今日のランチ

今日のランチ

2019/11/11

今日のランチ(2019.11.11)

雑穀ごはん・鶏肉香草焼・レタスサラダ・味噌汁・牛乳・みかん

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 谷崎潤一郎の『陰影礼賛』という本の中で、味噌汁は漆の器の中でこそ輝く、白い陶器によそってはならぬと力説してあった。以下、少し引用する。

 

「・・・・・・漆器の器のいいことは、まずその蓋を取って、口に持って行くまでの間、暗い奥深い底の方に、容器の色と殆ど違わない液体が音もなく澱んでいるのを眺めた瞬間の気持ちである。

人は、その椀の中の闇に何があるかを見分けることは出来ないが、汁がゆるやかに動揺するのを手の上に感じ、椀の縁がほんのり汗を掻いているので、そこから湯気が運ぶ匂に依って口に含む前にぼんやり味わいを予覚する。

その瞬間の心持、スープを浅い白ちゃけた皿に入れて出す西洋流に比べて何と云う相違か。それは一種の神秘であり、禅味であると云えなくはない」

 

 文章の美しさ、描写力の高さ。いつもこれを読むと無性に味噌汁を飲みたくなる。漆や金箔、日本家屋の造り、羊羹、和紙などは闇の行灯の光の中でこそ最も美しく、蛍光灯の光の中では魅力半減という話だ。確かに今日私は味噌汁を飲む際、器の内側に広がる朱とそこに沈む葱や厚揚げに心躍らせ、それを持った際の重さと湯気に味を「予覚」した。日本の夜の美しさ、そこに生まれた文化に想いを馳せる、そんな秋ももう十分に深まっている。

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