のぞみ寮通信

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2020/04/30

寮長日記 「『逃げ恥』と敬和学園の使命」

 「『逃げ恥』と敬和学園の使命」

2020年4月29日(水)  寮長  東 晴也


  「誰かに選んでほしい。ここにいていいんだって、認めてほしい。それは贅沢なんだろうか。みんな誰かに必要とされたくて、でも上手くいかなくて。いろんな気持ちをちょっとずつ諦めて、泣きたい気持ちを笑いとばして。そうやって生きているのかもしれない。」
 これは主人公の森山みくりが津崎のマンションから夜帰宅する際、ナレーションとして語られる台詞だ。第一話の最終盤にじっくり語られる心の本音。誰とも対話されない心の声を視聴者だけが聞くというシーンだ。ヒロインみくりの口元は一切動かないのに、心の声(本音)が聞こえてくる。だから、視聴者は心が動かされてしまう。私もそうだ。
 教師として生徒との関係において、最も願っていることをTVドラマはいとも簡単にやってのける。生徒の本音を、心の声を聞きたくてしょうがない!心からわき出る言葉で対話したい!そのために私たち教師は、日々全力で生きているといっても過言ではない。でも、その願いは聞き届けられないまま卒業の日を迎えてしまうことの方が多い。
 私はこのドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の第一話を先日、たまたま観た。数年前のドラマらしいが、最終回までの展開は知らない。そんな私が無責任に言っていいことかどうか分からないが、冒頭に紹介した「ここにいていいんだって、認めてほしい」とのみくりに対し、私ははっきり言いたい。「ここにいていいよ」。それが敬和学園が考える価値観「存在価値」だ。これは、どの生徒にも言いたいことだし、全ての生徒の皆さん自身が確信してほしいことだ。「君は生きているだけで無限の価値がある」と。
 「私は愛されている。世界でただ一人のかけがえのない存在。」このことが本当にわかれば、生徒たちはどんなに厳しい世界でも逞しく生きて行くに違いない。そして、その地で「私にしかできない業」を為していくだろう。その原因を作ることが、教育であり、敬和学園の使命であるとあらためて思わされたシーンだった。