自分探しの敬和学園で 人を、自分を、好きになる。
2017/01/27
サフランライス(クリームソース、チキンのせ)・グリーンサラダ・コンソメスープ・牛乳・チョコケーキ
敬和には労作という授業がある。
週に一回、畑仕事や、今の時期なら雪かきなど、労働をする時間である。
そのおかげで、敬和の生徒はよく働く。
ボランティアなどに出かけても、他校の生徒とは比べ物にならないほど、よく働く。
敬和学園の人格教育の柱と言っても良い。
俺はその労作が苦手だ。
手を動かすより舌を動かす方が得意なんで、しょっちゅう先生や生徒に怒られている。
駐車場の奥に労作教室というのがあって、そこに労作着に着替えて集合するんだが、いつも遅れてくる不届きな生徒がいる。
担任の先生は、「こらー!始業の鐘が鳴ったぞ!走れ!!」と叫ぶ。
遅れた生徒は走り出すが、その一番後ろを走っているのが俺だ。
大雪の日など、「ねえ、今日、労作やるの?」と担任の先生に聞くのも俺だ。
「やらない訳ないでしょ。授業なんだから」と若い女の担任の先生は冷たく言う。
「だよね。授業だもんね」と俺。
畑の草むしりをやっている生徒に、「おい、何か面白い話しろよ」とちょっかいを出す。
生徒もしばらく相手をしてくれるが、「すみません、先生と話してると成績を2にするぞって言われてるんで」と言って笑いながら立ち去って行く。
この間も、木陰でサボっていたら、数人の生徒に、「T先生、ちゃんと働いて下さい!」と大声で注意された。
たまたま担任の先生が休みの日は大変だ。
生徒の目の色が違う。よく働く。
「きょうはT先生しかいないから、頑張れって言われてるんで」と生徒は言う。
一人、「先生、今日は寒いから、教室でコーヒーでも飲んでて下さいよ。」といつも言ってくれる生徒がいた。
いい奴だったな。
ランチホールで皿洗いをしているのも、盛り付けをしているのも、労作当番の生徒だ。
みんなほっぺたを赤くしながら、笑顔で働いている。
入試も入学礼拝も、生徒の労作がなけりゃ、敬和は回らない。
ただ働きじゃない。
学費を払って働いてるんだ。
敬和は先生じゃなくて生徒でもってる学校なんだ。
(T.H)