自分探しの敬和学園で 人を、自分を、好きになる。
2024/03/15
【聖書:創世記 8章 21~22節】
「人に対して大地を呪うことは2度とすまい。人が心に思うことは、幼いときから悪いのだ。わたしは、この度したように生き物をことごとく打つことは、2度とすまい。
地の続くかぎり、種蒔きも刈り入れも
寒さも暑さも、夏も冬も
昼も夜も、やむことはない」
さて、今日は、いよいよ2023年度、終業の日です。
高校時代の1年は、長い人生のなかでも特別の意味をもっています。
年を重ね、大人になってからの1年と、それはまったく違います。
それぞれが様々な思いで、今日の日を迎えていることでしょう。
先日、54回生を送る会が行われました。
卒業生はすがすがしい、良い表情をして巣立って行きました。
わたしは多くの保護者から、「すてきな卒業式でした、」と声をかけていただきました。
学年の出し物もそれぞれ素晴らしいものでした。
ハレルヤ合唱について、敬和を退職されたある先生は、「自分が今まで聞いたなかで、最高だった、」と言われました。
卒業祝福礼拝・送る会は、敬和教育の集大成といえます。
あのような送る会を作り上げてくれた皆さんに、あらためて感謝の思いを伝えたいと思います。
今年度はコロナの制限が解除された最初の年でした。
不思議なもので、コロナの頃が、もう遠い過去のように感じられるのは私だけでしょうか。
送る会を観ていて、敬和は完全に、コロナの3年間を乗り越え、新しい時代に入ったことを実感しました。
この勢いで4月には57回生を迎えてください。
ウェルカムデーでは、あのハレルヤ大合唱で、新入生たちを驚嘆させてください。
2023年度も終わろうとしていますが、良いことばかりではありませんでした。
学校では、盗難や器物破損、飲酒、喫煙など生活指導上の問題が起きました。
大変、残念なことです。
来年度は、少しでも減らすように全校をあげて努力しましょう。
学校は、生徒一人ひとりが安心して学べる、みんなにとって楽しい場所でなければなりません。
そのためには生徒一人ひとりの自覚が一番大切です。
世界に目を向けると、昨年の夏は、地球の沸騰化と言われるほどの猛暑に見舞われました。
環境問題は深刻化しています。
ウクライナに続き、ガザでの戦争も起きました。
ガザでは多くの子どもたちが今も犠牲になっています。
このような状況を見る時、あまりに問題が大きすぎて、希望を見失いそうになります。
今日は、旧約聖書の「ノアの箱舟の物語」から学びたいと思います。
内容を紹介します。
地上に悪が増し加わり、暴虐や暴行が広がったため、神様は、人を創ったことを後悔します。
そして、洪水を起こして、地上から、人だけではなくすべての生き物を絶滅しよう、と考えます。
ところがそのとき神様は、ノアという一人の老人に目を留めます。
ノアがどのような人物であったかを、聖書は簡潔に記述しています。
「ノアは神に従う無垢(むく)な人であった。ノアは神と共に歩んだ。」
神様はノアに箱舟を造るように命じます。
箱舟の中には、ノアの家族とすべての種類の生き物を乗せるように命じます。
ノアはその言葉に従います。
やがて大雨が降り始め、洪水が起こり、四十日と四十夜、それは続きます。
高い山々の頂までが水に沈み、あらゆる生き物が滅んでしまいます。
やがて水が引き始めます。ノアは窓を開け、鳩を外に放ちます。
鳩は脚を休める場所がないので、すぐに箱舟に戻って来ました。
7日後、再び鳩を放つと、夕方になってノアのところに帰って来ます。
なんとそのくちばしには、オリーブの葉がくわえられていました。
それによって、ノアは地上から水が引いたことを知ります。
やがてノアとその家族、箱舟に乗った生き物たちは、船から地上に降り立ちます。
箱舟から出て、ノアが最初に行ったのは、祭壇を築いて神様に感謝の礼拝をささげることでした。
そのとき、神様が口にされたのが今日の聖書です。
それは、神様の決意の言葉です。
「人に対して大地を呪うことは2度とすまい。人が心に思うことは、幼いときから悪いのだ。わたしは、この度(たび)したように生き物をことごとく打つことは、2度とすまい。」
こうして人類と地上の生物は滅亡から救われました。
「ノアの箱舟」とはこのようなお話です。
さて、神様は、なぜ、地上から人をぬぐい去ろうと思ったのでしょうか。
それは地上に、悪と暴虐がはびこったからです。
ここであらためて考えてみなければならないことがあります。
それはこの洪水の後、はたして何かが変わったのだろうか、ということです。
人は少しでもよくなったでしょうか。
世界は少しでもよくなったでしょうか。
洪水以前と以降では何も変わっていないのではないでしょうか。
神ご自身、洪水の後で、「人が心に思うことは、幼いときからわるいのだ」と言われます。
人間には期待できない。大洪水のような恐怖があっても、人間は変わらなかった。
神様はそのように思われました。
もしそうならば、神様は人間を見捨ててしまうだろう、と誰もが思うはずです。
ところが神様は、私たちの想像を超える大きな決意をされます。
「わたしは、この度したように生き物をことごとく打つことは、二度とすまい。
地の続くかぎり、種蒔きも刈り入れも
寒さも暑さも、夏も冬も
昼も夜も、やむことはない」
つまり、どんなに人間が神様に背き、神様に逆らって生きようとも、神様はいつまでもこの世界と共にあり、忍耐し、支え続けるというのです。
洪水は人間の側には何の変化ももたらしませんでした。
しかし、神様のなかで重大な変化が生まれました。
それは、変わることのない、ありのままの人間と共に歩み続けよう、という決意です。
このように聖書の神様は、ご自分の考えを変えることがあります。
それは、人間に対する深い思いと愛から生まれる心の変化です。
ノアの箱舟物語に描かれた洪水に襲われた世界は、今の世界に似ています。
世界は今、人間の罪と暴虐によって破滅に向かっているように思えてしまいます。
しかし、どんな状況にあっても、神様は私たちと共にあり、忍耐し、支え続けてくださります。
ここにこそ、私たちの希望があります。
そして、私はこの敬和学園は、ノアの箱舟のようであって欲しいと願っています。
このチャペルは、まさに箱舟のイメージではないでしょうか。
個性豊かで、多様な生徒が集うこの敬和学園高校。
世界の救いと希望がここにある、そのような学園でありたいと私は願っています。
それでは、楽しい春休みをすごしてください。
新学期、再び会えることを楽しみにしています。