
![]()
![]()
2008年10月、中学校進路指導関係者に対する学校説明会にて、小西校長がお話させていただいた内容を抜粋して掲載いたしました。
T進路指導のしにくい学校の持つ意味
〜一人ひとりを大切に〜
はじめに
私、校長の方から敬和学園の教育についてお話をさせていただきます。
私は以前、京都そして札幌におりました。キリスト教関係の仕事をしておりましたので、新潟にある敬和学園の名前は知ってました。一緒に仕事をする人が敬和学園の出身者であるということも少なからずありました。距離的には遠いのですが感覚的には身近な高校でした。敬和学園はある意味で全国レベルの高校でした。ところがその私が敬和学園に来て感じましたのは、地域の方で敬和学園を遠い学校だと感じておられる方が案外おられるということでした。
遠い学校というのは距離的な意味と意識的な意味があります。
距離的に遠い?
確かに、敬和学園は新潟の中心部からバスで40分以上かかります。15キロほど離れています。でも距離的に遠いと感じておられる方の中で、敬和学園が6台のスクールバスを新潟の中心部はもちろん小針や新発田方面を出していることをご存知の方は少ないようです。これは私どものPR不足もあると思います。距離的な遠さをカバーする意味で寮があります。
全校生徒の3分の1弱、170名が寮生活をしていますが、これは何も県外や遠方の生徒だけでなく、新潟市内をはじめ通うのに少し不便な場所からの生徒もかなりおります。
意識的遠さ・キリスト教の学校
意識的に遠い学校にはいくつかの面があります。まず敬和学園がキリスト教の学校であるということでしょう。誤解があるようですが、キリスト教の学校だからといいまして、宗教の押しつけをするわけではありません。実際、お寺の住職の子どもさんや家が創価学会、天理教という家庭も普通に在学しております。
意識的遠さ・お金のかかる学校
「お金のかかる学校」といわれることもあります。1年入学時に必要な納付金は統計によりますと、県内の私立高校の上から3番目です。敬和学園は全国から入学してこられますので、かかる費用は全部公開する必要があるわけです。
これを見えるお金としましたら、見えないお金というのが高校の場合にはたくさんかかります。
例えば制服など一揃え15万円、あるいは修学旅行のお金20万円を入学時に半分、残りは毎月という学校がたくさんあります。
敬和の場合制服に関しては一着14000円ブレザーだけですし、修学旅行の代わりと言ってもいい各学年で行う2泊3日の修養会の費用は納付金に含まれています。
こうしたことに象徴されるように、敬和学園は見えないお金のかからない学校だとお考え下さい。
意識的遠さ・進路指導のしにくい学校
遠いということで中学校の先生方に一番関係あるのが、「進路指導のしにくい学校」ということではないでしょうか。今日お出でいただいた先生方の中にも「敬和学園が進路指導がしにくい学校」と言う意識をお持ちの方もおられるかと思います。
ある先生から言われたことがあります。「敬和学園というのは、一人一人を大切にする学校というのは聞いていますが、担任として進路指導がしにくいから、すすめにくいんですよね」。 当事者といたしましては残念ですが、進路指導をされる側からすれば、そうかもしれないと理解できるご意見でした。
そこで、申し上げたいことがあります。それは「進路指導がしやすい学校、しにくい学校」とはどういうものかということです。先生方にとりまして、進路指導がしやすいは、学力・成績から判断して、これなら入れる、これなら無理だということをすぐに判断できる高校のことでしょう。学力の幅が狭いほど進路指導しやすいと思います。
その点からいいますと、敬和学園はわかりにくいのかも知れません。といいますのは、敬和学園の定員は1学年200人ですが、いわゆる学力幅は相当あります。中学校の成績がオール5で入ってくる生徒がいる一方、勉強は至って苦手という生徒がいます。その学力幅は3校から4校分あるのではないかといわれます。
敬和の入試方法
