自分探しの敬和学園で 人を、自分を、好きになる。
2015/04/20
私が毎年3月終わりから4月初めに楽しみにしていることがあります。
それは私の好きな作家の宮本輝という人の本が発売になるからです。
だいたいが上下2巻の1000ページ近くの長編小説です。
私は本を読むスピードは速いと思いますが、宮本輝の小説を読む時は一字一句を大切にするようにじっくり読みます。
好きな作家がいることは幸せなことです。
今年もしばらく前に読み終えました。
タイトルは「田園発港行き自転車」です。
東京、京都、富山を舞台にした小説です。
読みながらふっと気づいたことがありました。
それはこの小説の主人公は誰だろうということです。
主な登場人物は6,7人いるのですが、この人が主人公だとはっきり特定できません。
どの人も重要で物語から欠かすことができません。
この小説が大切にしていることは、登場人物にそれぞれの物語があって、それが何かの力によって手繰り寄せられ、そこで新しい物語が生まれ、そしてまた離れていくのだということでした。
スピニングホイールというのがあります。
日本語にすると糸車です。
綿や繭玉、羊の毛を一本の木綿・糸生・毛糸にするための道具です。
使い方は素材を回る糸巻車に絡ませます。
すると綿や繭玉、羊の毛は手繰り寄せられるように紡がれて糸になってつながっていきます。
これを様々な色に染めて、それをあらためて縫ったり編んだりすると布や生地になります。
「田園発港行き自転車」はそのような雰囲気の小説です。
一人の主人公に別の人が絡んで新しい物語が生まれ、同時に絡んできた別の人が、そこから飛び出すようにその人を主人公とした物語が始まります。
このように物語が派生して新しい物語が作られることを、回っている糸車から飛び出す意味でスピンオフと言います。
人気アニメやドラマでもスピンオフがよく作られます。
スピンオフの多さでよく知られているのが「踊る大捜査線」というドラマでした。
「踊る大捜査線」は織田裕二演ずる刑事が主人公の物語です。
「踊る大捜査線」には「逃亡者木島丈一郎」、「警護官内田晋三」、「交渉人真下正義」、「容疑者室井慎次」、「弁護士灰村秀樹」などのスピンオフがありました。
スピンオフがたくさんできるのは出演者が個性的で、何かの輝きがあるからです。
それは「田園発港行き自転車」にも当てはまります。
私が興味を持った登場人物は脇田千春という20歳の女性です。
彼女の特徴はとにかく目立たないのです。
子どもの頃からそうでした。
何をしてもゆっくりしていて、友だちに遅れをとるのです。
彼女が生まれ育った地域は地方都市で、車なしでの生活はとても不便です。
そこでたいていの人は当たり前のように運転免許をとります。
ところが脇田千春は試験に4回も不合格になり、周りを呆れさせます。
自分を変えたいと思って就職した東京の会社も、都会の目まぐるしいスピードについていけず、1年半後にいっぱいいっぱいになって辞めます。
そして地元の富山に戻ってきます。
このように話しますと、脇田千春と言う女性をかわいそうと感じるかも知れません。
何をしてもパッとしない人に思えます。
中には自分と重ね合わせて情けなくなる人がいるかも知れません。
ところが脇田千春が会社を辞めてしばらくして、上司の川辺康平はあることに気がつきます。
川辺は次のように言いました。
「脇田千春にはとりたてて見える特徴があったわけではない。仕事ぶりも他の女子職員の中で秀でていたわけではない。にもかかわらず、あの子の存在が殺気立つ社員の心をなごませ、安心させ、癒していたのだ」。
脇田千春が会社で働く大勢の社員にとっていかに必要な存在であったか、川辺康平のこの言葉からわかります。
彼女の存在が大勢の働く人を救っていたのです。
大勢の人を救い癒す、そういう存在を普通何と呼ぶでしょうか。
英語でいうとヒーロー、ヒロインです。
ヒロインまさに主人公です。
そういう雰囲気を持った主人公もありだということです。
敬和学園はたくさんの物語とたくさんのスピンオフが生まれる学校です。
少なくとも660以上の主人公が違う物語とそれにまつわるスピンオフがあります。
敬和学園は「一人ひとりを大切にする学校」と言われますが、イコール一人ひとりが学校生活の主人公であるということです。
一般に一つの物語を作る時、誰を主人公にするかを考え選びます。
主人公に選ばれるのは、作家がふさわしいと判断するからです。
それは敬和学園という舞台で作られるたくさんの物語も同じです。
ただ決定的に違うことが一つあります。
敬和学園で作られる物語の主人公は誰が選んだかということです。
思い出してほしいのは、みなさんは神様によって選ばれて敬和学園に入学をしてきたということです。
神様は敬和学園で作られるたくさんの物語の主人公に、あなたが最もふさわしいと判断されたからこそ選ばれたのです。
そこでさらに忘れてほしくないことがあります。
たとえば冒険小説ですが、冒険小説のおもしろさは主人公が波乱万丈、命からがら、危険にさらされる、それを自分の力で解決したり、誰かの助けを借りて切り抜ける、ことにあります。
青春小説、恋も友人関係も何もかもが主人公の思い通りに進んでいくのであれば、誰が読むでしょうか。
うまくいきそうでなかなかいかない、あれこれ悩み苦しむ、だからこそ共感できて、受け入れられるのです。
つまり主人公というのはあれこれ苦労もするし悩みもするということです。
そういう体験をいくつも重ねながら成長していく物語は読んでいて楽しいのです。
ただ敬和学園で作られる物語とスピンオフの主人公は、神様が必ず守って下さるということです。
それが今日の聖書に書かれています。
助けを必要とする人を神様が捨てておかれるはずはない。
知らん顔されるはずはない。
ほおっておかれるはずはない。
必ず何らかの方法で助け救ってくださるというのです。
人一人の存在を、私たちが考える以上に神様は大きなこと、大切に下さるということです。
それを心に刻みながら新しい一週間を歩んで行きましょう。