毎日の礼拝

毎日のお話

2023/09/13

宮本 武呂(地歴・公民科)

【聖書:マタイによる福音書 22章 37-39節】

 

 ヨーロッパを訪れて、初めて文明を見た南太平洋のサモアの酋長ツイアビの演説集である『パパラギ』は、鋭い洞察眼で現代文明を批評しており、現在にも通ずる指摘が多くある。ツイアビは人間がお金や物に取りつかれ、他者に分け与えることを嫌うようになり、心が貧しくなっていると警鐘を鳴らす。熟した椰子は自然に葉を落とし、実を落とすが、パパラギ(白人)は、葉も実も落とすまいとするヤシの木のように生きている、と言うのである。どうすれば、椰子は新しい実を結ぶか。椰子はパパラギよりもずっと賢い、とツイアビは語る。文明を発展させ、先進国を生きる私たちは、果たしてツイアビよりも幸福なのか。物質的な充足が必ずしも精神の幸福を意味しないのではないかと考えさせられる。自分で何もかもを独占するよりも、他者に分け与えることで真の何かを得る。忙しく生きる私たちの心の中に、そんなヤシの木を一本育ててみてはいかがだろうか。