自分探しの敬和学園で 人を、自分を、好きになる。
2024/08/30
【聖書:イザヤ書 43章 4節】
「わたしの目にあなたは価高く、貴く
わたしはあなたを愛し
あなたの身代わりとして人を与え
国々をあなたの魂の代わりとする。」
この夏,電動歯ブラシを買いました。電動歯ブラシは最高です。説明書がついていて,そこにこう書いてありました。「磨いた後,舌の先で歯の表面をなぞると,ツルツルになっているはず。さらに指でこすってみるとキュッキュッとなるほど歯垢がすっきり落ちています。」
本当かよ,って思いました。ずいぶん自信がある書き口だなあなんて思ったら,これが本当にその通りでした。磨いた後の歯がツルツルになっていて,びっくりしちゃいました。電動歯ブラシって,当たり前ですけど,自分で磨かないくていいんです。ブラシが勝手に振動しているので,それを優しく歯にあてるだけでいいんです。それをゆっくり動かしていくだけで歯がツルツルになります。
上の歯と下の歯を左右それぞれでわけて考えると全部で4つのブロック(上の歯の右側,上の歯の左側,下の歯の右側,下の歯の左側)に分かれます。電動歯ブラシの説明書によると,それぞれのブロックを30秒ずつかけて磨いていくのがよいとのことでした。たとえば最初に下の歯の左側を磨くとすると,歯のオモテ面を10秒で磨いて,次に歯の上側(奥歯のくぼんでる部分)を10秒磨いて,最後に歯の裏側を10秒で磨いて,これで「下の歯の左側のブロック」が終了となります。同様に4つのブロックを30秒ずつ,計2分で磨き終わるのが推奨されている磨きかたのルーティンとなっています。
親切なことに,電動歯ブラシは30秒ごとに「ぶるっぶるっ」と動いて,30秒が経過したことを教えてくれます。この30秒ごとのぶるっぶるっていうのが来るタイミングでちょうどひとつのブロックを磨き終わっていると,ナイスなペースということになります。いつしか私は心の中で,この30秒きっかりでひとつのブロックをちょうど磨き終えて,きっかり2分ですべての歯を磨き上げるという「時間配分の芸術性」を勝手に追求し始めました。当時オリンピックを毎日見ていた影響で,気分はさながらオリンピックの実況をするような感覚で,心の中で実況をしながら毎日電動歯ブラシで歯を磨いておりました。「日本の青栁,30秒を少し回ったところで第1ブロックを磨き終えました。このブロックは親知らずが1本生えていますから通常よりもやや時間がかかるブロックと言えるかもしれません。後半少しペースを上げていかないと上の歯はかなり苦しい戦いになる。おっと,ラップタイムがちょうど1分のところで下の歯を磨き終えました。そのまま上の歯の右側,第3ブロックに突入しています。」とまあこういうことを心の中で考えながら,歯を磨いていたんです。(非常にくだらないですね。)
これが意外に難しくて,2分きっかりで歯を磨き終えられると,非常に達成感があります。大概ちょっと早かったり遅かったりします。ただ,この競技にはなにせライバルがいませんので,そういう意味では,私は毎日金メダルを獲得していたということになります。出場者1名の「電動歯ブラシオリンピック」に,私はこの夏毎日出場して,毎日優勝をしていたわけです。
みなさんも,自分の心の中で勝手に開催している個人的オリンピックはありますか?消しゴムをきれいに使い切るオリンピック,コンビニで買い食いしたい気持ちをぐっとこらえるオリンピック,横断歩道の白いとこだけ渡るオリンピック…,やってるよという人はいませんか?
ここからはちょっと真面目な話をします。そんなくだらないオリンピックやってないよという人も,実は私たちは誰もが,自分の人生を生きるという種目に日々挑んでいます。自分の人生を生きるという種目の参加者は自分だけ,たった一人だけです。そこにはライバルはいません。正直,皆さんは自分の人生の歩み方について,どう思いますか?すごくうまくいっている,大満足です!という人もいれば,正直うまくいってない,私の人生はいまひとつです,という自己評価の人もいるかもしれません。しかしながら,私たちの人生の自己評価がどんなであろうと,よかろうと悪かろうと,どんな人生も一人残らずすべて肯定してくださる存在があります。それが神様です。きょう読んでいただいた聖書箇所には「私の目にあなたは値高く貴い。私はあなたを愛している。」というメッセージが書かれています。これは神様から私たち一人ひとりに語られたメッセージであると思っていいと思います。聖書では,私たちは一人残らずみんな神様につくられた存在として考えられています。創り主である神様は,その作品である私たちひとりひとりを一人残らず価値ある存在として大切に思ってくれている,というのがキリスト教の根底に流れるメッセージであり,実はそれは,敬和学園高等学校がその教育活動を通じて生徒のみなさんに一番伝えたいメッセージでもあります。
私たちは,誰もが「自分の人生を歩む」という出場者1名のオリンピックに日々挑むものであります。しかしそこには勝ち負けはありません。ライバルもいません。誰もが価値ある存在で,神様に愛されて価値ある人生を歩んでいます。
実はこのような理念のオリンピックが実際に存在しています。それは「やす子オリンピック」です。タレントのやす子さんが今月上旬にXで次のような投稿を行いました。
「やす子オリンピック 生きてるだけで偉いので皆 優勝でーす」
この投稿は直後に心無いリプライが投稿されたことで,嫌な形で全国的にニュースになって拡散されたわけですけど,実はものすごく素晴らしいメッセージを含んでいて,もっと「やす子オリンピック」自体のメッセージのすばらしさが拡散したらいいなと個人的には思っていました。「やす子オリンピック 生きてるだけで偉いので皆 優勝でーす」。やす子オリンピックの理念は,敬和学園高等学校が日々の教育活動を通じて生徒の皆さんに伝えたいメッセージそのものです。私たちは生きているだけで,神様に愛される価値ある存在なので,みんな優勝です。そのことを覚えて2024年度後期の学校生活を歩む者でありたいと願います。