のぞみ寮通信

のぞみ通信

2023/07/27

のぞみ通信 2023年7月21日 第283号

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題字 大望館3年 H.Jさん

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サマーナイトフェスティバルを終えて 笑顔いっぱいのぞみ寮生

 

 

「大変な時=大きく変わる・変われる時」 寮長 岩原 寅太郎

 2023年度前期が終了します。「のぞみ寮」は大きな変化をもって今年度の幕を開けました。女子寮「みぎわ館」と男子寮「光風館」が寮生数の減少から(新型コロナウイルス感染症の感染拡大を含む複合的な理由により)休館となり、女子寮は「めぐみ館」に、男子寮は「大望館」に統合されて、男女4館体制から2館体制に移行したことです。

 昨年度末、東晴也先生が寮長を退任される際、後任の私に「引継ぎ」の中でこう言われました。「男女2館体制への移行が何よりも心配です」と。東前寮長は「みぎわ館」、「めぐみ館」、「光風館」、「大望館」の各館に「個性」があることを知っておられ、それを尊重されていました。そして、4館がお互いに「競い合う」ことを「よし」とされていました。それが2館体制になるのです。「のぞみ寮」が有する「多様性」の一部が失われることを意味しました。致し方ない側面があったとはいえ、複雑な思いをされていたことと思います。また、統合によって寮生たちに影響が出るのは必至で、それがどんな形で表出してくるのか、そのことを大変心配されていたのだと思います。

 2館体制に移行した今年度前期、確かに大小合わせていくつかの問題や衝突が起きました。「○○館の方がよかった…」、「ルールがいろいろと変わってやりづらくなった…」、「○○館から来た○○くんの言動にはもう我慢がなりません!」等、さまざまな意見も聞かれました。問題や衝突が起きた時、また否定的な意見が寄せられた時、私は生徒たちにこう投げかけました。「そうか、君は前の館がよかったんだね。だからストレスを感じているんだね。でも、新たな人格との出会いがあったことを肯定的に受け止めてほしいな。さまざまな『違い』を認識し、その『違い』を受け入れることしてほしいな。だって、それができるのが、できるように目指すのが『敬和生』であり『のぞみ寮生』だからね」と。

 今年度前期、「のぞみ寮生」に「生徒指導」案件が複数出ました。重大な案件はありませんでしたが、立て続けに起きたことで寮全体に一時暗い雰囲気が漂いました。敬和の「生徒指導」の特徴は、「ペナルティ要素」が非常に小さいことです。むしろ、指導を通して当該生徒を「成長させるチャンス」と捉えます。ですから、自分自身に、自分がしてしまったことに、じっくり向き合えるよう謹慎期間は決められておらず、全て「無期」になっています。

 榎本栄次先生(学校法人「敬和学園」理事長)が「敬和」第3代校長として在職中に本校のホームページ上でこんなことを書かれていました。「私は何も起こらない学校がよい学校だとは思わない。いろいろな問題が起きても生徒たちがそれに真摯な姿勢と態度で向き合い、そこから多くを学ぶことができる学校がよい学校だと思う」。これを目にしたのはかれこれ20年ほど前ですが、当時から変わることなく私はまったくの同感です。

 「2館体制への移行」で問題や衝突が起き、「生徒指導」が頻発したことで、「のぞみ寮」はこの前期、大変な時を過ごしました。でも、その問題や課題から逃げずに一つひとつ丁寧に向き合いました。解決のために皆で知恵を絞り、反省のために当該生徒と共に謙虚に振り返りをしました。「のぞみ寮生」、彼らを支える私たち「寮務スタッフ」が、「大変」な時を経て、「大きく変われた」ことを強く願いたいと思います。

 

 

 

寮生リレー ~沖縄平和学習会の学びと前期の振り返り~

 

「沖縄の現状」  K.K(1年・新潟県)

