のぞみ寮通信

みぎわ館

2020/10/08

みぎわ館 128号《お母さん、ありがとう。》

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 最近、3年生とじっくり話をするチャンスに恵まれています。進路のために志望動機を考えたり履歴書を作成したりするなかで、自分の歩んできたこれまでを振り返って様々な気付きをしているようなのです。

 Hさんも、事務室で願書作成をしながらこんな話を聞かせてくれました。「中学までは何をやっても駄目だったんです。友人関係も、勉強も部活も、学校も、家族も。何もかもうまくいかなくて、こんな私ダメだってどんどん心閉ざして。何をどうしていいかわからなくて、お先真っ暗だと思ってたんです。高校なんてどうでもよかった、どうせ行ったって何にもならないと思ってて。そんな時に敬和のパンフレットを手にし、目を通すうちに「ここに行きたい!」と願うようになっていったんです。でも、私の家からは通うことはできないから絶対に寮生活しなきゃだから親に負担が大きいと思って、ずっと言い出せずにいたんです。中2から敬和に行きたいと願い始めて、親に初めて口に出来たのは中3の1月。入試直前でした。オープンスクールにも行きたいと願い続けていたけど、きっと無理だし……というか、親に言うのがなんだか申し訳ない気持ちでいっぱいで。ずっと言い出せずにいたんです。中3の1月に、最後の最後のチャンスかもと思って「どこか行きたいところ、本当にないの?」と母に聞かれ、決意して「敬和」と答えたら、受けさせてもらえ、入学が許可され、敬和にものぞみ寮にも「いってらっしゃい!がんばって!」と送り出してもらえて。母には心から感謝なんです。もっと早くに言えたらよかったとも思うけど、私は言えない時間も大事だったんじゃないかと今では感じています。この3年間はいろんなことがありました。親元離れて仲間との生活だから、これまでよりもずっといろんなことがあって。辛いこと苦しいこと悲しいこともたくさんあったけど、その全てをみんながいてくれたからちゃんと乗り越えてこれてたと思えます。振り返ってみたら、全部よかったことばかりです。みんなにも本当にありがとうと思います。おかげで私はあの時とは全然違う私になれています。卒業しても頑張ってやっていける気がします。」

 こんな話を構えることなく、満面の笑顔でサラサラと話してくれたHさん。その笑顔がキラキラで、聞いてる私は涙ぐむのですが、そんな私を見てもハハハ!と笑ってくれるくらい彼女の中では、とことん納得のいった話、とことん振り返って、結論に至った話なのです。とことん母や仲間のやさしさに涙し、できない自分を嘆き・悔やみ、でもその足りなさが人の優しさに触れ、絆を強め、輪を作るものであることを知り、できない・足りない自分をも認め好きになってこれたのだそうです。「改めて振り返ってみると、足りない自分って大事だなぁ」とつぶやいていました。

 足りない自分って大事。その言葉に、とっても心が温かくなりました。不安になり、自分を責める時、その責め場所は自分の足りなさです。自分の足りなさが辛いから、人の足りないところを責めてしまう。でもそれは責めるべきものではなく、人の輪を作り、認め、好きになるために必要なものなのだとHさんは教えてくれました。3年間、みぎわ館で仲間と共に暮らす毎日を通して、いろんな涙を流し、笑い、語り合う月日と関りがそれを教えてくれたのだそうです。足りない自分をみんなのおかげで認め愛することができるようになったHさん。なんてことないように語ってくれたその横顔はとってもかっこよかったです。