月刊敬和新聞

2018年12月号より「善い業を行う」

校長 中塚 詠子
BBCが選ぶ100人の女性
 先日イギリスの公共放送BBCが人々に感動や影響を与えた世界各国の女性を選ぶ今年の「100人の女性」を発表しました。その中に二人の日本人女性がいました。その一人が高見澤摂子さんです。
 高見澤さんは2020年東京オリンピックで通訳を目指す90歳の女性です。毎日お孫さんとスマートフォンと無料アプリを使って英語の勉強をしています。
 高見澤さんは1928年生まれの90歳。中学校の先生をされていました。

戦争が学ぶ機会を奪った
 高見澤さんは青春時代に戦争を体験しています。1936(昭和11)年4月小学校入学。6年後にB29が東京湾方面より侵入し、裏山に避難したこともありました。1942(昭和17)年に女学校へ進学します。前年の12月8日に真珠湾攻撃がなされ、日米は開戦しましたので、この頃戦況は厳しくなっていました。
 全国の学校では敵国語だとして英語の授業がなくなりました。多くの英語の教員が徴兵されました。高見澤さんの女学校の英語の先生も「僕はこの学校に必要のない教員になってしまった」という言葉を生徒に残して出征しました。
 高見澤さんはこの先生の消息はわからなくなったとインタビューで答えています。このような状況の中で高見澤さんは学校で英語を学ぶ機会はありませんでした。

夢と目標を持って生きる
 2020年に東京オリンピックが開催されることが決まりました。その知らせを聞いて高見澤さんは「通訳ボランティアとして働けたら素晴らしいけれど、自分は英語を勉強したことがないから無理だ」と漏らしたそうです。お孫さんに「私が教えてあげるからやってみれば?」と誘われてそれから毎日少しずつ英語の勉強がはじまりました。
 その様子をお孫さんのすすめでツイッターにアップするようになったことがきっかけで「100人の女性」に選ばれたのです。そのツイッターの中で高見澤さんは女学校で英語が勉強できなかったこと、それは戦争のせいであったこと、戦争が敵も味方も傷つけ誰も幸せにならないことを記しました。
 そうしたところ若い世代のフォロワーから戦争体験や高見澤さんの平和に対する思いをもっと聞かせてほしいと声があがりました。高見澤さんはその声に応えて自分の体験や思いをアップし続けています。
 戦争中は自由に勉強できなかった、行動や思想も制限されていたと高見澤さんは感じています。だからこそ今自分が思う通りに自由に夢と目標を持って毎日を生きるのだと言います。英語を勉強することはその現れなのです。

学園生活をどのように過ごすのか
 今年の夏も上級英語を選択した生徒の何人かは広島の旅に行きました。そこで貴重な証言を聞く機会を与えられました。報告を聞いて特に心に残ったのは証言をしてくださった方が高校生を前に「あなたたちがうらやましい」「遊びもおしゃれもなんでもできる」とおっしゃったことです。
 みなさんと私自身に問います。やりたいことができていますか。何かに挑戦していますか。今を十分に生きていますか。
 敬和学園では、第四定期テストが終わりました。テストは終わった後が大切です。何ができませんでしたか。何が足りませんでしたか。何ができましたか。どうできましたか。今の自分の力を知り、次の成長のために分析することがテスト本来の目的です。
 一人ひとりが神様から与えられた力を点検してください。その力を善い業に用いてください。その業を辛抱強く地道に行ってください。その行いは必ず良い実を結ぶと聖書は語っています。その実が結ばれること、たわわに実ることが平和を作り出すのです。
 クリスマスは平和の王が神様から与えられた日です。善い業の行いをもってクリスマスを過ごし、学園生活を充実させてまいりましょう。