月刊敬和新聞

2011年9月号より「五本指ソックスと五本指の祈り」

小西二巳夫(校長)

被災地支援労作
 敬和学園は東日本大震災被災支援労作を5月から始めました。8月までに7回行いましたが、その準備段階でのことです。いわゆる「働く人の店」に被災支援労作に必要なヘルメット、防塵マスクやゴーグル、鉄板入りの靴の中敷きなどを買いに行きました。その時にふっと眼についたのが「厳しい作業も快適に行える五本指」とのシールが貼ってあるソックスでした。被災地でのガレキを取り除く作業などで一番気をつけないといけないのが足元です。そこで、その謳い文句に誘われて五本指ソックスを買う決心をしました。たかだかソックスを買うのに何が決心かと言うことですが、それにはいきさつがあります。私はトレーニングジムに通い、ランニングマシーンで走るのをある程度の習慣にしているのですが、しばらく前から膝と足の指に痛みが出てきました。年齢からくる痛みでしょうが、足の指の痛みは仕事の際に履いている革靴の時にも出るようになってきました。それを妻に話したところ、五本指ソックスを勧められたのです。

五本指ソックス
 しかし私は思わず言ってしまったのです。「そんなカッコのわるいもん、履かへんで」。被災支援労作の作業中、足元は実に快適でした。その快適さが忘れられず、被災支援労作から帰って来るとさっそくランニング用の五本指ソックスを買いに行きました。後期授業が始まった日、いつものように普通のソックスをはいたのですが、忘れていた痛みがぶり返しました。その日の夜、ショッピングセンターに行き、何足もの五本指ソックスを買うことになりました。そしてカッコ悪いから履かないと言い切った妻へ、本当なら素直にゴメンと謝ればいいのに、話をそらすように言いました。「五本指の祈り、知ってるか。指文字で祈ることとちゃうで…」。返ってきた言葉は「もっと素直になったら」でした。

五本指の祈り
 「五本指の祈り」という祈り方を教えてもらったことがあります。手を合わせて祈ると、体に近いところから親指、次に人差し指、中指、薬指、小指の順になります。その指に存在を当てはめると次のようになります。体に一番近い親指は身近な人、人差し指は方向を示してくれる人、中指は一番高い指ですから権力を持っている人、薬指は最も力が入らないので弱い立場の人、小指は誰よりも小さい存在と自覚すべき自分。うまく祈ることができない場合、五本の指に合わせると、自分が今何を考え、何を祈らなければならないかがわかってきます。

東日本大震災被災者のために
 私たちが今一番祈らなければならないのは、東日本大震災と福島第一原発事故によって、被災し避難生活を強いられている人たちのことです。それを五本指の祈りによって行うと次のようになります。「神様、敬和学園の在校生と卒業生とそのご家族の中に、大震災によって家を失うなどして大きな被害を受けた人たちがおられます。また敬和学園をこれまでさまざまな形で支えてきてくださった教会や関係学校も大きな被害を受けられました。どうか、その方たちが日常を取り戻せますように。そのために私たちが被災者のために献金や労作活動を行い続けていくことができますように。被災した地域にあって、市町村の首長やボランティア活動のリーダーが、地域再生のために労を惜しまず働いておられます。その働きが必要な人たちに必要な形で届きますように。大震災によって日本の政治の在り方が根本から問われています。国政にかかわっている人たちが、利害ではなく被災した人たちと地域のために何を為すべきか、しっかり考える知恵と取り組む勇気と決断をお与えください。大震災と原発事故によって家族や、生きる術、そして生活する場所を奪われた人たちが大勢おられます。そのお一人お一人が、なお生きていてよかったと思えるような手当が様々な形でなされますように。被災地のすぐ近くに生活する私が、本当の意味で被災された人たちの良き隣人となれるよう、日々祈りつつ具体的な関わりを持ち続けることができますように導いてください」。東日本大震災で被災された人たちと地域のために、日々祈ること、その祈りから見えてくるものを具体的な活動にしていく、それを忘れることなく行う敬和学園でありたいと心から願います。