毎日の礼拝

毎日のお話

2025/09/04

大塚 忍(聖書科・労作科)

【聖書:ルカによる福音書 24章 32節】

二人は、「道で話しておられるとき、また聖書を説明してくださったとき、わたしたちの心は燃えていたではないか」と語り合った。

 

 

 東日本大震災後に、いとうせいこうの『想像ラジオ』を読みました。津波で命を奪われた人がDJとなって語りかける物語でした。亡くなった人の声を聴くことは想像の営みであり、物語からわたし自身も「見えない者の声を聴こうとして生きているだろうか」と問われました。

 8月にわたしがこれまで最も影響を受けた新約聖書学者の田川建三先生の訃報に接しました。大学時代に著書『イエスという男』に出会い、その後、私塾で5年間直接学ぶ機会を得ました。先生の言葉はわたしの信仰理解を根底から揺さぶりました。特に「イエスをよく理解したと思っている連中がイエスを殺した。かつては肉体的に、今は精神的に』(『イエスという男』p.67)という言葉には衝撃を受けました。

 先生が亡くなられた今も、先生の言葉を思い起こし、想像力を働かせることで、先生の声を聴いていると感じます。それは、聖書の弟子たちが「心が燃えていた」とイエスを思い出した出来事と重なります。

 亡き人の声や親しい者の記憶に耳を澄まし、また聖書のイエスの言葉に聞くとき、心が燃え立たせられ、進むべき道を示されるのだと思います。想像力を豊かに育み生ながらきていきたいと思います。