今日のランチ

今日のランチ

2021/11/17

今日のランチ(2021.11.17)

青しそごはん・サケチーズフライ・小松菜和え・キムチ汁・牛乳・バナナ

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 「歴史とは過去と現在の対話である」と、ある歴史家は述べた。 

 「食」にも歴史があり、先人たちの知恵が存分に活かされ、今の食文化を形成している。人間が食べられるものとしての食材を見つけるまでの過程はある程度想像できる。他の動物が食料にしている、またはそれに類するものと推定できる、といった理由から活用したのだろう。あるいは、飢餓ゆえに食にしたものが定着していったのかもしれない。一方で、調理方法や加工方法については、その工夫と執念に熱い歴史が感じられる。

 今日のメニューに名を連ねる「サケチーズフライ」ひとつとっても、その背景には歴史が垣間見える。

 まず、このフライという調理方法についてである。古代エジプト~古代ローマのころには「揚げ調理」は行われていたようだが、フライという手法は簡単に思いつくものではない。一体何をどうすれば、高温で熱した大量の油の中に、食材を小麦粉、卵、パン粉をまぶして投入するなどという行為に至るのだろうか。「どうにかして、あらゆる物をおいしく食べたい」という、食に対する狂気じみた執念すらも感じる。また、チーズは古代メソポタミア以来5000年以上の歴史があるが、その気温が高く乾燥した気候と移動を繰り返す生活習慣によって、たまたまヤギの乳が発酵して生まれた偶然の産物とも言われている。何よりも、その怪しい香りのする塊を食べた人物の勇気は称賛に値する。つまり今日のこのメニューは、サケという自然の恵みに、偶然が重なり、そこに人間の勇気と狂気が加わった結果生み出された歴史的メニューといっても過言ではない。

 ランチは先達の残した歴史の結晶であり、調理員の皆さんはその歴史を紡ぐ歴史家とも言えるのではないだろうか。

 

 などと想いを馳せ、食事を終えると同時に、「この悩ましい腹には歴史が詰まっている」と考えたら少し前向きになれた。

(H.A)