自分探しの敬和学園で 人を、自分を、好きになる。
2023/12/11
【聖書:創世記 13章 8~9節】
アブラハムはロトに言った。
「わたしたちは親類どうしだ。わたしとあなたの間ではもちろん、お互いの羊飼いの間でも争うのはやめよう。あなたの前には幾らでも土地があるのだから、ここで別れようではないか。あなたが左に行くなら、わたしは右に行こう。あなたが右に行くなら、わたしは左に行こう。」
アドベントクランツに2本目のロウソクがともされました。
2本目は「平和」を意味します。
さて、今日、歌った讃美歌「まきびとひつじを」(258番)は今年の讃美歌発表会
の課題曲です。
親しみやすいメロディですが、作曲者、作詞者は不明です。
なぜでしょうか。
この曲はイギリスのクリスマス・キャロルだからです。
キャロルとはヨーロッパの中世の頃、クリスマスやイースターなどのお祝いのとき、人々が輪になって踊る踊り、そのための音楽でした。
ですからキャロルは、キリスト教的な歌詞を持った楽しい踊りの歌というのが、一番基本的な意味です。
中世の昔から、民衆によって歌い継がれた曲を、教会の礼拝用にアレンジしたのが、今、私たちが歌っているものです。
歌詞のなかで繰り返されるノエルという言葉は、ラテン語のナタリス(誕生)が語源だといわれます。
言うまでもなく、イエス・キリストの誕生を告げるものです。
まきびと(牧人)とは、羊飼いのことです。
救い主がお生まれになったという知らせが、天使によって、最初に告げられたのは羊飼いたちでした。
ちょっと想像してみてください。
皆さんが勉強や部活動で疲れて家に帰る時、そこに突然天使が現れて、「今日あなたたちのために、救い主がお生まれになった」と告げるのです。
その言葉を信じられるでしょうか。信じられないと思います。
でも、羊飼いたちは信じたのです。
羊飼いは当時、羊の世話をしながら移動する生活を送っていました。
人々からは、さげすまれていました。
しかし、天使たちが、このよき知らせを最初に伝えたのは羊飼いたちだったのです。
讃美歌「まきびとひつじを」からは、彼らの喜びが伝わってきます。
さて、今日の聖書はアブラハムのお話しです。
アブラハムは「信仰の父」とよばれます。
アブラハムは神の言葉を信じて生きました。
天使の言葉を信じた羊飼いたちも、アブラハムに連なる者、いわばアブラハムの子どもたちと言えます。
アブラハムは重要な人物で、彼の旅立ちから、イエス・キリストにいたる聖書の歴史が始まった、と言っても過言ではありません。
ウルという当時の大都会に暮らしていたアブラハムは75才の時、神さまから、旅立つように、と告げられます。
彼はその言葉に従います。
約束の地を目指し、都会の生活を捨て、75歳という高齢にもかかわらず、辺境の地に向かって旅立ちます。
妻のサラと亡くなった兄さんの子どもである甥のロトを一緒に連れて行きます。
今日の聖書では、アブラハムと甥のロトの間に争いが起きたことが記されています。
2人の飼っていた家畜が増え、それらを養うには土地が狭かったからです。
貧しい時、人は互いに助け合いますが、豊かになると争いが生まれます。
彼らも同じでした。
そのときアブラハムがロトに言った言葉が今日の聖書です。
「わたしたちは親類どうしだ。お互い、争うのはやめよう。あなたが左に行くなら、わたしは右に行こう。あなたが右に行くなら、わたしは左に行こう。」
そう言って、ロトに好きな土地を選ぶように提案します。
この提案に従って、ロトは東の方にある、見るからに豊かな土地を選び、移って行きます。
そして一人、残されたアブラハムはカナンと呼ばれる地に入って行きます。
アブラハムはおそらくこのとき、何とも言えない孤独を感じたことでしょう。
ロトに良い土地を譲り、自分には貧弱な土地が残されました。
果たしてこれでよかったのか、他に方法はなかったのか、迷いと不安があったはずです。
年長であるアブラハムが良い土地を選ぶこともできたかもしれません。
しかし、彼は甥のロトに譲ります。
争いを避けたかったからです。
いったん争いになれば、文字通り骨肉の争いとなり、両方ともに滅んでしまうかもしれません。
ここで神さまがアブラハムに現れて、次のように告げます。
「さあ、目を上げて、あなたがいる場所から東西南北を見渡しなさい。見える限りの土地をすべて、わたしはあなたとあなたの子孫に与える。」
神様は、アブラハムの決断は間違っていなかったと告げ、その行動をほめているのです。
こうしてアブラハムに、出発の目的地がこの場所であることが示されました。
彼は約束の地に導かれたのです。
このようなお話です。
アブラハムは争いではなく、平和の道を選びました。
では、なぜ彼にそのような選択ができたのでしょうか。
それは彼が、自分の甥であるロトと争いを起こしたくない、ロトに豊かな土地を選ばせよう、という優しい心をもっていたこともあるでしょう。
しかし、それだけではありません。
何よりもアブラハムは、神様の言葉、そして神様の愛を信じていたのです。
だから、どんなことがあっても、神様に信頼し、愛をもって平和の道を歩むことができたのです。
神さまは、人間をそれぞれの思いを超えた形で、必ず約束の地に導いてくださいます。
今、世界は戦争の脅威に脅かされています。
このような時だからこそ、私たちも、救い主イエス・キリストをこの世界に誕生させてくださった神様の愛とその導きを信じ、平和の道を歩む者でありたいと願います。
そして、10日後に行われる讃美歌発表会では、皆さんの素晴らしい賛美の歌声がこのチャペルに響きわたることを楽しみにしています。
今朝の敬和