自分探しの敬和学園で 人を、自分を、好きになる。
2022/12/05
【聖書:マタイによる福音書 6章 34節】
だから、明日のことまで思い悩むな。明日のことは明日自らが思い悩む。その日の苦労はその日だけで十分である。
先週はサッカー・ワールドカップで日本がスペインを破り、一次予選を1位突破するなど、日本中が湧き、私たちに勇気を与えてくれました。
今日は、二人のスポーツ関係の方を紹介します。
一人目は新潟市北区出身の力士、豊山です。
豊山は先週、相撲界を引退されました。豊栄の光星中学校の卒業です。
中学を卒業するまでは、この敬和学園と同じ新潟市北区で育った力士です。
現在29歳、6年半の相撲人生を駆け抜けました。
記者会見では引退の理由について「腕が限界を超えた。痛みで思うように体が動かせず、理想とする相撲がとれていなかった」と話されていました。
ケガさえなければこれからも相撲をとって行けるのに、29歳の若さでの引退は残念です。
しかし、一番、つらかったのは豊山自身だったと思います。
今場所は6年半の相撲人生をぶつけたつもりで、「後悔はない」とすがすがしい表情で話されました。
「思い出の一番は、」と聞かれ、優勝争いにからんだ2018年の名古屋場所千秋楽の御嶽海(みたけうみ)との取り組みだと答えられました。
既に優勝を決めていた御嶽海を、その一番で、豊山は下しました。
会見の後、テレビではそのときの取り組みを流しましたが、見事な相撲運びで優勝力士を下しました。
日本中が注目し、豊山に拍手を送った一番でした。
「これから自分はもっと強くなれる、という実感が湧いた、」とその時を振り返って話されました。
引退後は相撲界には残らず、パーソナルトレーナーをめざし、ケガなどで苦しい思いをしている人の力になりたい、自分が相撲で経験したことをそこで活かしたいとのことです。
その言葉にも、過去の栄光にしがみつこうとしない潔(いさぎよ)さと人間としてのやさしさを感じました。
普段、相撲をあまり見ない私ですが、新潟市出身の若い力士が語る一言、一言に耳を傾けました。
どのようなことも、それに真剣に向き合い、最後までやり抜くとき、その姿勢そのものが、人に感動を与えるということを、あらためて思いました。
そこには、その人自身の思いを超えた何か大きなもの、その人の人生、生き方が現れてくるからです。
二人目の方です。
1か月ほど前、女子スピードスケートの小平奈緒選手が引退されました。ピョンチャンオリンピックで金メダルをとった選手です。
長野市で行われた最後の試合を見事な滑りによって1位で締めくくりました。
試合後の記者会見で小平選手は次のように話されていました。
「自分は今日のスケートで悔いのない表現をすることができました。」
私は、小平選手が自分の滑りを「表現」ということばで言い表したことに注目しました。
スポーツ選手が自分のプレイを「表現」ということばで言い表すことは珍しいからです。
そして、これは何か大事なことを言っているように思いました。
小平選手にとって、スピードスケートは何よりも自分を表現する場だった、と気づかされたからです。
自分がどのような思いでスケートと向き合ってきたか、自分がどのように生きて今ここにいるのか、そして自分の将来への夢、この人生に何を求めて生きているか、
それら全てをスケートという数十秒間の短い時間に表現すること、それが小平選手のスピードスケートだった、ということを教えられたからです。
そして、「表現」とは、それを見る人、受け止める人がいるということです。
表現された自分の生き方をとおして、人に何かを伝えるのです。
もし、生きる勇気や喜びを伝えることができれば、それほど素晴らしいことはありません。
小平選手は、そのような思いをもってリンクに立っていたのです。
今日は、豊山と小平奈緒さんの言葉を紹介しました。
2人から教えられるのは、それぞれの勝負、試合にはその人の生き方が表現されるということ、そして、そのために一生懸命、準備をしてきたということです。
これは、私たちの学校生活についても大切なことを教えてくれます。
毎朝の礼拝、授業、部活動、そして今日はテスト3日目です。
自分の生き方をそこに表現するつもりで今日の試験に取り組んでください。
そして、皆さんの生き方そのものが、人に勇気を与えることができるような高校生活を、そして、そのような人生を歩んで欲しいと思います。
今日の聖書です。「明日のことまで思い悩むな。明日のことは明日自らが思い悩む。」
明日のことは神様にお委ねしなさい。そして、今日という一日を精一杯、生きなさい、というメッセージが込められている言葉です。
「明日は明日の風が吹く」という言葉を聞いたことがあると思います。
明日、どのような風が吹くかは誰にも分かりません。神様のみがご存じです。
ですから、今日という日を大切に、精一杯、生きることです。
先ほど、紹介した二人のアスリートも同じです。
それぞれ、悩みをかかえながらも、一日一日を誠実に生きたからこそ、その競技人生をまっとうすることができたのです。
私たちも、今日の一日、それぞれの課題に誠実に取り組むものでありたいと願います。