月刊敬和新聞

2010年11月号より 「もし敬和学園の校長が「もしドラ」を読んだら -「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」より-」

小西二巳夫(校長)

ベストセラー「もしドラ」
 「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という長いタイトルの本があります。略して「もしドラ」と呼ばれています。ストーリーは公立高校野球部のマネージャーになった女子生徒が、たまたまドラッカーの経営書「マネジメント」に出会い、内容の難しさにとまどいつつ、野球部を強くするのに「マネジメント」が役立つことに気づき、甲子園出場を果たすというものです。わたしが本を読む楽しみの一つに「ハッとさせられる言葉に出会う」ことがあります。そして、その言葉や文章には赤で線を引き、そのページに付箋をつけるのですが、「もしドラ」を読み終えたとき、わたしの「もしドラ」は赤線と付箋でいっぱいになりました。敬和学園のマネージャーといえるわたしに「マネージャーにできなければならないことは、そのほとんどが教わらなくとも学ぶことができる。しかし、学ぶことのできない資質、後天的に獲得することのできない資質、始めから身につけていなければならない資質が、一つだけある。才能ではない。真摯さである」は胸にグサッときました。「もしドラ」は学校で働く今のわたしを厳しく問う言葉に溢れています。


生かされることによって 生かされる
 わたしが本を読むのは言葉に出会いたいからですが、それは敬和学園の教育に資する何かを得たいためでもあります。そのわたしに具体的なイメージにまでは至りませんが、たいへん気になった箇所がありました。それはマネージャーの一人に加わった野球部員がアイデアを出すところです。彼は「他の部との合同練習」を提案します。たとえば、陸上部に対しては、野球部の「走力向上」について協力してもらおうと考えました。盗塁やエンドランを重要視する野球をするためには走力が必要です。それを短距離が専門の陸上部女子キャプテンに頼むのですが、そのことが彼女自身のメリットにもなると言いました。その根拠は「・・・彼女の強みが生かされることによって、彼女自身を生かすことにもつながるからだ」。

敬和学園はスポーツに力を入れていない?
 去年今年の地区別懇談会(敬和の会)で、保護者の方から、「運動部にもっと力を入れてほしい」「スポーツが強くないと、生徒が集まりませんよ」「強い運動部がないから、学校全体のモチベーションが高くならないではないですか」と意見をいただきました。確かにそういう面もあります。この現実を、敬和学園は部活だけの学校ではない、部活だけにエネルギーを注いだのでは、結局充実した高校生活を過ごすことはできない、行事や集会にあれこれ参加してこそ敬和学園の良さを実感できる、部活は敬和生活のあくまで一部である、とお答えしました。そうは言いつつ、できるだけ多くの子どもたちに部活に入ってもらいたい、勝つことの喜びや達成感を味わってもらいたいとも願ってきました。そこに「もしドラ」が重なりました。

敬和学園の「もしドラ」
 「もしドラ」を敬和学園の運動部の実情と可能性の中で考えたら、何かできるはず・・・。晩秋から冬にかけてグラウンドは雨や雪で使えません。外競技は通常の練習はできなくなります。体育館の他は校舎の階段や廊下を使うサーキットか筋トレが主になります。スクールバスも日が暮れるのが早いので冬時間運行になります。放課後の練習時間はせいぜい1時間30分です。人数ぎりぎりでやっている運動部の中には練習のモチベーションが上がらず、参加人数もますます減ります。そこでもし、冬場のトレーニングを他の運動部と一緒に行ってはどうだろうか。一人より二人、二人より三人と人が増えれば、やる気が出てきて練習を休むことがなくなります。練習メニューを各部のマネージャーを中心に考えれば、人は生かせますし、短い時間であっても瞬発力、持久力、体幹などがより効果的に鍛えられるはずです。クラブ顧問の反応は積極的ですので、何ができるかを具体的に考えてもらうことになりました。ひょっとすると春を迎えたとき、これまでとは一味違う運動部が見られるかもしれません。楽しみです。