のぞみ寮通信

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2020/04/19

寮長日記 「志村けんと改訂学習指導要領」

 「志村けんと改訂学習指導要領」

2020年4月18日(土)  寮長  東 晴也

 先月末、志村けんさんが新型コロナウィルスに感染後、急逝されたとの訃報は全国にこの病気の怖さをあらためて知らしめた。その後、彼のお笑いやお人柄を懐かしむいくつかのテレビ番組が放送された。私は彼の晩年のお笑いやテレビでの活躍を観て楽しむということはなかったが、小中学生時代に見ていた『8時だヨ!全員集合』のおかしさは忘れられない。特に、『東村山音頭』はとにかく理由なしにおかしくて、一つ上の兄と腹をかかえて笑い転げていたのを憶えている。この前、何気なく口ずさんでみたらメロディーも歌詞も全て憶えていた。びっくり!さらに驚いたのは、実に歌詞の意味を全く知らずに憶えていたことだ。「ひがしむらやーまーにわさーきゃたまーこー」と歌っていたわけだが、これは、「東村山、庭先や多摩湖」だったのだ!へぇ~。そうだったのか。
 志村けんの『東村山音頭』の歌詞の全てを紹介することはしないが、要は「東村山には多摩湖があり、狭山茶どころで、人情があつくて良い所。一度はお出でよ」ということで、ご本人の郷土愛満載なのだ。こんな超ローカルな歌を全国ネットにのせてお笑いにしてウケてしまうのが彼の才能なのだろう。
 志村けんが1970年代に出身地東村山への思い入れをお笑いで全国に知らしめたことは、21世紀に生きる私たちには一つの意味がある。その30年後の2006年、教育基本法が改定された。そのポイントの1つが「公共の精神」「伝統の継承」だ。それが、直後の改訂学習指導要領では「我が国と郷土を愛し、」になった。それ以降、全国の主に小中学校の教育内容は周知の通りだ。志村けんが、郷ひろみや和田あきこやキャンディーズが立つステージのセンターで歌う『東村山音頭』は笑えたが、国家から「我が国と郷土を愛し……」と言われるとちょっと待って、と言いたくなる。私は日本が本当に好きだけど、愛は強制によっては決して生まれないと思うのだ。