お知らせ

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2022/10/24

今週の校長の話(2022.10.24)「リセットすること」

校長 小田中 肇

 

【聖書:創世記12章1~2節】

主はアブラハムに言われた。「あなたは生まれ故郷、父の家を離れてわたしが示す地に行きなさい。わたしはあなたを大いなる国民にし、あなたを祝福し、あなたの名を高める。祝福の源となるように。」

 

先週までは讃美歌を1節のみ歌いましたが、今週から3節、歌うことになりました。

今日はあまり声が出ていませんでしたが、これからもう少し声を出して讃美しましょう。

 

さて、今日の聖書はアブラハムという人に神様が呼びかける場面です。

アブラハムは自分の生まれ故郷を離れ、神様が示される地に旅立つように促されます。

アブラハムはこの呼びかけに従います。

旅先では、さまざまな経験をします。大きな失敗やあやまちも犯しますが、最後まで神様の言葉には忠実でした。

後に彼は信仰の父とよばれることになります。

聖書の登場人物の中でも、もっとも重要な人物の一人です。

 

アブラハムの経験の初めに、この生まれ故郷からの旅立ちがあったことは重要です。

旅立ちとは、それまで慣れ親しんだ自分の世界の外へと踏み出すことです。

このようにキリスト教の神様は、外に旅立つことを促す神様なのです。

 

では「外に旅立つ」とは、どういうことでしょうか。

それは、それまで自分を支えてくれていたもの、自分のなかで調和し、安定したものの外へと、あえて出て行くことです。

それによって、それまで調和していた世界はバランスを失い、バラバラになってしまうかもしれません。

ですから、それは出来れば避けたい経験です。

ずっと慣れ親しんだ環境にとどまっていれば、傷つくこともなく、安心して暮らせるからです。

 

しかし、その一方で、人間はいつもどこかへ旅立つことを求めています。

なぜなら、新しい世界に旅立ち、新しい自分の発見を発見することを人間は、いつも心のどこかで求めているからです。

特に思春期を生きる皆さんにとって、その思いは強いはずです。

 

ところで、旅立つことによって、それまで調和していた世界がバランスを失い、バラバラになってしまったとき、人はどうするでしょうか。

言うまでもありません。このバラバラになった状態を回復しようとします。

バラバラの状態=カオスの中で、人は生きられないからです。

ですから、この混乱した状態を、もう一度、新しいバランスのもとにリセットしなければならないのです。

出来上がっているものをいったん壊し、もう一度、作り直すこと、それをリセットすると言いますが、このリセットすること、実はこれが大事な経験となります。

 

一つ具体的な例をあげます。

フェスティバルのダンス部門を考えてみましょう。

チーフを中心にダンスの振りを考えて、ほぼ全体がまとまりかけた時に、本当に何か新しい発見があったとします。

こうすれば、自分たちが願っているダンスになるのだ、という発見です。

すると、まとまりかけていた振りの全体をバラして、初めからリセットしなければならなくなります。

場合によっては、初めから作り直さなければなりません。

そんな苦労はしないで、うやむやにごまかして完成させることもできるでしょう。

しかし、それでは、本当にみんなが納得の行く作品にはなりません。

新しい発見と気づきに基づいてもう一度、作り直すとき、それは新しい世界の創造、真の創作活動となります。

これがリセットすることの意味です。

 

ついでに、英語の勉強をしましょう。

 exist(エグジスト) という単語があります。

存在する、何かがそこにある、という意味です。

そして、existの ex は、「外に」、そして、istには、「立つ」という意味があるそうです。

つまり、exist=存在するとは、外に立つ、という意味だというのです。

 

皆さんは、セミの抜け殻を見たことがあるでしょうか。

セミの幼虫は何年も土のなかにいて、最後の年、地上に上がってきます。

そして、抜け殻を脱ぎ捨て、夏の空に飛び立ちます。

もしセミが地上に出て来なければ、太陽の光も青空も知らないままです。

そして、セミが抜け殻から出て来なければ、幼虫のままです。

夏の空を飛ぶセミは存在しません。

存在するためには、外に出て行くことが必要なのです。

 

皆さんはチューリップの球根を植えたことがあると思います。

球根も同じです。

土の中に留まったままでは、チューリップの花は咲きません。球根のままです。

球根も花を咲かせるためには、土の中から芽を出し、地上に出て行かなければならないのです。

 

人間も同じです。

自分を花開かせるためには、外に出るという経験が必要です。それによって新しい発見が与えられます。

その発見に基づいて、それまでの関係をリセットして、関係を組み直して行くのです。

楽で居心地がよいだけの場所にとどまっていては、新しい自分と出会うことはできません。

 

さて、学校は今、第3定期テストも終わり、学年の後半に入りました。

3年生は進路に向けて大事な時期を迎えています。

進路とは、文字通り新しい旅立ちへの準備です。

また、新しい生徒会が2年生を中心に組織されました。

3年生から2年生へと世代交代が始まっています。

これからは2年生がいよいよ学校の中心になります。

また、来週は今年度最後のオープンスクールが予定されています。

半年後には新入生を迎え、1年生は先輩という立場になります。

 

このように、1年の折り返しの時を迎え、それぞれ学校生活をリセットする時期です。

リセットには初心に返る、という意味もあります。

勇気を出して、この半年にやれなかったことにも挑戦してみてください。

新しい自分を発見するために一歩、踏み出してみてください。

それは混乱をともなうかもしれません。しかし、それによって今まで見たことのない風景が現れるはずです。

そして、神様はそのように挑戦する人、一歩、踏み出す人を祝福し、守り導いてくださいます。

その恵みに感謝して今週も共に歩む者でありたいと願います。