お知らせ

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2022/04/05

今週の校長の話(2022.4.5)「鳩とオリーブの葉」

校長 小田中 肇

 

【聖書:創世記8章11節】

鳩は夕方になってノアのもとに帰って来た。見よ、鳩はくちばしにオリーブの葉をくわえていた。

 

新年度が始まり始まりました。

春休みは家族や友達とゆっくりとした時間を過ごせたでしょうか。

コロナのために、あまりいろいろな場所に行くことはできなかったかもしれませんが、普段会えない人と会うことができたでしょうか。

感染状況はなかなか下がりませんが、コロナも3年目に入り、その性質も明らかになってきました。

収束の時期は確実に近づいています。

しかしまだ気を緩めてはいけません。

皆さんにはマスク、手洗いなど日常的な感染防止を今までどおりお願いします。

 

さて今年、3年生は敬和学園の中心的な働きをしながら、自分の進路を決定していかなければなりません。

2年生は学校生活にじっくり取り組み、さらなる成長が求められる学年となります。

そして明日は55回生の入学祝福礼拝があります。

そして来週からは後ろの席に新入生が座ります。

皆さんはこのチャペルで1年生に自分の背中を見せることになります。

その後ろ姿は背筋を伸ばし、前を向いている姿でしょうか。

それとも下を向いて、礼拝が終わるのをひたすら待っている姿でしょうか。

その人の生き方は、後ろ姿に表れると言います。

よどんでいるか、それとも生き生きと輝いているか。

これからの1年を目標をもって進むのか、それとも何も考えず、ただ成り行きにまかせて過ごすのか。

ぜひ先輩として目標をもって、ひたむきに生きる姿を1年生に見せてあげてください。

それは皆さん自身の敬和生活をより充実したものにしてくれるはずです。

 

たしかにコロナのためにこの2年間は内向きになりがちでした。

しかしコロナの収束は確実に近づいています。

もうコロナのせいにするのはやめましょう。

今年度は自分自身の課題にしっかり取り組み、さらに一歩踏み出し、新しいことにも挑戦する年であって欲しいと思います。

 

この1年も何か予想もつかないようなことが起きるかもしれません。

しかし希望を持ち続ける限り、私たちはどのような困難をも乗り越えることができるはずです。

ではどうすれば、そのような希望をもつことができるのでしょうか。

そのことを今日の聖書から学びたいと思います。

 

「見よ、鳩はくちばしにオリーブの葉をくわえていた。」

この「鳩とオリーブの葉」はキリスト教では平和と希望のシンボルとされています。

旧約聖書の「ノアの箱舟」というお話し出てきます。有名なお話ですが、内容を紹介します。

 

地上に悪が増し加わり、暴虐や暴行が広がったため、神様は人を造ったことを後悔します。洪水を起こして、地上から人だけではなくすべての生き物を絶滅しよう、と考えます。

ところがそのとき神様は、ノアという一人の老人に目を止めます。

ノアがどのような人物であったかを、聖書は簡潔に記述しています。

「ノアは神に従う無垢(むく)な人であった。ノアは神と共に歩んだ。」

 

神様はノアに箱舟を造るように命じます。

箱舟の中には、ノアの妻と3人の息子たちとその妻たち。そしてすべての種類の生物を乗せるように命じます。

 

ノアはその言葉に従います。

やがて大雨が降り始め、洪水が起こり、四十日、四十夜、それは続きます。

高い山々の頂までが水に沈み、あらゆる生物が滅んでしまいます。

やがて水が引き始めます。ノアは窓を開け、鳩を外に放ちます。

鳩は脚を休める場所がないので、すぐに箱舟に戻って来ます。

7日後、再び鳩を放つと、夕方になってノアのところに帰って来ます。

なんとそのくちばしには、オリーブの葉がくわえられていました。

それによってノアは地上から水が引いたことを知ります。

これが今日の聖書の箇所です。

 

やがてノアとその家族、箱舟に乗った生き物たちは、船から地上に降り立ちます。

こうして人類と地上の生物は滅亡から救われた。「ノアの箱舟」とはこのようなお話です。

 

さて、神様はなぜ地上から人をぬぐい去ろうと思ったのでしょうか。

それは地上に悪と暴虐がはびこったからです。

それに対してノアは、悪や暴虐からは無縁な無垢な人でした。

 

神様は、ノアに箱舟を造るように命じます。

ノアが箱舟を造り始めたとき、おそらく家族や周りの人たちは、あきれて見ていたことでしょう。

誰も世界が滅亡するなんて思っていません。

変な妄想にかられ箱舟づくりに励む老人を、「とうとう呆けて、頭がおかしくなった」、そのように思ったかもしれません。

しかしノアは人の目を気にすることなく、神様の言葉を信じ、黙々と箱舟づくりに励みます。そして洪水は起きます。

 

今、ウクライナでは激しい戦争にともなう暴虐行為が起きています。

そんな時私たちは、結局この世界は弱肉強食が支配し、軍事力がものを言うと考えがちです。

しかしこの物語から気づかされるのは、「一人」の人間の存在とその行動がもつ意味の大きさです。

神様の言葉に従った、たった一人の人間ノアが地上のすべての生き物たちを滅亡から救ったのです。

だから私たちは絶望してはいけない。たとえ一人でも、地上に神様の言葉に忠実な人がいるならば、神様は決してこの世界を滅ぼしたりしない、聖書がそのように告げるからです。

 

神様は私たち一人ひとりに、必要な語りかけを絶えずしてくださっています。

その声に耳を澄まし、その語りかけに従うこと、そのことに私たちの未来はかかっています。

そして、そこにこそ、本当の希望がある。

この1年私たちも希望をもって、未来のために、それぞれができることを行う者でありたいと願います。