月刊敬和新聞

2019年12月号より「助けを求める力」

校長 中塚 詠子

他者に向かって発信する
 今年6月、ツイッターにメッセージが投稿されました。
 「私は視覚過敏があるため、白いノートをあまり使いたくありません。ノートの白が光を反射し、鉛筆の線が見にくくなるからです。幼い頃から顔を近づけて影を作らないと文字が書きづらく、また、良いノートであればあるほど紙質がよく綺麗な白で、目が痛かったのを覚えています。そんな中、中学生のときに母が紙が緑のカラーノートを買ってきてくれ、私はその見やすさに驚きました。目が痛くならないし、文字は見えるし、一気にまとめ買いしたほどです。
 しかし、高校生になってからそのノートを売っていたお店は潰れてしまい、今は買い溜めていたノートを使っています。しかし、私はこのノートのおかげで板書が楽になっていたので、ストックが尽きそうな今とても困っています。通販で売っていないかと調べましたが、カラーノートはかわいいリングノートなどが多く、学校で授業用に使えるものはありませんでした。今でも文具屋に行くたび探していますが、なかなかありません。グリーンノートは私のような視覚過敏の人のためだけではなく、症状のない妹も『目が楽、使いやすい』と言っていました。なので、もしもこのツイートをノートを取り扱っている会社の人が見てくれたなら、ぜひグリーンノートを作って販売してほしいです。私は絶対に買いますし、目に優しいので普通の人にもよいと思います。どこかの会社が、グリーンノートを作ってくれることを願っています。」

発信すれば誰かが応えてくれる
 この投稿に対して、「あそこのお店で売ってた」という情報や、「うちで取り扱ってます」という文具店からの反応が寄せられ、リツイートは49,000、いいねは46,000を超えたそうです。ノートを作っているある会社は「正式な発売は未定ではありますが、企画チームが製品サンプルの作成に動き始めています」とリプライしました。マニアックな文具をたくさん扱っている複数の販売店のアカウントは、このツイートを受けてネットストアでの取り扱いを始めるとすぐに発表しました。
 そして、今年1月からツイッターを始めたある印刷所も反応しました。やはりツイッターで話題になった水平開きノートを作っている町工場です。「少しでもお力になれるのならば水平開きで一日も早くお作りします。濃いグリーンか淡いグリーンのどちらがよろしいですか?料金は頂戴致しませんのでご安心下さい」とつぶやいたのはこの印刷所の社長でした。つぶやきから5日後には、投稿主のもとに手作りのノートが届きました。

理由と必要を伝える
 投稿主は今回のツイートについて、こう話しています。「ノートを取り扱っているバイヤーさんたちに届けばいいなと思ってつぶやきました。拡散した分だけ、需要があるってことを証明できるんじゃないかなって」。
 投稿主が期待した通りに、いえ、それ以上に、メーカーや取扱店が動いてくれました。その結果グリーンのノートの認知が市場でより浸透することになりました。
 本当に必要なことをしっかりと理由を明らかにして示すことができると助けてくれる人が現れます。ただ「助けてほしい」というだけではなかなか気持ちやお困り感は伝わりません。具体的に伝わると助ける方法も具体的に対応できます。また、その助けはまったく関連のないところや、かかわりのないところからはやってきにくいものです。この投稿もノートを作っている会社や印刷所、販売店というノートを扱っているところが助けてくれています。自分たちが毎日やっていることのほんの少しの気遣いや延長線上で「助けて」の声に反応しています。

敬和学園で養われる力
 助けてと言う力とそれに応える力が敬和学園にはあると私は思っています。その方向性は聖書に示されています。「兄弟たち、あなたがたに勧めます。怠けている人たちを戒めなさい。気落ちしている者たちを励ましなさい。弱い者たちを助けなさい。すべての人に対して忍耐強く接しなさい。だれも、悪をもって悪に報いることのないように気をつけなさい。お互いの間でも、すべての人に対しても、いつも善を行うよう努めなさい。」(テサロニケの信徒への手紙:5章14~16節)