のぞみ寮通信

のぞみ通信

2022/03/24

のぞみ通信 2022年3月22日 第270号

題字 めぐみ館2年 Y.Kさん

 

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先輩へ記念品の贈呈(大望館お別れ会にて)

 

 

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 52回生の皆さん、卒業おめでとう。皆さんにお話ししたいことは、3つ。

 「闇の深さ」には意味がある 「朝顔はなぜ朝の決まった時間に花を咲かせるのか?ある研究者が、光を照らしたり、温かくしたりと好条件を整えて実験したが、これでは不十分だということが分かった。結果は、朝顔の蕾は朝の光によって開くのではなく、夜の時間の冷たさと、闇の深さが必要だということなのです。」(五木寛之『考えるヒント』より)ご存じでしたか?「夜の冷たさ」「闇の深さ」には意味がある。少なくとも生物学的にはそうみたいです。

 私たちが味わう「夜の冷たさ」「闇の深さ」にも、たぶん意味があります。むしろ、その夜と闇があって初めて、朝顔がみずみずしい花を咲かせるように、「苦難」や「試練」があるからこそ、私ならではの花を咲かすことができるのです。今は希望に満ちている皆さんにも、「人生真っ暗闇」にしか見えない時も来ると思う。その時に思い出してほしい。「その暗闇には意味がある」ということを。自分の弱さを痛感し、苦難の時を過ごすこと自体に意味があるのです。

 祈る人に 私たちは、毎日の礼拝で祈ってきました。私たちは、礼拝だから祈祷会だから、祈るのではない。祈りたいからです。「祈る人」とは「自分の限界に立っている人」です。「もうこれ以上は無理です!」と言う時、私たちは心から祈ることができる。そんな祈りを神様が聞いて下さらないわけがありません。弱さの中にある時こそ、神の無限の力が発揮される!と、聖書は語っています。

 私には使命がある-人生の意味が分かる時- 私たちは「祈る対象」を知っています。皆さんのこれからの人生で「死にたい」ほど苦しいと感じた時、主イエスを思い出してほしい。チャペルの正面にあるのは、古代ローマ時代の処刑の道具、十字架です。イエスは、「自分が代わりに死ぬから、あなたには生きてほしい」と願って、その十字架に架けられて死んだ方です。そして復活された奇跡を命がけで伝道した古今東西のキリスト者のお蔭で、この敬和学園が今も存在しているのです。

 あなたは「世界でたった一人のかけがえのない存在」です。あなたにしかできない、為しえない使命があります。だから、生きてほしい。生きてみた後で、自分の人生の意味が分かる時が、必ず来ます。「あぁこのことのために、この人のために生きて来たのかもしない」と。その時まで、生きてほしい。だから、人生はいつも冒険とならざるをえません。どうぞお元気で。(寮修了礼拝より)

 

 

 

 

寮修了礼拝 代表挨拶

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「『歓迎ケーキ』で始まった私の寮生活」 N.K(光風館3年・新潟県)

 私が「敬和」に入学し、「光風館」に入寮したのは、今から3年前の4月ではなく、半年遅れの2019年2学期の始業日でした。私は転校生としてこの「敬和」にやってきたのです。中学生の時、47回生だった姉から「敬和」の寮生活の話をよく聞いていました。しかし、当時の私は高校の進路として「敬和」への進学を考えていませんでしたので、姉が楽しそうに語る寮生活を羨ましく思うことはあっても、自分には関係がないと思っていました。

 いくつかの理由で公立高校から「敬和」に転校することになり、寮に入ることが決まると、姉がよくしていた寮の話をふと思い出しました。でも、「姉が話していたような楽しい寮生活が始まる」、そんなワクワクするような胸躍るような感覚は正直もてませんでした。むしろ、新しく始まる生活や未知の環境に対する不安、そして、「そもそも転校という選択は正しかったのだろうか」という疑念で、頭がいっぱいでした。

 モヤモヤした気持ちをもったまま始まった「のぞみ寮」での寮生活。私は入寮した初日の夜のことを決して忘れません。緊張していた私を、光風館52回生のみんなは、部屋へと誘ってくれ、買ってきたロールケーキで私を歓迎してくれたのです。あのとき、口に頬張ったケーキのおいしさと彼らの染み渡るような優しさに私の胸はいっぱいになりました。「歓迎ケーキ」で始まった私の寮生活はその後、喜怒哀楽の感情を伴いながらさまざまなシーンが展開されていきました。お気に入りの賛美歌を歌い、お祈りを捧げました。週末にはホラー映画を見て、悲鳴を上げながら抱き合いました。夜はカップ麺をすすりながらお気に入りの子の話をしました。テスト期間中は、夜遅くまで分からないところを教え合いました。そんな風にして、寮の仲間と過ごし、寮の仲間のことを知っていくうちに、さまざまなことに悩み、後悔しているのは、自分だけではないんだ、という当たり前のことに気づきました。

 「敬和生」、特に寮生は、さまざまな背景をもった人が多くいます。「自分はこうだった……、こんなことを経験してきたんだ……」という話をよく聞くことがあります。そんな話に耳を傾けていると、自分が抱えてきた悩みや後悔してきてきたことは本当にちっぽけなことのように思えてくるのです。私はかつて自分がとった転校という選択が、自分の「弱み」であるように思っていました。でも、よく考えてみれば、人は誰もが「弱さ」をもち、何らかの悩みや後悔を抱えています。それでもなお、自分の「弱さ」と真摯に向き合い、それを素直に受け入れ、また、それを他者、仲間と認め合い、補い合っていけることを、敬和に来て、敬和で出会った沢山の人と触れ合う中で、気が付くことができたのです。その気付きを、寝食を共にする日々の関わり合いの中で、また普段の何気ない会話の中で教えてくれた52回生の仲間、53・54回生の後輩たち、そして、寮の先生方に感謝を伝えたいです。