ただし特待生そして推薦入試の基準ははっきりしております。幅があるとしたら専願入試および併願入試でしょう。けれど、逆に考えていただくなら、敬和は相当幅を持って生徒を受け容れているということです。
つまり、敬和学園でぜひ学びたいと考える中学生がいるとして、その子が中学校に行くことができていなかった、いわゆる不登校の生徒だったとしても、その幅の中で、しっかり面接を行った上で、決断をしてお引き受けすることがあるわけです。
逆に、併願入試で受験した子どもが、調査書や入学検査の成績がよくても、併願入試には面接がありませんから、調査書などからいろいろ課題があると判断した場合には不合格にさせていただくこともあります。
ですから前もって、課題のある生徒は専願で受験してくださいとお願いをしているわけです。これらが一人ひとりを大切にする、個性を大切にするということでもあると考えております。
U敬和学園が大切にする学力
世界学力調査
それでは、敬和学園とはどのような学校であるかを、学力に対する考え方からお話させていただきます。
昨年第2回世界学力調査が行われました。敬和学園の1年生50人も無作為で選ばれて参加しました。この学力調査はOECD世界経済協力機構という一見教育とは関係ない組織が行いました。
第1回は2000年12月でした。世界31ヶ国26万人が参加しました。順位がつけられ、日本は思いのほかよくて8位、きつい受験勉強の韓国が6位、ドイツが先進7か国中最下位の21位、そして、1位はフィンランドでした。
この学力調査で出された問題は、これまでの世界的なテストの「より早く、より正確に、よりたくさんの」問題を解くというものではなく、状況や情報から考えさせる、自分の意見を書かせるものでした。
たとえば、1週3キロのレーシングサーキットを走った車のかかった時間と速さがグラフがあり、その下には5つのサーキット図があり、実際に走ったコースを選ばせるのです。この問題を解くには計算ができてもダメで、頭の中で車を自分が実際に運転するイメージを持たなければ正解は見つかりません。
あるいは公園の落書きについて二人の意見が書いてあります。一人は公共の場所に落書きをするのは絶対に許せないといい、もう一人はそこに芸術性を見出せるなら、それはそれでいい、もしすべてがダメなら、町じゅうにあふれている看板や広告も取り払うべきだといいます。この二つの意見に付いて、どちらに賛成するか、その理由を書きなさい、という質問です。こうした問題へのいわゆる無回答率が国別に出されました。21位のドイツが20%、1位のフィンランドが8%、そして8位の日本は25%でした。
つまり4人に1人は答えていません。答えられないのか、答えたくないのか、さまざまですが、残念なことですが、考えることが苦手であることは世界でトップクラスであることは間違いないのです。なぜ、考えない子どもになるのかはドイツが一番の例です。
ドイツが子のどもたちのやる気を失った理由
ドイツは10歳、小学校4,5年生の時に能力別に3つの学校に分けます。大学進学を目指す学校、次に専門学校、そして、職業訓練校です。こうした早い時期の選別がドイツの経済を支えるとの考えからですが、実際は早い時期に自分の将来を決められた子どもたちの多くがやる気をなくし、学ぶ意欲や働く意欲を持たない若者が増大しています。当然学校はひどく荒れています。
日本はどうかいといいましたら15歳の高校進学時に選別されます。しかもその際の選別は学力別に高校の数だけ選別されるといっても言いすぎではありません。
フィンランドが世界学力調査1位の理由
それではフィンランドがなぜ世界学力調査で1位になったかです。フィンランドは10年前に徹底的な教育改革を行いました。一言でいうなら、ドイツや日本のように子どもを選別する教育から、子どもの能力を引き出す教育に転換したのです。
そして、わからないことを楽しむ人間、学びつづける姿勢を持った人間に育てようということでした。学校で具体的に行ったのは、徹底した小人数教育です。それから能力別のクラス分けをやめました。学力のある子どもとそうでない子どもを一緒のクラスにしました。そして、コース制をやめて個人カリキュラムの授業にしました。
