お知らせ

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2022/02/21

今週の校長の話(2022.2.21)「世代交代」

校長 小田中 肇

【聖書:歴代誌上 22章 6~8節】

ダビデはその子ソロモンを呼び、イスラエルの神、主のために神殿を築くことを命じて、ソロモンに言った。「わたしの子よ、わたしはわたしの神、主の御名のために神殿を築く志を抱いていた。ところが主の言葉がわたしに臨んで、こう告げた。『あなたは多くの血を流し、大きな戦争を繰り返した。わたしの前で多くの血を流したからには、あなたがわたしの名のために神殿を築くことは許されない。』

 

 

3年生が自宅学習期間に入って3週間、いよいよ来週は卒業祝福礼拝を迎えます。

1,2年生の皆さんはそれぞれ学年の出し物、ハレルヤの練習に励んでいることと思います。

コロナによるさまざまな制限のもとで準備をするのは大変だと思います。

学校では今、送る会の準備をとおして、世代交代が行われているのだと思います。

この送る会をやり遂げることによって、2年生は名実ともに敬和の中心を担う最高学年になります。

そして1年生は自信をもって、新入生を迎えることができるようになります。

このように大切な節目の行事が敬和の卒業礼拝・送る会です。

 

今日は「世代交代」ということを、聖書がどのように描いているかを学びたいと思います。

旧約聖書の「歴代誌」にはイスラエルの歴史が記されています。

今日の箇所にはダビデという王様が、息子のソロモンに王権を譲って行く場面が描かれています。

 

ダビデは若くして神様に選ばれ、王として立てられました。

ダビデ王は戦争が強く、まわりの国々との戦いに勝利して、王国の基礎を築いた英雄でした。

彼は国のあらゆる富と権力を手にします。

しかしダビデ王が最も望んでいたことは、神さまのために神殿を建てることでした。

 

神殿とは、敬和にとってのチャペルのような存在です。

敬和も創立以来、チャペルの建設を求め続け、創立30年目にようやくかなえられました。

ダビデは神殿を建設するという志を抱いて国々と戦って来ました。

ところが神さまはそれを許しません。

そのことを告げる場面を描いたのが今日の箇所です。

ダビデは息子ソロモンに言います。

 

息子よ、私はわが神のために神殿を建てようと心がけてきた。だが神の言葉が私に臨んでこう言われた、「お前は多くの血を流し、大きな戦争を重ねてきた。お前は私のために神殿を建ててはならない。」

 

神様は、その仕事を息子のソロモンに託すように命じます。

「見よ、お前に息子が生まれる。その子は安らぎの人である。

その子の名はソロモンとよばれる。わたしは、この子が生きている間、イスラエルに平和と平穏を与える。」

 

戦いではなく、平和をもたらす者に、神さまは神殿を建てることを命じたのです。

ダビデはその言葉に従います。

そしてソロモンが神殿を建てるのに必要な大量の石や木材を準備することに残りの人生をささげます。

やがてダビデ王は亡くなり、ソロモンが王となり、壮麗な神殿が建設されます。

 

このようなお話ですが、私がもっとも考えさせられたのは、神殿建設を許されなかったダビデの心の中(うち)です。

どんなに辛かったことでしょう。それまでたとえ過ちは犯したにしても、神様とイスラエルの民のために一生懸命働き、王国の土台を築いたのです。

ところが最後の最後、最もやりたかった仕事を許されなかったのです。

次の世代、つまり息子のソロモンにそれを託すように命じられたのです。

 

なぜ神様はダビデ王に神殿の建設を許さなかったのでしょうか。

ダビデ王は戦いの王であり、戦争によって多くの人の血が流されたからだ、と神は告げます。

神殿は平和の場所であり、戦いの場ではない。だから神殿は平和の人によって建てられなければならない。

そのためダビデには神殿の建設が禁じられました。

これは聖書の神にとって、譲ることのできない一線だったのです。

 

それとともに、ここには聖書の人間観があらわれています。その人間観とは次のようなものです。

人間の生涯とは、決してそれだけで最終目的地には到達しない。

一人ひとりの人生は、いつも大きな旅の途中にある。

だから自分にとって大切なものを次の世代に託さなければならない。

誰でもそれぞれの役割を終えた時、その旅から去らなければならないからだ。

そしてこの大きな旅、その全体を導くのは神様である。

このような人間観です。

 

ところでダビデ王が偉いのは、神殿の建設を禁じられてもそのことでやけになったり、やる気を失ったりしなかったことです。

ダビデは息子のソロモンが神殿を建設するのに必要な資材の準備に取り掛かります。

ダビデが集めた建設資材の量は驚くばかりでした。

ダビデは次の世代に大切な仕事を託し、自分はそのために必要な備えすることに徹したのです。

 

これは一人ひとりの人生を導き、本当の意味で完成させてくださるのは、世代を超えて働かれる神さまである、という信仰に基づいています。

ダビデの生涯は、まさにそのことを私たちに伝えています。

 

1,2年生の皆さんには、卒業する3年生からきっと大切なものが託されているはずです。

そしてその実現のために3年生は、皆さんのためにたくさんの準備してくれたと思います。

私にもそれが、何かは分かりません。でも、きっとあるはずです。

特にこの2年間はコロナのために様々な制限の加えられた学校生活でした

3年生には、この3年間でやり遂げることができなかったことが、それぞれたくさんあったと思います。

それは皆さんに託されています。

そのことを覚えてこれからの学校生活を歩んで欲しいと思います。

そして来週の送る会が、心に残る、素晴らしいものとなるように願っています。