月刊敬和新聞

2009年7月号より「鴨川ホルモー 敬和ホルモー -フェスティバル直前の全校礼拝より-」

小西二巳夫(校長)

鴨川ホルモー
 鴨川ホルモーという不思議なタイトルの小説があります。中身もなかなかヘンです。鴨川は京都の町の中心を流れる川です。ホルモーとホルモン焼きは一切関係ありません。ホルモーは京都にある4つの大学の学生10人がそれぞれ100匹ずつの鬼を率いて行う「オニごっこ」です。主人公は安倍明です。彼は京都3大祭りの一つである葵祭でアルバイトするのですが、そこで同じ新入生の高村と知り合い、同時に3年生の菅原真から「京大青竜会」というサークルに誘われます。やがて安倍たちは、自分たちが「ホルモー」で戦うために集められた10人であることを知らされます。はじめ半信半疑だった10人も、一つ一つの儀式を終え、それまで見えなかった1000匹のオニが見えるようになるにつれて、自分がホルモーの一員になったのは見えない力が働いたこと、そして自分たちを神様が選ばれたことを受け入れざるをえなくなります。やがて、安倍、高村など10人の500代目京大青竜会は、ホルモーの練習を1年2年と重ねの3年目を迎えます。 ホルモーの主役は3年生であり3年目が本番です。それは1回数十分かかるホルモーで、6回の他校との闘いに臨むためには2年間の準備と体験が必要だからです。

敬和ホルモー
 鴨川ホルモーの物語は敬和学園の3年間と重なります。とくに、フェスティバルの連合活動に取り組んでいる3年生の今と重なります。5日後の本番に向けての連合活動、うまくいっていることよりそうでないことの方が多いはずです。真剣に取り組めば取り組むほど悩みが出てきているはずです。逃げ出したくなる時もあるはずです。このまま時間が止まってくれたらと考える時もあるでしょう。3年生は自分たちのクラス名をつけた6連合の対戦を目の前にしているのです。敬和学園は今まさに敬和ホルモーの時を迎えています。そこで敬和ホルモー(フェスティバル)を前にしたみなさんにぜひ伝えたいことがあります。それは最強ホルモーと思われる芦屋のチームとの決勝戦を前にしたときの安倍の言葉です。彼らが特別ルールのホルモーを行うことになったのは、いわば安倍の芦屋に対する個人的な感情からです。それにもかかわらず、チームのメンバーは自分たちができることに一生懸命取り組んでくれるのです。安倍はそうした仲間の存在を目の当たりにして次のように語りました。

自分を信じて、仲間を信じて、そして神さまを信じて
 「高村たちが、あれほど強い心を持っているのはなぜか。それは、信じているからだ。彼らは自分の力を信じている。何より彼らは仲間の力を信じている。・・・それに比べれば俺はどうだ。俺は自分の力をこれっぽっちも信じていない。つまり、俺は自分の仲間を信じていない。俺のためにずっと力を貸してくれていた人のことにも、何も気づいていない。・・・なのに、俺だけが彼らを信じていない。恥ずかしかった。俺はこれまで自分のためにだけホルモーをやってきた。個人的な理由のため、ただの人数あわせに仲間を利用し、口だけで感謝の意を示しながら、その実、まるで、彼らの力を信用していなかったのだ。我々にはどうしても勝たなければいけない理由がある。だがそんなものは、どうでもよかった。それよりも、もっと大切なもののために戦いたかった。自分のためではなく、仲間のために・・・」。

神さまがこの時を与えてくださっている
 自分中心にしか物事を考えることのできなかった安倍明がホルモーに関わることによって人間的に大きく成長しているのが、この告白からわかります。そして、ホルモーを通して考え、悩んでいる安部のこれからが、希望にあふれたものになるであろうことが想像できます。敬和生は自分が神さまに選ばれたとの自覚を通して、フェスティバルへの取り組みを通して、成長した自分と仲間に出会えることができるのです。それでは、神さまが必要な力と知恵と協力を必ず与えてくださることを信じながらこの時を歩んでいきましょう。必ずやそれがこれからの生きる力になり、希望の源になることを心に刻みつつ、神さまが与えてくださった課題に一緒に取り組んでいきましょう。