毎日の礼拝

校長のお話

2019/09/09

「試練から喜びへ」(ヤコブの手紙 1章2節-3節)

 新学期も軌道に乗ってきましたか?夏休みの課題はしっかり提出できたでしょうか?様々な部活動で秋季大会が行われています。文化部は大会やイベントが目白押しです。修養会の準備も進んでいます。疲れが出ている人、〆切や課題でストレスを抱えている人も多いと思います。逃げずに登校できたあなたはよく頑張っていますよ。

 物事は見る方向(見方)や解釈の仕方(考え方)を変えると違った価値観があることに気付かされることが多くあります。今日はあなたが抱えているその問題、ストレスについてこんな考え方もあるのだということを紹介します。

 人生には大小さまざまなストレスが付き物です。でもそれは決して悪いことではないというのです。ストレスによる多少の緊張感は、脳にも刺激を与えて認知機能を高めることに役立つのです。人間の体は大きな怪我や病気が全くなかったとして100年くらい保つのだそうです。ところがストレスの全くない人間は30歳くらいまでしか生きられないという研究者もいるほどです。ほどよいストレスは人間を健やかに生かすには必要なことと言えるのです。

 精神科医の神谷美恵子さんは熱心なクリスチャンドクターで、ハンセン病への差別と偏見が厳しかった中で、ハンセン病の療養所へ通いつめ働いた方です。神谷さんは『生きがいについて』(みすず書房)という本の中で<ほんとうに生きている、という感じをもつためには、生の流れはあまりになめらかであるよりはそこに多少の抵抗感が必要であった。したがって生きるのに努力を要する時間、生きるのが苦しい時間のほうがかえって生存充実感を強めることが少なくない。ただしその際、時間は未来にむかって開かれていなくてはならない>と書いています。

 私たちの生活は仕事でも学校でも、毎日、ストレスが目白押しです。思い通りにいかないことや、計画通りにいかないこともたくさんあります。自分の考えが通らなかったり、理不尽な思いもするでしょう。でも、そのことにしっかり向き合う手ごたえや、達成感が充実感につながるのです。午前中の授業が終われば好物のランチが待っている(未来にむかって開かれている)と思うと、元気が涌いてきます。

 ストレスは医学的に考えれば、心と身体にひずみが生じた状態だといえます。生体の外から加えられたストレス因子に対して、それを守ろうと防衛反応が起きてひずみが生じます。心や身体に生じたこの困難に対し乗り出すのが、自律神経のなかでも“闘う神経”である交感神経です。この神経によって、身体は戦闘状態になり問題を解決しようとします。交感神経が活発になるときに、気分が高まって充実感を感じるのです。一方で“休息の神経”である副交感神経は身をひそめています。つまり交感神経が優位の状態になっているわけです。

 心や身体の困難が解決されたら、すみやかに副交感神経を働かせてバランスを回復させることが必要です。ところが、あまりに交感神経の優位が続くと、副交感神経が働かなくなります。ストレス社会に生きる私たちは、そういう状態(交感神経優位)に陥っています。ストレスが問題なのは、この部分なのです。現代人はストレス状態からバランスを取り戻す術を身につけなければいけません。

 そのとき一番いいのは呼吸法です。息を吐くことによって副交感神経は優位になりますから、呼気に気持ちを込めて呼吸をします。クールダウンのために深呼吸をすることは大変有効ですし、毎朝の礼拝でしっかり賛美歌を歌うことは深呼吸と同じ効果をもたらします。礼拝が黙祷で心を整えることから始まり、賛美歌を歌うことで皆さんは自然と交感神経と副交感神経のバランスを取り、一日をスタートさせることができるのです。

 今日の聖書では「いろいろな試練に出会うときは、この上ない喜びと思いなさい」と勧められています。課題や提出物があること、〆切に追われること、時間が足りなくて焦ること、練習が足りないとあわてること、自分には役割を果たせないのではないかという不安、実力不足だと悩むこと、うまくコミュニケーションが取れないこと・・・。

 解決までには多くの忍耐が必要です。解決への方法や努力を続けるという忍耐です。苦しさや辛さに耐える忍耐です。忍耐して課題を果たす未来の自分をイメージしましょう。その希望があなたの可能性を拓いていきます。ストレスを受け止めることであなたは磨かれていくのです。聖書ではそれを恵みと呼んでいます。恵みへと導かれる一週間を歩みましょう。