自分探しの敬和学園で 人を、自分を、好きになる。
2024/05/07
【聖書:コへレトの言葉 3章 1-2節】
何事にも時があり
天の下のできごとにはすべて定められた時がある。
生まれる時、死ぬとき
植える時、植えたものを抜くとき
連休が終わり、今日から学校生活が再開します。
皆さんも家族や友達と連休を楽しく過ごせたでしょうか。
特に今年は天候にも恵まれ多くの観光地は人でにぎわいました。
さて、連休の魅力は、その期間、定められたルーティンから解放されることです。
学校では、すべてのスケジュールが時間によって定められています。
例えば授業の開始と終了時刻、昼休みや放課、スクールバスの時間などです。
それによって、多くの生徒が共に学び、経験を共有することができるようになります。
それは学校だけのことではありません。会社やお店、役所も同じです。
協力して、何かを作り上げようとする時、定められた時間の枠(わく)という秩序が人間には必要だからです。
そして学校では、この時間の枠をとおして時間やルールを守ることの大切さを学び、人間的にも鍛えられるのです。
しかし、そのような時間の枠に従って行動するだけでは、人の心は満たされません。
人の心はAIのような人工知能とは違うからです。
決められたスケジュールから解放されて、もっと自分自身の時間を自由に生きてみたい、そう思う時が誰にもあります。
それは、大人も子どもも同じです。
それは、人間にとって本質的な欲求です。
そのために毎週、休日があり、一年に何回か比較的長い休みがあるのです。
皆さんはこの連休中、自分自身の時間を過ごし、リフレッシュできたでしょうか。
ぜひ、今日から、再び新たな気持ちで学校生活にのぞんで欲しいと思います。
ところで、学校や社会が定めるスケジュールは言うまでもなく人間が定めたものです。
授業開始時間も学校の先生が決めたものです。
電車やバスの時刻表もJRやバス会社が、毎年、決めています。
しかし、聖書はこのような時間とは別にもう一つの時間がある、と言います。
その時間は人間が自分で決めることのできない時間、人間が支配することのできない時間です。
それは神様が定め、神様によって支配される時間とされます。
時計のことを英語でクロックと言いますが、それはギリシア語のクロノスという単語に由来します。
電車の時刻表のように、人間が決め、自分でコントロールできる時間をクロノスとよびます。
それに対して、人間が自分の力では支配できない時間、神様によって定められた時間をカイロスとよびます。
カイロスは、時計で測られる時間ではなく、人間にとって大きな意味をもつ特別な時(とき)を意味します。
クロノスとカイロス、私たちの人生はこの2つの時間によって作られます。
今日の聖書です。
「何事にも時があり
天の下のできごとにはすべて定められた時がある。
生まれる時、死ぬ時・・・」
ここで言う「時」は、言うまでもなく、神様が定められた「時」=「カイロス」のことです。
生まれる時、死ぬ時を人間は自分で決めることができません。
それらは、神様の支配のうちに置かれています。
作者コへレトは次のように続けます。
殺す時、癒す時 破壊する時、建てる時 泣く時、笑う時
嘆く時、踊る時 愛する時、憎む時 戦いの時、平和の時
これらは、私たちの人生そのものではないでしょうか。
これらの言葉の背景として、戦争や自然災害、権力者の横暴や社会的弱者に対する虐待など、当時の厳しい社会状況があったといわれます。
コヘレトは、自分の力だけではどうすることもできない、これらの現実に絶望するのではなく、神様の確かな導きと支配に信頼し、日々の日常生活を大切に生きることを人々に教えました。
さて、今年も敬和の桜はちょうど入学式の頃に開花し、やがて散り、今、新緑の季節を迎えています。
何事にも時があることを、ここにも感じます。
皆さんは、「桜の開花600度の法則」を聞いたことがあるでしょうか。
それは次のような法則です。
桜には開花の前年の夏に花芽(はなめ)ができます。
桜は秋から冬にかけて休眠状態に入って年を越します。
2月に入り、気温がぐっと上がる日に休眠から目覚めます。
それを「休眠打破」といいます。
休眠打破の日から、一日の最高気温を積算し、600度になった日に桜は開花するといいます。
つまり、休眠打破の日の最高気温が10度だとします。
翌日の最高気温が12度とすると、10+12=22度です。
さらに翌日が13度とすれば、22+13=35度となります。
これを続けて600度になった日に開花するというのです。
過去12年間の東京都のデータでは、誤差は1日か2日、最大でも3日だったといいます。
桜はこのような法則にしたがって、毎年、花を咲かせます。
私はこの法則を聞いた時、人間の成長に通じるものを感じました。
つまり、すべての子どもたちは、花芽を宿している。
そして、誰もが、いつか、花を咲かせることを願って生きている。
しかし、花はすぐには咲かない。
秋から寒い冬を迎え、休眠状態に入らなければならない。
しかし、そのとき何もしないで眠っているのではない。
いつか来る、開花のための備えをしているのだ。
そしてある日、休眠打破が起きる。
私はその日を「やる気スイッチが入る日」とよんでいます。
やがて、すべての条件が整ったとき、花は咲く。
皆さんもいつの日か、それぞれが自分自身の花を咲かせて欲しいと思います。
そして、そのための大切な備えが、日々、この敬和学園でなされることを願います。
今朝の敬和