自分探しの敬和学園で 人を、自分を、好きになる。
2023/12/08
【紙面の都合で敬和新聞10月号に掲載できなかった「からしだね」をここで紹介します。】
~からしだね2023修養会号~
「書を捨てよ、町へ出よう」と言ったのは劇作家寺山修司。学びを本にかじりついて行うよりも、外へ出て、人と交わり、社会の中で知を用いようということだ。これを敬和流に言うと、「書を捨てよ、自然へ出よう」。さあ、修養会に行こう。
豪雨、小雨、狐雨、霧雨、驟雨。2年生の修養会では様々な雨に打たれた。雨降る中で雨具を羽織り、萱の束を背負い、山を越えた先の集落まで届けに行く、「荷揚げ」作業。足元はぬかるみ、滑り落ちないように集中力を傾け、一歩、また一歩と山道を登っていく。一度登り始めたら、後戻りは出来ず、荷物を背負ったまま登り切るしかない。その運命を受け入れ、ただひたすらにゴールを目指す生徒たちの姿は、長い旅をしてきた旅人のようであった。
道の途中、束の間の休息に水分補給をしながら周囲を見て、ふと気付いた。木々の葉が美しい。雨に濡れ、艶やかに輝き、緑が深遠なグラデーションを形成していた。そうか、雨は山を美しくするのだな、と発見した。前を見ると、お互いに励まし合いながら、風景の感想や、たわいもない会話を楽しむ生徒たち。その笑顔は学校で見るよりも疲れているはずなのに不思議と輝き、雨にきらめく自然の中に燃える生命の力強い焔を感じさせた。そのぬくもりが他者を照らし、互いの存在が支えとなっていた。
山から下りた後、肉体の疲労に反し心は晴れやかであった。書物の中にはない、五感を通した学びが確かに自然の中にあり、人の心もそれに養われる。それこそが修養会の神髄なのである。