 私は沖縄オンライン学習会に軽い気持ちで参加しました。私が思っていた沖縄のイメージは、たくさんの旅行客で溢れ、おいしいご飯を食べて過ごしていることでした。

 しかし、野間先生のお話を聞いた時、今の沖縄の現状について知ることができました。例えば、沖縄の領土の一部を削って人の手で違う場所に領土を作っているなど、憲法が保障する平和的生存権が否定されていることです。選挙で反対した沖縄県民が多かったものの、政府はたくさんのお金を使い、止めていないことを知りました。嘘のような事実を、私のように知らない人がいて、全国のニュースになっていないということは問題だと思います。

 世界から見ると、日本はとても小さな国なのに、初めて聞くことがあり、私が見ているニュースは、ほんの一部だと気がつきました。

 学習会の中で、沖縄県出身アーティストのRnde-a(ルードアルファ)が作詞作曲した「うむい」という曲も紹介されました。「目の前にある全ては繋がれた奇跡、争うより愛しなさい」と「おばあの涙」という2つの歌詞が心に刺さりました。

 今ある1日1日を大切にし、目の前にいる友達、クラスメイト、先生、家族との繋がれた奇跡の出会いに感謝していきたいです。

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ZOOMによる沖縄平和学習会

 

 

 

「失敗をしながらも充実した日々」  T.S(1年・新潟県)

 前期の寮生活は、時には対立し、失敗もし、辛いこともたくさんありましたが、充実した日々だったと思います。敬和学園を選んだのは、寮生活に憧れたからでした。初めて会う仲間、知る人なんていない環境で、「無事にやっていけるのだろうか」と不安で仕方なく、親のいない生活で初めて親の偉大さを心身共に実感しました。それに、新たな出会いと発見もありました。寮ではみんなが個性を出して生活していました。最初の部屋で一緒になった先輩方は、のぞみ寮での生活の仕方を丁寧に教えてくれましたし、相談も勉強にも乗ってくれて、大変お世話になりました。

 さて、僕はもとから外での遊びを経験したことが少なく、一人で買い物もしたことがありません。だから人との接し方がわからないことが多く、相手を怒らせたり、呆れさせたり、泣かせたりしてしまった事がよくありました。中学時代の私は、自分の部屋で音楽を流しながらA4のコピー用紙に白地図を描くことが日課でした。

 そんな僕も、寮生活を経て少しだけ人との接し方が分かり、それに慣れてきました。今は一人で買い物ができるよう特訓中です。学校生活では、はじめて歴史の分野で趣味の合う友達ができました。これまでの自分の殻を打ち破るが如く、クラスの中でも存在感を出すことができましたし、話せる友達も多くできました。振り返ってみると一生に一度経験ができる大きな変化の体験中で、とても晴々とした気分です。

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毎週日曜日の全体礼拝より

 

 

 

「相手のことを知ることの大切さ」  F.M(2年・神奈川県)

 今年のぞみ寮は、男子寮女子寮がそれぞれ1館に合併しました。昨年合併の話を聞いた時は、大人数になることや1年間築いてきた関係が崩れてしまうのではないかということがとても不安に感じました。実際に合併すると、ルールが少し違ったり、築いてきた人間関係があったりして「これは大変だ」という気持になりました。人数が増えたことで不便に感じることもありました。

 しかし、今思えば楽しかったこともたくさんありました。例えば、今までは違う館だったので、話したことも関わりもしなかった人と冗談話ができるようになったことです。同じ「敬和」にいたのに、館の違いによって関わり合ってこなかったのはもったいなかったなと思いました。他にも、毎朝早起きできる子、放送で大きな声で話すことができる子など、同じ館にならなければ、知らないままだったであろう仲間の個性を知ることができました。

