自分探しの敬和学園で 人を、自分を、好きになる。
2024/05/09
【聖書:ルカによる福音書 12章 27-28節】
「野の花がどのように育つのかを考えてみなさい。働きもせず紡ぎもしない。しかし、言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。今日は野にあって、明日は炉に投げ込まれる草でさえ、神はこのように装ってくださる。まして、あなたがたにはなおさらのことである。信仰の薄い者たちよ。」
年度の切り替えの頃ですが、使い切ったと思っていた玉ねぎが思わぬところから1つ出てきました。やってしまった、もったいないことをしてしまった。すでに新しい玉ねぎを買って使っていたので、それなりの日にちが経っています。これまでも芽が出た玉ねぎを発見したことがあるのですが、たいてい忙殺されていて、周りが見えなくなっている時と重なるような気がします。バタバタして、相変わらず、余裕がないしるしです。ところが、1枚の芽が出た玉ねぎの絵には、芽が伸びる様を、神さまの声に応えようと成長する姿にとらえた言葉が添えられていました。芽の出た玉ねぎが全く違ったものに見えてきました。
この絵と言葉を描いたのは、星野富弘さんという方です。星野さんは口にくわえた筆やペンで、絵や詩を描く方です。先月28日に78歳で亡くなりました。カレンダーや絵葉書で作品を目にしたことがある方も割といらっしゃるのではないかと思います。聖書科準備室にも、カレンダーになっていた絵を数枚、壁にかけています。星野さんの作品にわたしが出合ったのは、高校生ぐらいの時でした。主に植物を描いた絵は眺めていると、なんだか優しい気持ちになるのですが、そこに添えられた言葉には、そんなとらえ方があるのか、と新しい目を開かれるような、そんな思いにさせられることがしばしばありました。
星野富弘さんって誰、という方もいらっしゃると思いますので、少しご紹介します。星野さんは、病気知らずの元気な少年で、中学は陸上部に入り、県大会で優勝したこともありました。高校では、授業はかなり苦労したそうですが、体育の時間と放課後のクラブ活動の時間は、生き生きして走り回っていました。クラブは器械体操部に入ったのですが、登山にもひかれ、山岳部に入部しないまま合宿にまで参加したこともあったそうです。大学では体育を専攻しました。体育の先生になりたかったからでした。大学卒業後、中学の体育の先生になりました。ある時、クラブ活動の指導中宙返りをした時、頚髄を損傷してしまいます。24歳でした。体を動かすことが大好きだった一人の青年が、首から下を全く動かせなくなりました。人工呼吸器をつけ、手術を繰り返しましたが、体の機能は戻りません。自暴自棄になり、お世話をしてくださる方に八つ当たりし、悪口を並べたてました。こんな人間が生きていていいのか、と悩み、死のうとしますが、死ぬこともできません。人の不幸を願ってしまう気持ちに苦しむこともありました。そんな中で、いただいた手紙に返事を書きたい思い、口にペンを加えて文字を書く練習をし始めました。余白を埋めようと絵を描くようになり、次第に絵を描いて、そこに文字を入れるようになっていきます。と書くと簡単ですが、口にペンや筆をくわえて書くので、目が回り、吐き気がして、長時間やっていると熱が出ることもあります。字を書くのに慣れてきても、一通の手紙を書くのに1週間、絵を入れた作品を描くのには、それ以上かかりました。それでも少しずつ、自分の動かない体と、絵を描くための一本の花から、いろいろなことを教わり、それらを絵や言葉にしてこられました。それらの作品を見ると、見方をほんのちょっと変えることで、全く違う受け止め方を見出すことができます。
先ほど、読んでいただいた言葉は、星野さんも好きだったという聖書の言葉です。イエスは、烏も野の花も人間のように働くわけではないけれど、神は養い、飾ってくださる。だから、神のかたちにつくられた人間を神が放っておくはずがない。思い悩まなくていいよと語りました。とは言っても、この言葉を聞いたガリラヤの農民たちはどう思ったでしょうか。自分たちは人間で、毎日働かないと生活できない、烏や野の花と比べられてもねえ、と思ったかもしれません。しかしイエスは、そのことはよくよくわかっている上で声をかけるのです。嫌われ者の烏や、踏みつけられる野の花に目を向けてごらんよ、よっぽど生き生きと生きているじゃないか。自分でできることなんて限られているし、うまくいかないことも多い。けれど、ちゃんと今日も生かされている。畑の作物も実っている。すごいことだと思わない? あえて、少し違うところに目を向けることで、今まで見えていなかった大事なことに気づくことができる、とイエスは伝えようとしたのだと思うのです。
4月がんばりすぎて、連休明け、調子が出ないという人も多いと思います。気温も高かったり低かったりと不安定です。でも来週からテストだし、フェスティバルの準備も本格的になっていくし。自分を追い詰めてしまいそうな時、休みながら、ちょっと違う見方ができないか、思いめぐらしてみてください。