クラブ活動

器楽部

2023/11/06

<器楽部> 第47回太夫浜コンサート「Re Start」を開催いたしました

 去る10月27日(金)、太夫浜コンサートを開催いたしました。私たちは、新潟市の国際親善名誉市民であるデューク・エリントンをリスペクトしています。彼は、1964年、新潟地震直後の新潟の惨状を聞いて、特別コンサートを開き、その収益金を全て新潟市に贈ってくれたジャズ界の巨匠です。

 デューク・エリントンの魅力はたくさんありますが、彼が一生を通じて掲げていたテーマ「自分のバンドメンバーのために作曲をすること」は、毎年変わっていくメンバーと共に活動を続けていく部活動顧問の私にとっても、大事にしたいことのひとつです。エリントンはピアニスト、作曲家であり、同時にバンドリーダーとしても優れた存在でした。こんな音楽を作りたい、だから、その枠にはまる優秀なプレイヤーをバンドに採用する。のではなく、こんな性格で、こんな音を出すこの人だからこそこのアレンジを、と一人一人を思い浮かべながら作曲をしていきました。今、自分の目の前にいる代わりのきかない存在のために。

 彼がこの「自分のバンドメンバーのために」を目標としたのには、理由がありました。それは「弱さ」です。バンドメンバーには、演奏会に遅刻する人、演奏中に眠ってしまう人、そんな自分を変えたい、と言いつつもいつまで経っても変われない人がいました。それでもエリントンは、その人の生き方や人格を否定したり、存在を排除したりすることはせず、むしろ「長い間一緒にいて、弱さをもつ彼らのために作曲することがとても面白かった」と、言葉を残しています。完璧な人たちのために曲を書きたかったのではなく、どこか欠けているところがあって、それでもこのメンバーにしか出せない音があるということを表現することに意味を見出してきたのです。

 

 現在の器楽部Jazz Hornetsにも「弱さ」があります。一番分かりやすいのは、そもそもプレイヤーが17人揃っていないこと。「足りないから」「少ないから」この1年、何度この言葉を口にしてきたでしょうか。足りない音を補うために、譜面とにらめっこして別の楽器に書き換え、音がしょぼくならないために、とにかく大きな音で演奏して、個々のソロのレベルを高められるように音源をたくさん聞いて。

 

 コンサートの後、ある生徒が手紙をくれました。私たちの音楽を聴き、恥ずかしいから匿名だけど、と控え目さを出しつつも「ファンになっちゃったから、どうしても書きたくなった」のだそうです。そこには、心温まる言葉たちが並んでいましたが、中でも私が嬉しかったのは「全員が主役のようにキラキラしていた」という言葉でした。「足りない自分たち」と向き合い過ぎて削がれていた時期を超え、生徒一人ひとりが、今できる最大限を出し切ろうとしたその姿勢が、気持ちが、その生徒に届いたのかもしれません。そして、それができたのは、これまでに私たちに演奏の依頼をくださった方々や演奏を聞き温かい拍手を送ってくださったみなさまの存在があったからです。いつも本当にありがとうございます。

 今振り返って、エリントンが大事にしたこの「弱さ」があるからこそ面白いという考え方、そしてそこから生まれた彼の曲の魅力に支えられながら、歩んできた日々だったと感じています。

 さぁ、再出発。11月11日(土)のオープンスクールでお会いできるのを楽しみにしています。