自分探しの敬和学園で 人を、自分を、好きになる。
小西二巳夫(校長)
讃美歌「アメイジング・グレイス」
2011年フェスティバル2日目、屋外部門の日を迎えました。敬和学園はこうした日もまた、いつもと同じように礼拝から始めます。いつもと違うとすれば、それは今日6月11日が3月11日に起こった東日本大震災から3か月目を迎える日であり、震災によって被災をした人たちとつながることをフェスティバルの目的の一つにしていることです。先ほど一緒に歌った「アメイジング・グレイス」は今からはじけようとする時の讃美歌としてふさわしくないと思われるかもしれません。それにもかかわらず、なぜこの讃美歌を選んだのかです。しばらく前に同名の映画が作られました。映画「アメイジング・グレイス」の主人公は英国の実在の政治家ウィリアム・ウィルバーホースです。映画は奴隷貿易制度廃止に人生をかけた彼の一生を描いています。ウィルバーホースが政治家になるか教会の牧師になるか迷った時に、「あなたにはあなただけに与えられた使命がある」、と政治家になるようすすめたのが「アメイジング・グレイス」の作詞者であるジョン・ニュートン牧師でした。
想像力が持つことの大切さ
ウィルバーホースはニュートン牧師の言葉を信じて政治家になり理想の社会を作ろうと考えます。人間の尊厳を無視した奴隷貿易制度を廃止するのが自分の使命と一生懸命活動します。しかし、現実は厳しく、何も変わらない、何も変えられないような日々が続きます。時にはもうだめだとあきらめそうになります。その彼に再び生きる力、取り組む力を与えてくれたのが讃美歌「アメイジング・グレイス」でした。やがて不可能に思えていた奴隷貿易廃止法が成立します。映画「アメイジング・グレイス」が訴えているのは、動かないように見える現実も、その人が思いを持ち続けるなら、また、それを行動にしていくなら、その思いに神様が必ず何かの形で答えて下さる、必ず変えられる時が来る、ということであり、そのために何より大事なことは「想像力」をしっかり持つことだということです。
「つながる」フェスティバル
今年のフェスティバルのテーマは「つながる」です。このテーマに決定したのは、東日本大震災で被災をした人たちや地域とつながりをもつことに、「神を愛し隣人を愛する」を建学の精神にしている敬和学園が真剣に取り組むためです。プログラムにも東日本大震災を意識した取り組みや時間が織り込まれています。そこでもう一度心の中にしっかりと刻んでおきたいのは、東日本大震災で被災をした人たちと、どのようにしてつながり続けることができるかということです。ここにいる人たちの多くは大震災そして原発事故の被害を直接受けてはいません。そのわたしたちが被災した人たちとつながるために、何より必要なのは想像力です。わたしたちが持っている弱さに、時間が過ぎれば忘れてしまう、遠く離れると忘れてしまう、ということがあります。そういう弱さを補い、人と人をつなぐのが想像力です。想像力はどうすれば養えることができるでしょうか。それは具体的な取り組みを通してです。何かを作り上げることを通して、さらに悩むことを通して、失敗することを通して、人は持つべき想像力を持つことができるようになります。
礼拝を通して想像力を養っている
敬和学園が行事を大切にするのは、そうした想像力を持った人に育ってほしいと考えているからです。毎日の礼拝では、見えない神様がどのようにして、一人ひとりに働きかけられているのか、この世界に関わっておられるのか、がしばしば話されます。見えない神様を見るためには、何より想像力が必要です。敬和生は毎日の礼拝を通して想像力を養っているのです。弱さを抱えて生きなければならない人たちに思いを巡らすこと、その痛みを考えること、そうした想像力が自分を未来へつなげる力に、平和を作り出す力になります。被災をした人たちに心を寄せ、悩み、思い続けることはできるのです。そこからわたしたちの生活を見直し、社会のあり方を見直すことができるのです。それでは、フェスティバル二日目をしっかり作り上げるために、そして、東日本大震災で被災をされた人たちのために、祈りを合わせながら今日という一日を共に過ごしましょう。