ皆さんの親への想いを考えながら聞いて下さい。
父へ、あなたとはいつも喧嘩ばかりしていましたね。本当に些細なことでももめてしまい、一時は家から逃げ出してしまうこともあり、本当に心配をかけてしまいました。時には仕事で疲れているのに、それを分からずひどい言葉も投げつけてしまったこともありました。でも、今まで実際に口にしたことは無いけど、いつもあなたの不器用で素朴だけど優しい愛を感じていました。俺がフラフラと道を間違えそうになったら、いつもその拳で道を正してくれて、今では本当に感謝しています。無口でちょっと子供っぽいとこもあるけど、そんなあなたに憧れ、俺は今年からあなたと同じ道を歩みます。決して平坦な道ではないけれど、あなたのように絶対に弱音を吐かない強い警察官になれるようこれからも精進して行きます。こんなバカな息子を今まで育ててくれてありがとうございました。
母へ、いつも俺の一番近くにいたのはあなたでしたね。お喋りで愚痴っぽいけど、いつも一緒に犬の散歩でもしながら俺の話しを聞いてくれたことは、あの時の俺にとっては本当に心の救いでもあり毎日の楽しみでした。でも俺も反抗期でちょっと気にいらない答えを出されたらすぐに切れて怒鳴ってしまい、暗い夜道に置き去りにして帰ってしまうこともありました。あの時は本当にあなたのことが心配で不安だったけどプライドが邪魔してあなたのもとへ帰りたくても帰れずに、ずっと玄関先であなたの帰りを待っていました。本当は俺のためのアドバイスだってことも気づいていたけど、その答えを聞いてしまうと自分の駄目な所を認めてしまうようで、あなたの答えを全否定し自分を保とうとしていました。
俺が悪いのに、あたかもあなたが悪いかのように、あたり散らしても決してあなたは俺への接し方を変えず、ただひたすら俺の側にいてくれたあなたの存在が俺を支えていました。本当にありがとうございます。この18年間本当に苦労をかけ続けてしまい、親孝行らしいことも何もできず親不幸な息子ですが、これからはあなた達の手から離れて独り立ちしなければなりません。まだまだ未熟で安心させられる事など何一つ持ち合わせてない駄目な息子ですが、お父さんお母さんのもとで育って来られたことを心から感謝して、将来胸を張って息子自慢できるような息子になるので楽しみに待っていて下さい。
俺はこの敬和に来る前は両親の事をただ邪魔な存在に感じていました、親から逃げるためにも寮に入り、親とは関わらないように長期休みもギリギリまで家に帰ることはありませんでした。しかし、いつからか疎(うと)ましさは消えて、変わりに感謝の思いと今までのわがままを悔いる気持ちが出てくるようになりました。
これが俺の三年間の成長だと思います。人にはそれぞれの成長の形があると思いますが、俺がみんなに最後に伝えたいことは、何か一つ成長できたと胸の張れる悔いのない三年間にして下さい。
不覚にもウルッと来てしまいました。そして私の時間は少し止りました。思い返せば3年前。入寮したての彼が、「オヤジは本当にうざい」なんてことをしょっちゅう口にしていたのを思い出します。そんな彼がこんな文章を書いて、それを皆の前で読むことの出来る素直さ。いろんなことがあった彼との時間が私の頭の中を駆け巡りました。41回生で唯一私が激怒してしまった彼(しかも2回)そんなことも、彼の成長にかき消されていきました。でも、私の頭の中を最後に横切った彼の姿は、新潟駅の万代口で一人黙々と踊っているちょっとイタい姿です。そのイタい姿が横切ったところで、その文章を印刷し、すぐに寮長に見せました。この喜びを誰かに伝えずにいられなかったからです。当然、寮長の胸をも熱くさせました。
ちなみに、その文章、彼の礼拝前日でまだ読まれていないものでしたが、そのまま封筒に入れ、ご両親に送らせて頂きました。面と向かって話すのが恥ずかしいでしょうから、気を利かしたつもりですが、「小さな親切、大きなお世話」だったらごめんなさい。それと、先ほど「不覚にも、子を持つ父親として、育つんだったら、こんな風に育って欲しい」そう書かせて頂きましたが、決して彼のようになって欲しいという意味ではなく、彼のような成長の過程を辿って欲しいという意味ですので、誤解が無いように!!自分の息子が人目はばからず、踊っている姿はあまり見たくありません。おーっと、思わずいつものパターンに行きかけました。
とにもかくにも、彼の成長は私たち寮スタッフにとって何よりのプレゼントで、それを彼からもらうことができました。こんな日が来るなんて、それは間違いなく、周りにいた君たちの力でもあります。敬和を選んでくれた君たちに感謝するばかりです。
(澤野)