これらの徹底によって学ぶ意欲のある生徒が急激に増え、働く意欲を持った若者が増大したわけです。
21世紀の教育 学力の基礎・リテラシィー
この教育の方向性をリテラシィーと呼んでいます。そして、これが21世紀の世界が目指す学力とOECDはレポートしています。なぜ、こうした教育で学ぶ意欲のある子どもに育つかといいますと、一つは自己否定ではなく自己肯定感を持てるということです。
ドイツや日本の教育は選別ですから、それではダメだ、そんな成績ではどこにもいけない、いい学校にもいい会社にも就職できない、がんばらないと落ちこぼれになるぞ、負け犬になるな、という言葉で、叱咤激励し、尻を叩きます。言うなれば、徹底的な否定をすることで、がんばらせてきたのです。そういう形で少しでも「いい大学」に入れようとしてきたのですが、結果は大学に入って学ばない学生が増えます。そして、それまでの徹底した選別でやる気を失った子どもたちを作ってきたわけです。
それに対して、フィンランドの子どもたちが学ぶ意欲を持てるのは、少人数制と能力別編成をしない・選択カリキュラムによって自己肯定感がもて、そのことによって集中力や持続力を高く持つ子どもに育っているということです。
敬和学園の進学状況
こうした学力を最近「学力の基礎」という言葉で呼ぶようになっています。日本の教育は世界の流れにまさに逆行していますが、敬和学園は創立した37年前から、小人数教育を行う・能力別のクラス編成をしない・選択カリキュラム制をとり続けてきました。
敬和学園は学力の基礎そしてリテラシーという言葉で表される自己肯定感と集中力、持続力を身につけることを学力の中心において教育し、そして進学させてきました。
200人のほとんどが進学します。そのうちの過半数が4年生大学に進みます。
進学先にはいわゆる超難関校がいくつもあります。大学への進学方法というのは、かつての学力試験一本、いわゆる一発勝負から大きく変わってきています。国公立も含めて、今学力試験で入学するのは50%を切りつつあります。
つまり、多くの高校生がさまざまな推薦制度を使って進学します。敬和学園の場合、センター試験や一般受験をする生徒はもちろんおりますが、多くが様々な推薦制度を使って進学しています。
推薦入試に強い敬和学園
敬和学園が最大に利用しているのは特別指定校推薦です。敬和学園はキリスト教の学校です。全国にはキリスト教関係の大学がたくさんあります。これらが集まってキリスト教学校同盟というのを組織しています。
キリスト教学校同盟に所属する学校に国際基督教大学や青山学院、同志社、関西学院、明治学院、玉川、フェリス女学院などがあって、そうした大学から特別指定校の枠をもらっていて、敬和が学内で推薦する生徒はほとんど無条件に近い形で進学できる制度があります。
そうした大学は学力試験で受けようと思えば、相当難しい学校です。キリスト教学校同盟の大学が推薦されてくる生徒に要求するのは、模擬試験で高得点を出すことではなくて、日頃の勉強をどれだけきちんとしているかということです。
大学は今学力の基礎を持った学生を求めています。それはいいかえるなら、高校におけるさまざまな活動にどれだけ積極的に関わっているかということもあります。人格的に優れていることが求められます。人格と個性は同じ領域のことですから、個性を大切にする敬和学園の高く評価されることが多くあります。
生徒は日常の勉強をきちんとしながら、6月フェスティヴァル、修養会、讃美歌発表会や卒業を祝う会という行事や、部活動、各種の生徒会活動、宗教活動にどれだけ積極的に関わるかが評価されるわけです。
多くの高校ではそうしたことに関わることが受験勉強の邪魔になる、進学の邪魔になるということになりがちですが、敬和学園では、どれだけ密度の濃い3年間を過ごしたかが進学への大きなかぎになるわけです。
(2004/10/7 中学校の先生対象:説明会より)