 卒寮していく私たち52回生だけでなく、53・54回生の皆さんもこれから自分の「弱さ」に悩み、苦しむことがきっとあると思います。でも皆さんには、助けてくれる頼れる仲間がたくさんいることを、そしてそんなあなたをそっと見守ってくれている神様がいることを、どうぞ忘れないでください。また、逆に「弱さ」に苦しむ仲間を助けられる立場にあることもどうぞ忘れないでください。私は「敬神愛人」をスクールモットーに掲げるこの「敬和」で、そして「自主・自律・自制・思いやり」の「心の習慣」を掲げるこの「のぞみ寮」で、気づき、経験し、学んだことを胸に、自分のこれからの道を強く逞しく、そしてしなやかに歩んでいきたいと思います。

 沢山の笑いと思い出を一緒につくってきた大切な友、52回生のみんな、かけがえのない時間を共有してくれた後輩たち、いつも私たちのことを考え、つらく苦しい時には傍に寄り添ってくれた寮の先生方、3年間、毎日休まず美味しい食事を作ってくださった栄養士・調理員さんたち、日常生活をいつも陰で支えて下さった施設・夜警の職員の方々、そして、私たちの成長を願い、温かく見守ってくれた保護者の皆さま、私の両親に心からの感謝の気持ちを伝えたいです。3年間、本当にありがとうございました。

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先輩へ記念品の贈呈(めぐみ館お別れ会にて)

 

 

 

「保護者の言葉」  A.K 様(みぎわ館寮修了生保護者様)

 52回生の皆さん、おめでとうございます。

 入寮してからもう3年が経ちますね。今、振り返ってみると何を思い出しますか?様々なイベント、当番の仕事、友愛館で食べる美味しいご飯、テスト前に焦ってする勉強、友達とのたわいもない会話、みんなで入るお風呂、冷房のある部屋へ布団を運んで寝たこと、楽しかったこと、嬉しかったこと、悲しかったこと、辛かったこと、たくさんあると思います。

 まだあどけなさが残る15才で親元を離れ、寮生活をしながら高校に通う。みなさんの人生で一番大きな挑戦だったのではないでしょうか。私は、その大きな挑戦をした皆さんを心から尊敬しています。色々な壁があり、苦しみ悩んだこともあったでしょう。もう寮を辞めたいと思ったことがある人もいるでしょう。私の娘もその一人です。精神的に苦しく不安定なとき、「寮を辞めたい」と言ってきたことがありました。そんなとき、励まし、慰め、泣いてくれた友達がいてくれました。私はそれを聞いたとき、とても嬉しかったことを覚えています。その他にも色々なことがあるたびにたくさんの友達から支えてもらいました。本当にありがとうございました。

 そして先生方、子どもたち一人一人の個性を理解し受け入れ、昼夜問わず気にかけ、寄り添い、とにかく温かい心で接してくださり、深く深く感謝しております。敬和学園のぞみ寮は、本当に最高で大好きです。ありがとうございました。

 

 

寮生リレー

「3年生を送り出して思うこと」  M.M(みぎわ館1年・新潟県)

 私にとっての3年生。それは「寮」を「家」に変えてくれた人です。未知の世界にドキドキだった春、何も分からない私たちに向けて先輩は、優しく声をかけてくださいました。たわいのない話で盛り上がったり、相談を聞いてくださったり、一緒に笑いあう日々を通して、次第に「家だ」と思うようになりました。同時に、寮で一緒に過ごす仲間は「家族」だと思うようになりました。それほど充実した一年を過ごすことができたのは先輩方のおかげでした。

 そんな3年生を送り出すにあたって、私たち1年生はたくさんの企画に携わり、特に「3年生一旦お別れ会」は、初めて1年生が主催しました。5人で一から企画を考えて制作して、練習して、多忙でしたが、3年生の為だと思うと辛くはありませんでした。準備の最中、ごたつくこともあったけれど、私たちらしいものを用意できたと思います。愛が届いていたら嬉しいです。

 1年なんてあっという間。だからその一瞬一瞬を大切に、なんて思うようになったのは、本当に最近のことでした。3年生がいなくなるなんて実感はなく、なんだか不思議な感覚です。きっと私たちはこの感覚に慣れてしまう。けれど、私たちが3年生と過ごした日々は永遠に色褪せません。僅かな時間だったけれど本当に出逢えてよかった。一つ一つの思い出は一生の賜物です。数えきれないほどの愛をもらった分、今度は私たちが後輩に愛を与える番。先輩から教わったみぎわの素敵な伝統を受け継いでいきます。離れていてもずっと家族です。それはこれからも変わりません。巣立っていく3年生を見ると寂しくなるけれど、たくさんの愛を抱えながら来年度も歩んでいきたいです。

 

 

〜寮務教師の一言〜

「コロナ禍2年目、無事終了」  男子寮 岩原 寅太郎

 2021年度が終了いたします。昨年度に続き新型コロナ感染症に翻弄された一年となってしまいました。それでも、感染予防対策を講じながら、寮生たちには「行動制限」を理解してもらいながら、何とかできる範囲で「のぞみ寮」教育を展開することができました。これも保護者の皆様のご理解とご協力のお陰と深く感謝申し上げます。

 春休みに入ります。各ご家庭でこの一年間の歩みを振り返りながら心と体リフレッシュしてきてほしいと思います。帰寮日は4月4日(金)18:00です。新年度、新入寮生を加えて、新たなスタートが切れることを楽しみにしています。