のぞみ寮通信

光風館

2011/01/30

光風館通信 第281号(1月30日)

< 3年生の歩みを振り返って… >
 
 「いよいよこの日がやってきたんだな…」、そんな風に思っています。

明日(2/1)から3年生たちは「自宅学習期間」に入ります(何人かは不本意ながら光風館に暫く留まるようだけど…)。卒寮と卒業のセレモニーのために2月末に一旦光風館へと戻ってきますが、それはあくまでも「ゲスト」としてです(だって、光風館に戻ってきても、すでに自分たちの部屋はないんだものね。)だから実質的には、明日が3年生にとって光風館での最後の日になります。
 今、41回生光風館生の三年間を振り返ってみると、いろいろなことが走馬灯のように思い出されます。1年生だった時、君たちはよくミーティングをしていました。私の指示ではなく、あくまでも自主的に開いていました。時には激しい「言い争い」に発展することもありました。でも、お互いの「暴露話」を聞く時間をもつなど、工夫を凝らしながら約一年間、毎週のようにこれを続けました。そんな様子を見ていて、「ああ、この1年生集団は、将来ものすごくいい学年になるな…」と思っていました。
君たちは上級生たちからもとても可愛がられていましたね。「人懐っこい」メンツが揃っているせいだったのでしょうね。まったく臆することなく、先輩たちの部屋にしょっちゅう出入りしていました(君たちは特に当時の3年生、39回生の先輩たちが大好きだったものね。)

 

学年の後半になって、副ブロック長を選出する際には、KくんとOくんの二人が立候補しました。得票差は僅か1票でした。本来であれば、僅か1票でも得票数の多い方が副ブロック長になるはずでした。でも、二人がした立会演説があまりにも素晴しく(「光風館をこんな館にしていきたいんだ!!」そんな熱い想いを語ってくれたんだよね、)これを聞いていた上級生たちが感動してしまったのです。そして、上級生たちは私にこんな風に言ってきたのです。「寅さん、副ブロック長が二人ではダメですか?甲乙つけがたいので、KとOの二人にやらしてみたいのですが…」と。前例のないことでした。でも、当時ブロック長だったTくんらが、信田寮長先生にまで掛け合って、これが認められることになりました。それ以降、二人はまさに二人三脚でこの学年、そして光風館を引っ張っていくことになりました。

 

2年生になった君たちは「中弛み」してしまいましたね。毎週恒例のミーティングもいつの間にかやらなくなっていました。「世代交代」の時期には、盛んに「39回生を超える学年になる!!」を口にしていましたが、具体的で継続的な取り組みは出来ませんでした(自分たちで始めた「自習時間中の見回り」でさえも途中で挫折してしまったね。)1年生に「タメ口」を認めるなど、下級生に迎合するような雰囲気もありました。そんなこともあって、下級生たちからの信用や尊敬は今一つでした(それが、学年間の確執を生むことにもなったんだよね。)

 

3年生になってからも「中弛み」したままで、君たちの学年が大きく変わることはありませんでした(もちろん個人レベルでは、それぞれに大きな成長はあったんだけど)。それ故に、私から小言を言われることが続きました(清掃や自習時間への取り組みのこと、部屋の整理整頓について、後輩の指導に関して、等々。)ハッキリ言っておきたいと思います。おそらく自覚もあるんだろうけど、君たちがずっと目指していた「39回生を超える」は、いろんな意味においてできませんでした(きちんと評価してやることも教師として必要で大事なことだと思うから言っておくよ。)今年度、光風館で起きた好ましくないいくつかの出来事は、やはりそういう背景があったからなんだと思います。(「館運営がうまくいっているかどうかは3年生を見れば分かる」が僕の持論。)
でもね、いいんです、反省があればね(私自身も光風館の担任として、指導が未熟であったことを反省しているんだ。)人は、自分自身を謙虚に見つめ直し、素直に反省することができた時、さらに成長できるのです。ぜひ、これから歩んでいく道で、その反省を大いに生かしていってください。
 
3年生の皆、君たちは私の愛すべき教え子です。こんなにも純粋で、ハートの温かいメンツが揃っていたんですもの。君たちが最上級生となった今年度一年間、いろいろな問題も起きたけど、それでも光風館に温かい雰囲気が存在し得たのはやはり君たち3年生一人ひとりの人柄に拠る部分が大きかったのだと思います(退寮者が光風館から一人も出なかったのは、その何よりの証拠だと思うよ。)優しくて、礼儀正しくて、人懐っこい、そんな君たちが、僕は大好きでした。次に会えるのは一カ月後ですね。「自宅学習期間」は、自分の進路で必要となることに多くの時間を使ってください。寮修了礼拝の時、私の涙腺は緩んでしまうかもしれませんが、君たちが胸を張って元気よく光風館を巣立っていく姿を見守りたいと思います。                

