お知らせ

お知らせ

2024/08/26

今週の校長の話(2024.8.26) 「佐渡金山、世界遺産に ―始業礼拝―」

【聖書:マタイによる福音書 7章 3~4節】

「あなたは、兄弟の目にあるおが屑は見えるのに、なぜ自分の目の中の丸太に気づかないのか。兄弟に向かって、『あなたのおが屑を取らせてください』とどうして言えようか。自分の目に丸太があるではないか。」

 

 

夏休みが終わり、新学期が始まりました。

家族や友達と楽しく過ごすごとができたでしょうか。

部活をがんばった人もいたと思います。

夏休み中の努力や経験は必ずこれからの学校生活に生きて来ます。

 

今年も昨年に引き続き、広島と長崎に原爆が投下された8月6日と9日、そして終戦の日の8月15日には平和への祈りを込めて、敬和のチャペルの鐘が鳴りわたりました。

毎日、何気なく聞いている鐘ですが、よく聞くと、平和への祈りにふさわしい、きれいな音色です。

 

パリオリンピックでは、多くの日本人選手の活躍が目立ちました。

3年前の東京オリンピックのときより、選手たちが、のびのびと楽しそうに競技しているのが印象的でした。

3年前は無観客でしたが、今回は観客と選手が一体となってオリンピックを盛り上げて行くのが伝わってきました。

皆さんも、元気をもらったのではないでしょうか。

 

7月には佐渡金山の世界遺産への登録が決定しました。

私も新潟県民として嬉しく思います。

ところで、今回、登録の鍵を握ったのは、日本と韓国の歴史をめぐる交渉だった、といいます。

以前、日本が佐渡金山を候補にあげたとき、韓国政府が反対しました。

第2次大戦中、朝鮮半島出身者が強制労働させられた被害現場だ、として反対したのです。

韓国は、世界遺産への登録について決定する世界遺産委員会の委員国です。

韓国の賛成が得られなければ、佐渡金山の登録はありえませんでした。

日本政府は、いったん推薦の見送りも検討しましたが、2022年に再度、推薦を決めました。

そして、長い交渉の結果、双方が歩み寄り、話し合いによって着地点を見出すことができたのです。

 

条件として韓国政府は、朝鮮半島出身の労働者が厳しい環境のなかで、危険な作業に従事したことをきちんと歴史に残すことを日本政府に求めました。

その求めにこたえ、今、佐渡の相川郷土博物館には、当時の彼らの労働の実態を示す資料が展示されています。

展示内容についても日韓で協議して決めたといいます。

 

朝鮮半島出身の労働者だけではありません。

江戸時代、佐渡金山は世界1の金の産出量を誇りましたが、当時、江戸や大阪など大都市からは、多くの無宿人(路上生活者=ホームレス)とよばれた若者たちが半強制的に送り込まれました。

あまりに厳しい労働のため、多くの人は5年くらいで亡くなったそうです。

これらは佐渡金山の負の歴史といえます。

人類の歴史には光と影の両面があります。

佐渡金山が、その光と影の両面を引き継ぎ、後世に伝えていく貴重な世界遺産になって欲しいと思います。

 

今日の聖書は、「おが屑(くず)と丸太」のたとえです。

おが屑とは、小さなゴミや塵(ちり)のことです。

イエスは言います。

 

あなたは、兄弟の目にあるおが屑は見えるのに、なぜ自分の目の中の丸太に気づかないのか。

 

私たちは、相手の目の中にある「おが屑」のようなわずかな欠点、弱点などを鋭く見抜き、見逃さずに攻撃します。

それに比べて自分の目の中にある「丸太」のように大きな弱点や欠点は見て見ぬふりをします。

相手から指摘されても認めようとしません。

正しいのはいつも自分で、間違っているのはいつも相手の方であると決めつけてしまいます。

これでは良いは人間関係を築けません。

イエスが言うように、まず自分の弱点や欠点を認めること、そして相手の長所を認めることです。

そうすることによって初めて、良い関係を築けるのではないでしょうか。

皆さんも、相手の小さな欠点を攻撃するのではなく、互いに相手の良いところを見つけるようにしてください。

そして、これは個人的な関係だけではありません。

民族と民族、宗教と宗教、そして国と国の関係についても言えることです。

今、世界中で進む分断と対立、戦争やテロの現実を思うとき、このイエスのメッセージは、大きな意味をもってきます。

イエスは、今日の聖書の箇所に続けて次のように言います。

偽善者よ、まず自分の目から丸太を取り除け、そうすればはっきり見えるようになって、兄弟の目からおが屑を取り除くことができる。」(5節)

 

今回、佐渡の世界遺産登録が決定し、韓国政府が最終的に賛成したことを知った時、私は驚きと感動をおぼえました。

相手の欠点やあやまちを攻撃するのではなく、その長所を認め、共に新しい歴史を創造しようという韓国政府からの呼びかけを聞くように思えたからです。

その呼びかけに、どうこたえるのか。

今、国際社会における日本の姿勢が問われています。

新学期を迎える今、私たちも聖書の言葉に導かれ、平和を作る一人ひとりでありたいと願います。

 

0826eye

今朝の敬和