月刊敬和新聞

2017年7月号より「一人ひとりの存在を大切にする敬和学園は人気ではなく人気のある学校です」

校長 小西二巳夫

学校紹介パンフレット表紙
 「問題 電子黒板に映している左のa,bの漢字について、敬和学園にふさわしいと思うふりがなを考えてください。一人ひとりを大切にする敬和学園はa人気ではなくb人気のある学校です。」今年の学校紹介パンフレットの表紙は電子黒板に前記の言葉を映し出したものにしました。左下には電子黒板を操作するタブレットが教卓の上に置かれています。敬和学園の学校紹介パンフレットは、特に表紙は毎年大胆で意表を突いたデザインだといわれますが、今年はさらにグレードアップしました。挑戦的とさえいわれます。さて、答えはaが「にんき」で、bが「ひとけ」です。少しむずかしいかと思ったのですが、オープンスクールや個人的な学校見学にいらっしゃった中学生と保護者の方の多くがすんなり答えてくれます。それはそれだけ敬和学園という学校を理解していただいていることの証しかもしれません。今の世の中あらゆる分野で人気があるかないかで評価されることが多くあります。人気の慣用句ですぐに思い浮かぶのが、…に左右される、…に流される、…急上昇、…急落などです。

結果が求められる学校生活
 学校や教育の分野でも人気が取りざたされることが多いようです。一般的に生徒がたくさん集まっている学校は人気があると考えられます。少子化で定員割れを起こす学校が少なくない時代です。多くの学校が人気を得ようとするのは当たり前かもしれません。それでは人気のある高校とはどういうものでしょうか。偏差値が高く有名大学への進学率が高い。スポーツが強く全国大会などで優秀な成績を残している、などでしょうか。制服がオシャレというのもありだそうです。これらは数字や記録などの結果です。結果を出すのは生徒です。結果を出すことを求められる学校生活が生徒にとって楽しいとは到底思えません。人気を維持するためには失敗は許されません。人気を保とうとすれば大切なものを捨てなければなりません。考えるだけで息苦しくなります。

大好きなのは長期休み
 しばらく前のことですが、ある生徒が話の流れから私に尋ねました。「校長先生はどんな時の敬和が好きですか」。彼は私に尋ねながら、自分では全校礼拝の時にシーンとした空気や、フェスティバルなどに取り組んでいる時の熱気にあふれた雰囲気などを思い浮かべたようです。その彼に私の答えは意外というか心外だったようです。それはそうでしょう。私は冗談交じりで次のように答えたのです。「それは生徒の誰もがいない長期休みの時かなあ。人気がなくて安心できるよ。誰もないなから問題は何も起こへんからなあ」。彼の真剣な顔に私はあわてて言い直しました。「冗談!冗談!本当は通りすがりにお互いが少しニコッとして、あいさつを交わす時かなあ。そんな時に敬和の温もり、人気が感じられるしなあ。ここで働くことができてよかったと思うよ」。

人気が絶えない学校
 他の学校にあって敬和にないものがあります。目で見てすぐにわかるものです。それは塀やフェンス等です。だからといって仕切りがないわけではありません。敬和学園の内と外では流れている空気が違うといわれます。敬和学園に流れる空気には人気が、つまり温もりやあたたかさが感じられるといわれます。それは学校生活を安心して過ごし充実したものにするためには欠かせないものです。それがあってこそ学びたいとの意欲が生まれてきます。安心して深呼吸ができることでその人の持っている力や能力が引き出されます。夜の学校というと誰もいなくて冷たく人を拒むような空気を考えます。敬和学園はそれとは違うものが夜も流れています。人気があるのです。それは200名近くの人たちが学校の中で生活しているからです。180名を超える寮生と寮の先生たちとその家族、そして校長の私も学校の敷地内に住んでいます。それぞれの室内では生活が営まれています。学習に勤しむ筆記用具の音やテキストのページをめくる音が聞こえてくるようです。時折なごやかな歌声や笑い声が響いてきます。一日中人気が絶えないことからつくられる温もりと安心が敬和学園にはあります。