毎日の礼拝

校長のお話

2011/01/06

「はみだしインディアンのホントにホントの物語」(ヨハネによる福音書 1章1~4節)

シャーマン・アレクシーという作家がいます。
アメリカの人です。
彼の作品に「はみだしインディアンのホントにホントの物語」があります。


今から5年前に出ました。
アレクシーの高校生活が描かれている、いわゆる自伝的物語です。
本人によれば、書いてあることの78%は事実だそうです。
たまたま読んだ本ですが、読み終わったわたしがまず感じたことは、本の内容の78%が本当のことだとしたら、アレクシーというのはしんどい思いをしながらを生きてきたんだ、ということです。
この本を読んだ人はほとんどの人が、アレクシーより自分の方が恵まれていると感じるはずです。
それじゃ、かわいそうにと同情したくなるのかというと、そうではありません。
この本は今世界中の若い人たちに圧倒的な人気を得ているのですが、その理由は、この本を読むことによって、自分自身が抱える悩みやしんどさに負けない、それを乗り越えていくパワーを貰えるからです。
わたしはこの本を1月1日元旦に読みましたが、読んでよかったとおもいました。
自分にもまだまだできることはあると考えることができました。

 

アレクシーという人はアメリカの先住民族、いわゆるインディアンです。
アメリカの先住民族は今も200近くの民族がいますが、その中でも少数のスポーケン族の子どもとして保留地で生まれ育ちます。
保留地というのは、その民族を保護するという名目で一つの地域に集めた場所のことです。
先住民族の子どもとして生まれ、保留地で生活するというのは、一言で言えば、自分の人生に希望が持てない、将来性はないということです。
しかも、アレクシーは難産で生まれたために、脳に傷があり、それもあって体はガリガリにやせているのに、頭はほかの人より相当大きく、手と足も大きいという、実にアンバランスな体つきです。
その上視力が悪くメガネをかけているのですが、それが黒縁の大きなメガネで、それがからかいの材料にされます。
脳ののために、ときどき発作が起こり、言葉は吃音で、うまくしゃべれない時があります。
そのようにたくさんの痛みを抱えながら生きているアレクシーに対して、周りの子どもたちは、彼を「アホ」とからかい、しょっちゅう殴ったりけったりと痛めつけます。2重3重のしんどさを抱えて、どう考えても、将来はないとしかいいようがないアレクシーの人生ですが、それを大きく変える出来事が起こりました。
それは保留地のハイスクールのP先生から保留地の外にある白人が通う学校に行くように勧められたのです。
その学校に行けば、今までのいじめや差別がなくなるということではありません。
貧しい生活をしている先住民族の高校生が白人の学校に通うというのは、今まで以上にさまざまな差別を受けることになるということです。
実際そうなりました。
新しい学校の生徒の多くから無視されます。
インディアンの子どもが何をしにきたのだと陰口を言われます。
酋長などと悪口も言われます。
アレクシーをさらに悲しくさせたのは、保留地の仲間から、白人の学校に変わったために、裏切り者と呼ばれることでした。
自分を大きく変えたいと願った彼の夢は見事にうち砕かれていきます。
アレクシーのすばらしいのはそこで終わらなかったということです。

 

彼は自分を急に大きく変えることはできなくても、小さく変えることはできるとことに気づくのです。
彼は言いました。
「こっちが少し心をひらけば、すばらしい出会いがあるかもしれない」。
そんな気持ちになると、周りの人間がそれまでとは違うように見えてきたのです。
暴力的だと思いこんでいたロジャーが優しさにあふれた少年であること、変人で小ばかにしているとしか思えなかったゴーディから、まじめに努力すること、たとえば宿題をきちんと終わらせたり、完成させたりすることが、本当は楽しいことだとわからせてもらいます。
そして、あこがれ少女ペネロピーからは、表面的に何の苦労もしていない、ただただ幸せに生活しているように見えても、その人にもその人だけが持つ痛みや悲しみがあることを学びます。
そうした出会いを通してアレクシーが学んでことは、どんなにしんどいように思えても、毎日が絶望的に見えたとしても、生活の中には必ず何かちょっとした喜びや笑いがあると言うことでした。
それを彼は次のように表現しています。
「オレは自分の毎日の中にあるちょっとした喜びを見つけようとするようになった」。それを具体的に確かめるためにアレクシーは項目ごとのリストを作ります。
その一つが「自分の人生にちょっとした喜びをもたらしてくれた人リスト」です。
それによってわかったこと、それは自分の身近にいる人こそが自分に喜びをもたらしてくれるということでした。
言い方を変えれば、身近にいるその人は、神様が自分を幸せな気持ちにしてくれるためにわざわざ用意してくれているのです。
性格が合わない、どこか好きになれないと思っているその人もまた神様が送ってくれた大切な人なのです。
絶望的にしか見えない状況を希望に変えていくことになった一番の力は、彼は「考えることができる」少年だったということです。
それは意識するしないにかかわらず誰でもしていることです。
でも考えることを自分の生きる力にできるかできないか、そこに決定的な違いがあります。

 

わたしたちが本当の意味で考える人になるためには、考えることを生きる力にするためにはどうしたらいいのか、それをアレクシーが教えてくれています。
インタビューの中で彼は次のように言っています。
「本を読むこと、言葉を学ぶことは自分を守るための力になります。
本を十分に読んでおけば、闘えるチャンスが出てきます。
もっと言えば、本を一冊読むごとに、生き延びるチャンスが増していくのです」。
「本を十分に読んでおけば、闘えるチャンスが出てくる」。
この言葉を忘れずに新しい1年を過ごしていきませんか。
2011年を始めるに当たって、わたしからの提案です。