自分探しの敬和学園で 人を、自分を、好きになる。
2023/11/13
【聖書:マタイによる福音書 26章 52節】
そこで、イエスは言われた。「剣をさやに納めなさい。剣を取る者は皆、剣で滅ぶ。」
この1か月間、イスラエルのガザにおける戦争の報道が続いています。
戦争のきっかけは、イスラム組織ハマスのイスラエルへの攻撃でした。
村々を襲い、銃を乱射し、1,400人を殺害。子供や高齢者を含む240人以上を人質として連れ去りました。
決して許されない、残酷なテロ行為です。
それに対して、イスラエルはハマスに戦争を宣言。ハマスが支配しているパレスチナ自治区ガザ地区に容赦ない攻撃を始めました。
イスラエルの攻撃はすさまじく、ガザへの空爆は1万回を超え、45%の家屋を破壊。
わずか1か月で死者は1万人を超え、その4割が子どもだといいます。
当初はイスラエルに同情的であった国際世論も、イスラエルの過剰ともいえる報復攻撃に、イスラエルを非難する声が日増しに大きくなっています。
この戦争の果てに平和が訪れるのでしょうか。
一刻も早く停戦し、これ以上、犠牲者を増やさないで欲しいと願うばかりです。
ところで、イスラエルとは私たちが、毎朝、礼拝で読む聖書の「旧約聖書」を生みだした民族です。
旧約聖書にイスラエルという名は何度も出て来ます。
「神は多くの民の中から、イスラエルを選び、神の教えを伝えた。彼らを諸国民の光とするために。」
聖書にはそのように記され、イスラエルは神に選ばれた特別な民族とされます。
このような民族が、現在、なぜ、パレスチナの人々と激しい戦いを繰り返すのか、疑問に思えてしまいます。
たしかに現在のイスラエルという国と、聖書のイスラエルとは別の国です。
そのことを頭では分かっていても、やはり心に違和感が残ります。
そこで今日は、現在のイスラエルという国の歴史について学びたいと思います。
イスラエルの建国は1948年、実は大変、新しい国です。
第2次世界大戦後につくられた国です。
敬和の創立が1968年ですから、敬和のできる、わずか20年前ということになります。
ところで旧約聖書を生みだした民族はユダヤ人ですが、彼らは古くから存在しました。
約2000年前、当時のユダヤ人国家は、ローマ帝国によって滅ぼされます。
国土を失った彼らは世界中に散って行きます。
現在の中近東、ヨーロッパ、さらに遠くアジアのインドにまで広がったといわれます。
彼らは、長いことそれぞれ地でユダヤ教の教えを守って生活しました。
やがて世界中に広がるユダヤ人ネットワークを築き、国際貿易により、商人として成功する人が多数、現れます。
現在の経済システムである株式制度、保険や為替制度などはユダヤ人が作りだしたものです。
しかし、ユダヤ人はキリスト教の国で差別されました。
ユダヤ人はイエス・キリストを十字架にかけた、呪われた民族とされたからです。
それでも彼らは、金融業など様々な経済活動をとおして、その土地の人々と折り合って生活を続けました。
ところが1800年代に入り、ヨーロッパではナショナリズムが強くなります。
ナショナリズムとは自分の国や民族を第一とする思想です。
すると、それまで一緒に暮らしていたユダヤ人が邪魔になり始めました。
反ユダヤ主義の台頭です。
彼らを排除して、自分たちだけの純粋な国家を作ろうとする動きが強まったのです。
その結果、ユダヤ人の迫害・虐殺事件がヨーロッパやロシアで起きました。
そのような厳しい状況に対し、ユダヤ人の側でも、自分たちも国を作らなければだめだ、パレスチナの地に理想の国を作ろう、そういう運動が生まれたのです。
その運動をシオニズムといいますが、ヨーロッパからの最初の移住が始まったのは1882年です。
土地を買う資金は、フランスの大富豪ロスチャイルド家など、ユダヤ資本が提供しました。
幸い、その頃、移住したユダヤ人とパレスチナ人の間には、まだ大きな争いはありませんでした。
ところが、第2次大戦において、ナチス・ドイツのユダヤ人絶滅計画により、ヨーロッパでは大勢のユダヤ人が、アウシュビッツなどの強制収容所で虐殺されました。
その数500万人とも言われます。
これは決定的な出来事でした。
戦後、ヨーロッパの国々はイスラエルの建国を積極的に支持します。
それまで、ユダヤ人を差別してきた「後ろめたさ」が彼らにはあったのです。
またアメリカの保守的なキリスト教会も、イスラエル建国を「聖書の預言の実現」と理解して支持しました。
その結果、ユダヤ人のパレスチナへの移住は急速に増え続けます。
そして1948年、現在のイスラエルが建国されたのです。
以上が、建国のあらましですが、そこには大きな問題がありました。
その土地には、もともと大勢のパレスチナ人が生活していたことです。
彼らの多くは、ユダヤ人に土地を奪われ、住む場所がなくなり、難民となりました。
現在、イスラエルは彼らをガザなどの自治区に隔離しています。
高い壁で囲まれ、自由を奪われた彼らがイスラエルに反発するのは当然です。
この状況を一言で表現すれば「排除と報復の連鎖」といえます。
ヨーロッパで差別され、排除されたユダヤ人が、今度は自分たちの国を作るために、パレスチナ人から土地を奪い、彼らを排除しました。
そして、排除されたパレスチナ人がイスラエルをテロ攻撃したのが、今回の戦争の発端でした。
今日の聖書です。
イエスは言われた。「剣をさやに納めなさい。剣を取る者は皆、剣で滅ぶ。」
剣によって平和をつくりだすことはできません。
イエスは、はっきり言います。「剣を取る者は剣で滅びる。」
イスラエルは、ハマスのテロ攻撃に対する報復だから、これは正義の戦争だ、と主張します。
しかし、その攻撃によって、罪のない4000人もの子どもたちが亡くなっているのです。
この事実だけからでも、もはや正義の戦争とは言えません。
先週、一日4時間の戦闘休止が決まりました。
しかし、停戦へとつながる気配はありません。
今こそイスラエル、パレスチナの双方は、2000年前のイエスの言葉に立ち返り、一刻もはやく、剣を擱(お)き、戦争の終結に向けて歩みを進めて欲しいと願います。
私たちも、今、戦争のために苦しむ方々に思いを寄せ、共に平和を祈り求める者でありたいと願います。
今朝の敬和