自分探しの敬和学園で 人を、自分を、好きになる。
小西二巳夫(校長)
鷹 匠(たかじょう)
・・・それでは、神様に選ばれ入学したみなさんに、どのような三年間を過ごしてほしいかをお話しします。鷹匠というのはオオタカやハヤブサなどの猛禽類を訓練して、鳥や小動物を捕る仕事をする人のことです。鷹匠と鷹の関係はあくまで対等であり、お互いが存在を尊重し合わなければ鷹狩は成り立たないとのことです。鷹匠は鷹を安心させるために左肘を地面に水平に曲げ、拳を作ってそこに鷹をのせます。さらに鷹が安心するため大切なのは目線だそうです。鷹と鷹匠の目線が同じになることで信頼関係が生まれます。鷹匠は獲物を見つけると、その方向に拳から鷹を投げるように押し出します。鷹は飛び立つ瞬間の速度は思いのほか遅くて、そのままでは獲物を捕まえ損なうことが多く、それを助けるために押し出すわけです。 若い鷹は、鳥や小動物のどこをつかめば一番効果的かわかりません。しかもそれを人が教えることはできません。鷹は失敗を重ねながら、それを覚えていくとのことです。鷹匠に求められるのは鷹の成長を忍耐強く待つことだそうです。永年鷹匠をしている人がインタビューで次のように言いました。「鷹はそれぞれ性格が違います。同じように育てようとしたら失敗します。教え込むのではなく、その鷹の持っている力を引き出してやるのです。そのためには、まずその鷹の様子をよく見て、気持ちや性格を受けとめることです。一番大事なことは愛することです」。
鷹匠と重なる敬和学園の教育
私は鷹匠のことを知れば知るほど敬和学園の教育とが重なって見えてきます。みなさんは、自分で気づかなくても、無限の可能性を内側に持っています。 それをうまく引き出せたらどんなにいいでしょう。それを引き出すために必要なことは、何より素直になることです。素直になるというのは、気持ちや性格だけのことではなく、意味と価値のある学校生活を送るために何より大切なことなのです。そこで、みなさんに素直になってもらうために敬和学園が大切にしていることがあります。敬和学園は成績が良いかどうかといった一つの価値観、狭い価値観でその人を見るのではなく、多様な価値観で受けとめる学校です。この価値観は同じ高さの目線につながります。敬和学園はみなさんを上からの目線ではなく、同じ目線で見る学校です。 それは鷹匠と鷹の関係のように、同じ目線に立ってこそ、人として成長し、充実した学校生活を送られると考えているからです。敬和学園は昨年、東日本大震災被災支援活動を10回行いました。延べ人数で生徒が150名、教職員が50名参加しましたが、支援活動で一番大事に考えたのは被災された方と同じ目線に立つことでした。そうでなければ、痛みや悲しみを感じることができないからです。
うまくやれなくて当然
ところで学校生活を始めるにあたってみなさんが一番不安に感じていることは何でしょうか。学習のこと、授業のことでしょうか。それ以上に不安に思っているのが人間関係でしょう。友達ができるだろうか。クラスの中に溶け込めるだろうか。さらに、中学校までの失敗を繰り返したくない。後悔したくない。明日からのオリエンテーションキャンプのことを考えたら心配でしかたがない、という心境の人もいるでしょう。そういう不安と心配の中にいるみなさんに、あえて言わせていただきます。それはみなさんが今思い描くような人間関係をすぐに作るのは難しいということです。できると思うのはうぬぼれです。そんなうぬぼれはさっさと捨てたらいいのです。みなさんの中に、これまで人間関係をうまくやってきたと自信を持って言える人がどれだけいるでしょうか。たいていの人は苦手なはずです。そういう苦手な人同士が人間関係を新たに作っていくのですから、うまくいかなくて当然です。
失敗は怖れるものではなく赦すもの
そこで考えて欲しいのは、若い鷹が上手に鳥や小動物をつかめるようになるために、何が必要だったかです。それは失敗です。若い鷹は失敗を重ねながら少しずつ学んでいきます。人は鷹以上に失敗を重ねながら成長していくのです。大事なことは、失敗するかしないかを心配することではなく、自分や他の人の失敗を赦すこと、受け入れることなのです。ある鷹匠が、鷹の成長するために最も大切なことは「愛する」ことだと言いました。敬和学園の建学の精神は「敬神愛人」です。神様を愛し、隣人を自分のように愛する、というのは、大事にするということです。ですから「敬和学園は一人ひとりを大切にする学校」だと言われるのです。神様によって選ばれて入学してきたみなさんを大切にしないはずがないのです。だから安心して、素直になって、三年間かけてじっくり成長していってください。