 昨年、合併の話を聞いた後、めぐみ館の当時の3年生に、「合併かあ。羨ましいな。だって『みぎわ館』の人達が『めぐみ館』に来るんでしょ?絶対楽しいって!」と、言われました。私はその時、先輩が言ったことがよく分かりませんでした。でも、今ならなんとなく分かります。きっと私は「みぎわ館」のことを何も知らなかったから、大きい不安があったのかなと思います。

 少しずつ、お互いのことを知っている今、前ほどの大きい不安は無くなりました。まずは、相手のことを知ることが大切なんだなと気付いた前期でした。

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実習生お疲れ様会より 楽しいひと時を過ごした女子寮生

 

 

 

「変わり続けるのぞみ寮」  U.M(3年・新潟県)

 昨年度と違い、今年度は2つの寮が合併して、そこに新しい1年生として56回生が入寮しました。56回生も今までと同様に、個性溢れる人がたくさんいました。

 大望館と光風館ではルールの違いがあり、話し合いを重ねて新しいルールを決めていったので、少し大変でした。変更したルールを覚えることに加え、1年生にそのルールを説明するのも大変でした。そのルールに不満を抱く人もいて、苦労しました。

 56回生は55回生みたいにみんな仲良くて素晴らしいと思います。私たち54回生は下の学年と違い、そこまで仲が良いというわけではありませんでした。羨ましいです。私たちも参考にすべきだと思いました。そんな1年生にもコミュニケーションが苦手な人がいるので、そういう人を助けていきたいです。

 私にもそういう経験がありました。私は入寮当初、挨拶することは出来ましたが、人と会話を続けることがとても苦手でした。「人と話せるようになりたい」と思い、悩みました。そこで考えたことは、堅い内容を話すだけではなくて、柔らかい内容を話すようにしたことです。その結果、先輩や同級生たちと会話が続くようになり、仲良くなっていった経験があります。その経験を踏まえて、私にはそういう力があると思うので、今後も継続していきたいです。

 今現在1年生に起こっていることは、自分自身にもかつて起きたことです。これらの経験をみんなが理解してくれると嬉しいです。楽しいことだけではなく、つらいことや苦しいことも経験して、共にそれを糧に成長し歩んでいきたいと思います。

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サマーナイトフェスティバル おもてなしをする3年生

 

 

 

「頼れる友達の存在に気付けた前期」  T.Y(2年・新潟県)

 男子寮・女子寮が1館ずつになり、新しい生活が始まりました。そして前期がもうすぐ終わろうとしています。

 みぎわ館から引っ越しをしてきて今感じることは、「大変だった」ということです。合併後のルールをなかなか覚える事ができずにチェックがたくさんついたり、めぐみ館内の様々な部屋の場所に慣れることが大変だったりしました。人数が増えたことも大変でした。

 しかし、人数が増えたことで、今まで知らなかった人と仲良くなることができました。そして、「頼れる」と思える友達の存在が増えて、「頼っていいんだ」ということに気付けた気がします。

 気付けば、私の残りの寮生活は約1年半です。残り約1年半で、出来るようになったこと・自分の出来ることを増やしていきたいと思います。

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昨年度末、めぐみ館へ引っ越したみぎわ館生

 

 

【寮務教師の一言】

「のぞみ寮が目指す姿」  男子寮 片岡 自由

 今年度から男女共に1館体制になり、気持ちを新たに年度の歩みを開始しました。しかし、実際のところ男子寮では戸惑いと衝突の日々でした。「今まではそんなルールなかった」と戸惑う生徒もいました。環境も変わり、人間関係も新たに築き上げることで、意見が合わないこともありました。意見が合わなければ話し合って解決していく、それが寮生活です。

 「鉄は鉄をもって研磨する。人はその友によって研磨される。(箴言27章17節)」人間関係における多くの悩みと衝突は、全て意味があります。他者と向き合う、自分を知る、違いを認め合う。それこそがのぞみ寮が目指す「共に生きる姿」です。これからも生徒と共に苦悩して、ひたむきに歩んでいきたいと思います。