のぞみ寮通信

のぞみ通信

2020/04/10

寮長日記 2020年4月9日(木)

 「 ひきこもりの中での偉業  ~ 人生のどん底で輝いた人 ~ 」
寮長  東 晴也

 今からちょうど500年前、ドイツではマルティン=ルターが闘っていました。世界史の教科書にはこう書いてあります。
「1521年、ルターは教皇から破門され、皇帝カール5世にヴォルムスの帝国議会によび出されたが、自説を撤回せず、ザクセン選帝侯の保護のもとで『新約聖書』のドイツ語訳を完成した。」(『詳説世界史B』山川出版社)
 上の文を読むとルターは2人の権力者と闘っていたことが分かります。(ローマ)教皇と皇帝カール5世です。当時の西ヨーロッパで最も影響力を持つローマ・カトリック教会の教皇とドイツの皇帝です。争点は、免罪符の販売です。「これを買えば魂が救われるというのはどう考えてもおかしい」と主張するルターに対し、「その説を撤回しなさい」と迫る教皇と皇帝。皇帝は、ヴォルムスの帝国議会にルターを召還しました。そこで、ルターは「私はここに立つ。神よ救いたまえ」と主張し、自説を撤回しなかった。「ここ」というのは聖書です。「私の主張は聖書に拠るのであって変えられない!」というのです。
 この後、皇帝はルターを処分します。それは「法の保護の外におく」、つまり「全ての権利が奪われる刑」です。誰かがルターを殺しても罪に問われないことになりました。この帝国議会後、ザクセン侯フリードリヒはルターの身を守るために誘拐し、自らの城でかくまいます。この暗い城の中、ルターは長いひきこもり生活の中で、『新約聖書』のドイツ語訳を完成させるのです。これは大変な功績です。
 私たちはもうしばらくの間、自宅で過ごすことになります。でも全ての権利が奪われたわけではありません。家でリラックスしていましょう。そして、今しかできないことにチャレンジしましょう。そのことを通して、ルターがそうであったように、自分に注がれた逆境を力に変えて、自分ならではの花を咲かせてほしいと強く願います。

   *「寮長日記」は、休校中の寮生及びそのご家族を念頭に執筆するものです。