自分探しの敬和学園で 人を、自分を、好きになる。
2023/08/28
【聖書:アモス書 5章 24節】
正義を洪水のように
恵みの業を大河のように
尽きることなく流れさせよ。
夏休みが終わり、新学期が始まりました。
チャペルの鐘が鳴るようになってちょうど1年です。
昨年の夏休みに改修工事が行われ、4年ぶりで鳴るようになったからです。
今年は広島と長崎に原爆が投下された日、8月6日と9日、そして終戦の日の8月15日にも平和への祈りを込めて、このチャペルの鐘が鳴りました。
毎年、8月には日本中で多くの平和の催しが行われます。
8月6日には広島で平和記念式典が行われました。
敬和生14名が現地に行っていることを思いながら、私も自宅でテレビ放送を見ました。
5月に広島でG7首脳会議が開かれたこともあり、例年より注目されていることを感じました。
海外からの参加者も多かったと聞いています。
松井一実(かずみ)、広島市長は平和宣言において、世界の指導者は「核抑止論」がすでに破綻していることを直視すべきだと訴えました。
核抑止論とは、平和を維持するためには核兵器が必要だ、
核兵器が、大きな戦争を起きさせないための抑止力になっている、という考え方です。
核保有国はこの考え方から抜け出すことができません。
被爆国である日本も残念ながら、この核抑止論に追随しています。
ところが、ロシアによるウクライナへの攻撃により、この核抑止論の限界が明らかになりました。
核保有国が非道なことをしたとき、誰にも、それを止めることができない、そのことがはっきり分かったのです。
つまり、核保有国は、その気になれば、やりたい放題できてしまう、しかも誰もその行動を止めることができない、そのような現実が明らかになりました。
核兵器を脅(おど)しの道具に使っているからです。
松井市長は、その状況を、「核抑止論は破綻している、」と訴えたのだと思います。
さて、話は変わりますが、今年は世界的に観測史上最も暑い夏となりました。
新潟県も異常な暑さに見舞われました。
世界に目を向けるとハワイ、マウイ島の山火事、カナダやオーストラリアでも制御不能と言われる山火事に襲われました。
世界の各地で干ばつも起きています。
中国では大雨による水害が起きました。
涼しいはずのヨーロッパも連日40度から50度の気温です。
この猛暑と異常気象、その原因は明らかです。
地球の温暖化です。
先日、グテーレス国連事務総長は、「地球温暖化の時代は終わった。地球沸騰化の時代に入った。」と言いました。
そのくらい、地球の温暖化が進んでしまった、という意味です。
しかも、温暖化の原因は人間が過去に排出した二酸化炭素です。
ですから、これは自然災害ではなく人間が引き起こした人災です。
先日、新聞で「エコグリーフ」という言葉を目にしました(朝日新聞8月3日)。
「エコグリーフの若者へ」という見出しで、ジェーン・グドールさんという方のインタビュー記事が載っていたのです。
エコはエコロジーのエコです。
エコロジーとは日本語で「生態学」と言い、人間を含めた生物とその環境との相互関係を研究する学問です。
一般にエコというと、環境に配慮する、という意味でもよく使われます。
グリーフとは悲しみという意味です。
「エコグリーフ」。どういう意味でしょうか。
グドールさんはチンパンジーの観察で数々の発見をされた女性研究者で、現在90歳です。
若い頃はアフリカ・タンザニアの自然のなかで暮らしチンパンジーの生態を観察しました。
グドールさんは、今、世界の若者が未来に希望を失っている、と言います。
気候変動、新型コロナ、ウクライナ戦争など、相次ぐ危機を前に、もっとも賢い生き物である人間がたじろいでいる。
グドールさんは言います。
今、世界を回っていて、希望を失った若者に大勢出会います。
若者たちは怒っていて、落ち込んでいる。そして無関心です。
「エコグリーフ」、つまり壊れていく地球環境に不安を抱えています。
若者たちは言います。「大人たちが私たちの将来を危うくしている。でも世界の問題は大きすぎて、自分に何ができるのか、何をしたらいいのか分からない。」
人は時に希望を失います。でも、若い人たちが希望を失ったら、私たちはもう終わり。
希望を手放そうとしている若者がやってくると、私はいつもこう言います。「一人ひとりの行動が、地域や世界に違いを生む。毎日何をするかを自分で決めることで、この状況にインパクトを与えることができる。だから、希望を手放さないでほしい」と。
90歳の今もなお、地球の未来を考え、自分の願いを若い人たちに語るグドールさんの姿勢に感銘を受けました。
8月9日の朝、新潟日報を開いてみると、「凄惨な被ばくの実相見つめー敬和学園高校生ルポー」という見出しの記事が載っていました。
ヒロシマ碑めぐりの旅に参加した敬和生14名のことが写真とともに大きく紹介されていました。
3人の敬和生の言葉も紹介されていました。
凄惨な被ばくの現実に触れながら、それでも平和な世界への希望を決して手放そうとしない彼らの言葉に私は励まされました。
この新聞記事は教務室前に掲示してあります。
さて、今日の聖書です。
「正義を洪水のように、恵みの業を大河のように、尽きることなく流れさせよ。」
これは、古代イスラエルの預言者アモスの言葉として伝えられているものです。
「正義」という言葉が印象的です。アモスは言います。
このままでは、イスラエルは神様によって滅ぼされる。
だから、あなた方の間に正義を、もう一度、回復せよ。そこにしかあなた達が生き延びる道はない。そのように訴えたのです。
今、私たちの世界も危機的状況にあります。
地球環境問題、核戦争の危機、それらは、あまりに大きすぎてどうしてよいか分からない。
誰もがエコグリーフに陥(おちい)りそうになります。
しかし、それらの根底にあるのは、私たち人間の正義の問題です。
人間が作り出した危機ですから、人間が正さなければなりません。
預言者アモスならば言うでしょう。
「正義を洪水のように流れさせよ。
夏の朝日のように、あなたがたの正義をこの世界に輝かせよ。
あなたがたは、決して希望を手放してはいけない。」
この世界の歴史を導いてくださるのは神様ご自身です。
新学期を迎える今日、私たちも神様の御言葉に支えられて、その光のうちを歩む者でありたいと願います。
今朝の敬和