(岩原)
 

 
 
 
 
 
< 礼拝のお話し >

 

O.I.(3年)
 最後の「お話」に何を話そうか、それを冬休みからずっと迷っていました。しかし、その内容を決めたのは結局一昨日のことでした。
 それはOに「Iさん、今日、語りましょう」と言われたことがきっかけでした。それは些細な言葉でしたが、「語る」という言葉に引っかかるものがありました。なぜなら、Oとは毎日のように話しているからです。そこで、自分たちは「語る」という言葉と「話す」という言葉を自然に使い分けていることに気付きました。そして、自分はこの3年間の寮生活の中で、「語る」という行為に支えられてきたのではないか、そんなことを思いました。「語る」と「話す」は辞書のうえでは同じ意味ですが、自分たちの認識では言葉の重みが違うように感じています。
 
 3年間、さまざまな人とさまざまなことを語ってきました。その中でも、自分の中に深く残っているのは、先輩たちと語り合ったことが多くあります。光風館の先輩には、多くの個性的な先輩がいました。その人達とは、軽いものから重いものまで、2年間この光風館で語りました。寮のことだったり、地元のことだったり、恋愛観のことだったり、サッカーや音楽のことだったり、本当にたくさんのことを語ってきました。そこで、自分よりも長く生きている先輩の話は、自分にとって刺激的で、自分の考え方に影響を与えてくれました。その中で、最も自分にとって影響を与えてくれたのが、39回生の先輩に言われた「美学をもって生きろ」という言葉でした。美学とは、自分の心の芯のことですが、それは、この場で言えばただのクサい言葉です。多分、たいていの人がそう思ったはずです。しかし、なぜ、その言葉が自分に深く影響を与えているかというと、やっぱりその人と語っていく中で、その人の経験だったり、性格だったりを知ることが、その人の言葉に説得力をもたせていたからです。
 
 今、3年生の「選択聖書」では、自分史という授業をしています。その自分史では、自分の人生を振り返り、良かったことも悪かったことも、洗いざらいにして、自分の人生を発表しました。その中で、「他の人に自分のことを知ってもらい、自分のことを知らせることで大きな影響を受けた」という感想をもつ人が多くいました。しかし、そのような授業でも僕はそこに壁を感じました。その自分史では、くだらないことを話すことはほとんどないし、すべての人が、自分の体験したことや自分にとって重たいことを話し切ったとは感じませんでした。それは、寮で壁のない状態で、本当にいろいろなことを話してきたからこそ、感じられたことだと思います。くだらないことも、まじめなことも、軽いことも、重たいことも含めて、知ってこそ、その人を尊敬でき、その人の言葉に説得力を感じることができると思います。
 つまり、学校でわざわざそのような機会を与えられなくても、光風館の中では、それ以上の経験ができるということです。「語る」ということで、自分は相手のことをしり、自分のことを知り、他人の繊細な部分を知り、人との関わり方を知り、自分の生き方を学んでいくことができたのだと思います。それが、寮生であることの意味の大きな部分だと思います。
 大げさなことを言ったように聞こえるかもしれませんが、何気ない会話から始まることだと思うし、自分でもそこまで深く考えるようになったのは、Oの一言があったからだと思います。だから、皆にはまず、些細な会話を大切にしてほしいです。
 
今までさまざまなことをこの場で話してきました。企画すること、ゲームについて、部活について、熱中できることについて、さまざまな、寮生活を充実させるためのことを勧めてきたと思います。しかし、それ以前にこの寮で暮らしているということ自体がすごいことではないでしょうか。私が、最後に伝えたいのはこのことなのです。
いつかのミーティングで「今の光風館に満足しているか」と質問したとき、半分ぐらいしか手が挙がらなかったことを覚えています。だけど、「光風館生」はもっと自信をもってもよいと思います。
寮で暮していれば嫌でも礼拝やミーティングで誰かの話を聞き、同年代の人間と24時間一緒にいます。それを体験できるのは僅かな人だけだと思うし、人生の中でそのような経験をできるのは本当に僅かな間だけです。
確かに、罰食や自習時間の取り組みの問題はありますが、それも年々解決していっているように思います。数字がすべてではありませんが、欠席者が少ないことや光風館生に退寮者が少ないことも、光風館のよいところだと思います。だから、あとは自信をもつことが何よりも大切だと思います。そこから楽しめることを見つけていってください。そして、自分だけではなく他人のことにも気付ける寮をつくっていってください。より多くの人が光風館を楽しみ、光風館に誇りをもてるような、そんな館をつくっていってください。これからの光風館に期待しています。