月刊敬和新聞

2018年10月号より「堅固な土台が人生を豊かにする」

校長 中塚 詠子

身だしなみチェック
 学年主任をしていた頃、朝の礼拝前に生徒の皆さんに身だしなみチェックを促すのが習慣でした。こんな感じです。「長い髪はきちんと結ばれていますか?ブラウスの第一ボタンは留められていますか?リボンはどうですか?ネクタイはしっかり美しく結べていますか?ウエストラインはいかがですか?ブラウスの裾は始末されていますか?スラックスの裾はくるぶしを隠していますか?足首冷やすと体に良くないですよ。ジャケットの襟が立っていませんか?後ろの人、前の人の襟を見てあげてください。靴のかかとを踏んでいませんか?きちんとはいてくださいね。」という具合です。

チェックしたかったこと
 身だしなみチェックには実は他に力点がありました。一つはかかとを踏まずに靴を履いてもらうことです。敬和学園高校の生徒は下履きのかかとを踏んでいる人が少なくてよいことだなあと思っています。
 人間の一番下がかかとです。下履きのかかとを踏むと足裏のアーチがゆがみます。ここがゆがむと骨盤がゆがみます。骨盤がゆがむと当然背骨がゆがみます。背骨がゆがめば肩甲骨回り、首、頭と歪みは上に行けばいくほど大きくなります。歪みを解消しようと体は脂肪をつけます。脂肪を重り代わりにしてバランスを取るのです。すっきりしたプロポーションがほしい人は下履きのかかとを踏んではいけません。
 もう一つ、ウエスト周りをだぶつかせないためにはオーバーブラウス、シャツ出しは厳禁です。おなか周りは骨がありません。冷えてくると何とかしなければとここにも脂肪がつくことで内臓を守ろうと脳が信号を送ります。おしゃれで裾出しをするときには下着やTシャツなどでしっかりおなかを冷やさないようにした方が良いです。腹巻は大変有効です。身体を冷やさないことが免疫力を上げるのです。免疫力が下がると病気になりやすくなります。あるいは病気が進行します。
 それくらいのことで大げさなと思った人もいると思います。でも土台って大切です。大きな建物を建てようとすれば地中深く土台の杭を打ちます。けれども建物が建ってしまえばそれを外から見ることはできません。もし基本の杭が浅く短くしか打ち込まれていなければ、地震が来ればその建物は倒壊するかもしれません。そんなことが起こらないように建物に関しては建築基準法で細かくそして厳しく値が決められています。

人間の土台
 では人間はどうでしょう?私たちの心はどうでしょう?私たちの一番の土台、足裏に当たるところはどこでしょう?どこを一番の土台に据えますか?何をまず一番に大切にしますか?人それぞれにそれこそ人の数だけ答えも出てきそうです。
 マタイによる福音書7章では土台の質が問題にされています。家を建てるのは砂の上よりは岩の上の方がいいと読者は思います。それが賢い選択であると読む人は誰でも思うでしょう。しかし実際の生活の中ではいつもいつも賢い方を簡単に選べるわけではありません。良かれと思って選んだものが最良とは限りません。むしろそうではないことも多いのです。考えて悩んで試してうまくいかず残念な思いや悔しい思いをすることもあります。

土台づくりにつながる学び
 人生には嵐がつきものです。雨が降るかもしれません(きっと降るでしょう)。川があふれるかもしれません(きっとあふれるでしょう)。強い風が吹くかもしれません(きっと吹くでしょう)。そこを逃げずに耐えきるために、敬和学園での学びがあるのです。授業も礼拝も行事も定期テストも部活動も寮生活も人間の土台作りの学びです。しっかりとした土台をつくるためにしなやかな感性で学んでほしいと思います。
 成果が上がらなかったことや思うようにいかないこと下手くそだったことがあったとしても、それだからあなたの価値が下がったり低くなったりするのではありません。むしろその経験や悔しさから逃げないことが重要です。
 人間の土台づくりは神様と自分に向き合うこと抜きには完成しません。敬和学園での三年で堅固な揺るがぬ土台を作ってほしいと思います。その土台は生きる力へとつながります。