毎日の礼拝

校長のお話

2019/03/16

「続けるからこそつながっていく」(箴言 3章1節-4節)

 和歌山県湯浅町の地層から魚食性の大型恐竜、スピノサウルス類の歯の化石が見つかりました。

国内でスピノサウルス類の化石が見つかったのは、群馬県内での2例に次ぐ3例目です。

年代は白亜紀前期(約1億3千万年前)で、アジアで見つかった同類の化石では最も古い部類だそうです。

発見したのは東大阪在住で会社勤めをしながら化石採集に励んできた宇都宮聡さんという方です。

宇都宮さんは昨年10月、みかんを買うために和歌山を訪れました。

そのついでに海岸に立ち寄ったのです。

その海岸では2007年にも肉食恐竜の歯の化石が見つかっていました。

そんなことを思い出しながら歩いているとひとつの岩に目が留まりました。

その岩を蹴り割ると歯の一部が現れ、恐竜と直感したというのです。

 

 見つかった化石は1個で、歯の先端部分でした。

円錐(えんすい)形で長さ約14ミリです。

専門化が、表面に縦の筋があり、歯のエナメル質が厚いことなどから、スピノサウルス類の歯と同定しました。

化石は和歌山県立自然博物館に寄贈され、東京都市大学の中島保寿准教授(古脊椎〈せきつい〉動物学)と共同で調査が進められるそうです。

スピノサウルスの化石はドイツで多く保管されていましたが、一頭全体の化石は第二次世界大戦のときに爆撃で失われ、それ以降未だに発見されていません。

歯の先端部分が一個発見されたのだけでも世界的な大発見です。

 

 宇都宮さんの大発見は偶然でしょうか? 確かに偶然です。

みかんを買いに行って化石を発見するなんてすごい偶然です。

でも、私は単純な偶然には思えないのです。

宇都宮さんだからこそ発見できた、宇都宮さんでなければ発見できなかったと思うのです。

宇都宮さんは大学の教授ではありません。

化石の研究を仕事にしている方でもありません。

しかし、会社勤めをしながらずっと化石収集をしてきた方です。

宇都宮さんは、大阪の大手電機メーカーに勤める会社員で、休日を利用して多くの貴重な化石を発見してきた「サラリーマン化石ハンター」として知られている方だそうです。

化石が大好きで、化石だけでなく化石に関する情報もたくさん収集していたに違いありません。

ですから、みかんを買うついでに海岸に降り立ったのです。

宇都宮さんはその海岸で珍しい化石が取れたことを知っていたからです。

たまたま偶然目にとまった岩は、宇都宮さんが長い間 そして化石採集のために数え切れないほどの多くの石や岩を見て、触って、割った、その経験があって目に留まった岩なのです。

割れた岩から化石を取り出すことができたのも今までの経験がなければ気づくことができなかったかもしれません。

スピノサウルスの化石発見は、宇都宮さんの長年の経験が引き寄せた大発見だったのではないでしょうか。

いつも化石のことを考え続け、情報を収集し、時間があれば「化石ハンター」として実際に石や岩に触れる。

継続した行動があったからこそ、好きなことにかかわり続けたからこその結果だったのではないでしょうか。

 

 今日で一年間の学校生活が終業します。

明日から春休みに入ります。

休みにはぜひ課題に取り組んでほしいです。

不得意なことに取り組もうと思っている人 応援します。

思えば次は行動です。

一歩行動に踏み出せたならば、世界はきっと広がります。

成績や評価、利益につながらなくてもよいのです。

宇都宮さんのように好きなことにかかわり続けてください。

何もしないでぼーっとすることも必要です。

4月からの自分をイメージしてください。

課題や好きなことにエネルギーと時間と気持ちを注いでください。

そうすることが今日の聖書に書かれている「命の年月、生涯の日々は増し 平和が与えられる」ことになるのです。

あなたが生き生きと輝くとき心も満たされていきます。

充分に休息し、学校の教科や評価に縛られない学びを地域や社会、趣味の世界で積み上げてきてください。

それが新学年での学校生活の備えになります。

4月を楽しみにしています。