毎日の礼拝

校長のお話

2020/09/28

「何ひとつ持たないからこそ」(士師記6:15-16)

 後期が始まりました。

3年生はいよいよ進路決定に向かって進みます。

「これから先、こういう仕事をしていきたい」「こういうことを実現していきたい」「こんな人になりたい」。

そんな「人生地図」を描くことは、いくつになっても人には必要なことだと思います。

「もう年だから、無理」「どうせダメに決まってる」と考える人もいるかもしれません。

でも“ダメ”というのは、誰が決めることなのでしょう。

自分で最初から“ダメ”と決めつけるから“ダメ”なだけで、“ダメ”だと思わなければ、“ダメ”にならないのかもしれません。

もしそうだとすれば“ダメ”と思うのをやめればよいだけということになります。

 

 ヘア&メイクアップアーティストの小林照子(こばやしてるこ)さんは化粧品会社の美容部員として入社した後、その会社初の女性取締役に就任、退社後独立して85歳の現在も第一線で活躍されています。

 若いころ小学校で今でいう補助教員のようなお仕事をされていた時のことです。

山形の町でも時々お芝居が上演されることがあり、小林さんはいつか演劇の世界に関わる人間になりたいと思っていました。それも舞台に立つ俳優ではなく、俳優たちのメイクをするメイクアップアーティストになりたいと考えていたのです。

 仕事で、家庭科の先生が使うためのろうけつ染めの授業の見本をつくろうとしていた時のことです。

流しで腕時計をはずし、夢中で作業をしました。

別の場所にうつろうとしたとき、小林さんの腕時計はなぜかなくなっていたのです。
探しても探しても見つからず、途方に暮れて、小林さんは見つけることを諦めました。

ところがその数日後、とあるご夫婦が小林さんの家にやってきました。

聞けばそのお宅の息子さんが、小林さんの腕時計を持ち去り、川に捨ててしまったというのです。

おわびのしるしにと、大きな金額のお金を包んでこられたのです。

プライドの高いお父様は、自分たちが哀れまれているような気がしたのでしょう。

お金を断固として受け取りません。小林さんも、「そんなことでよそさまからお金をいただくのは申し訳ない」と思ったので、お断りしました。

何回も押し問答が続きましたが、結局小林さん親子が根負けして、ご夫婦のご厚意を受け取ることになりました。

いつの日か東京に行って、美容学校に通う。そのお金で夢が突如として実現したのです。

 「美容学校に行ったからといって、演劇の世界で俳優にお化粧するひとになれるとは限らないよ」と心配してくれるひともいたそうです。
でも、小林さんの目標は揺るがず、やりたいことができる仕事に就き、なりたい自分になることができました。

人生には思いもかけない出来事や、出会いがあります。

そのことがなりたい自分になるためのきっかけにできるか、その出来事を言い訳にして自分はダメだと決めつけるのか、大きな分かれ道です。

 

 今朝 岩原先生に読んでいただいた箇所はギデオンという若者が神様からリーダーに選ばれたところです。

6章から続く物語です。興味のある人は読んでみてください。

神様から「あなたのその力をもって行くがよい」「私があなたを遣わすのではないか。」と言われます。

そうは言われても・・・。というのがギデオンの正直な気持ちだったでしょう。

ギデオンの一族は最も貧弱で、ギデオンは家族の中でいちばん年下でした。

何一つ頼れるものがなく、自信もなく、実績もないギデオンが神様から選ばれたのです。

何一つ持たなかったからこそギデオンは神様に頼ることができました。

 

 神様はすべての創造主です。全知全能、万能です。

その神様に私たちは造られたのです。

ですから私たちには無限の可能性があるのです。

自分の狭い考えで「これはできない」「これはダメだ」と決めつけることは自分の可能性だけでなく、神様の力を限定してしまうことになります。

何一つ持たないから神様に頼れます。

自信がないから神様に頼れます。

そんなあなたを神様は招いてくださいます。

神様の招きに応えて歩む後期といたしましょう。