のぞみ寮通信

のぞみ通信

2018/11/07

のぞみ通信 2018年10月30日 第240号

新運営委員長メンバー

 
「この悲しい経験がいずれ力になる」 
    ~希望はわたしたちを欺くことがありません(ロマ書5章5節)~
                         寮長 東 晴也
 
 「それゆえ、信仰と、希望と、愛、この三つは、いつまでも残る。」(コリントの信徒への手紙Ⅰ 13章13節)「いつまでも残る」と宣言したこの聖書の御言葉を、寮の名前として戴いている「希望(のぞみ)」寮の日々は、まさに希望に満ちています。
 「雲仙クラス通信」が週一くらいのペースで教務室の私の机上に届きます。内容には、Uクラス担任(浅妻先生)のクラス愛がほとばしっています。最近は、修養会が終わってほぼ1カ月というのに、いまだに「修養会感想特集号」です!
 今年の3年生修養会の講師は、本校卒業生(20回生)でフォトジャーナリストの大藪順子さんでした。大藪さんはアメリカの大学卒業後、ご自宅でレイプ被害に遭います。その後、うつ状態が1年以上続く中で、なんと彼女は懲役刑に服している犯人(加害者)に手紙を書きます。そのことから次第に精神的に解放されていったというのです。そして、彼女は事件の被害者になったことで、性暴力問題と向き合うことを始めます。しかもフォトジャーナリストとして。その活動が全米で認められ、連邦政府主催の防犯キャンペーンに携わったり、日本各地でも講演活動をされたりしています。
 大藪さんが受けた傷は一生消えないかもしれません。でも、その出来事をどう受け止めるかは、自分で決めることが出来ます。大藪さんは、その悲しい出来事を忘れようとしたり、無かったことにしようとはせず、「向き合い」ました。絶望の中で、事実と向き合ったのです。その結果が、犯人に手紙を書くという勇気ある行為を生んだのだと思います。そして、そこから彼女のうつ状態が癒えて行ったとすれば、「事実に向き合う」という行為には、なんと凄い力があるのでしょうか。大藪さんは「この悲しい経験がいずれ力になる。私はそう思う」(『雲仙クラス通信』23号より)と、力強く49回生に語って下さったそうです。
 自分にとっては不本意な悲しい出来事が変えることの出来ない事実であるとすれば、私は「事実に向き合」いたい。それは辛いことです。でも、そのことを通して、やがてその傷が癒え、「悲しい経験がいずれ力になる」とすればどうでしょうか。私たちに降りかかる不本意な出来事を力に、プラスに変えて行きましょう。
 人は真に絶望した時に、無力な自分に残された唯一の、しかも最高の手段を行使します。それが祈りです。祈りは無力ではありません。祈りによって、この敬和学園は誕生し、50年間もこの太夫浜に立ち続けてきました。絶望し、自分の限界を感じ、祈る時、いよいよ神様の出番です。神様は、私達が頭で想像する以上の出来事を、「いずれ」私達一人ひとりに実現して下さいます。パウロの「希望はわたしたちを欺くことがありません」との確信に立って、今日も歩んで行きたいのです。
 
 
 

< 寮生リレー 『世代交代』 >
 
のぞみ寮全体テーマ
 「This is Me」 ~自分らしく生きる~   T.H(めぐみ館2年 長岡市)
 新しいのぞみ寮の全体テーマは「This is Me ~自分らしく生きる~」です。
 このテーマを決めるにあたって私たちブロック長・副ブロック長は、これからどんな寮にしていきたいのかを話し合いました。様々な意見が出た上で、私たちは「自分を出していける寮」「相手のいいところも悪いところも受け入れられる場所」そういう寮を目指していきたいと考えました。そのために、どんなテーマが良いかを出し合った中で、「This is Me」が出ました。これは皆さんご存知の通り、映画「the Greatest showman」の劇中歌です。
1030_no08 「This is me」を訳すと「これが私」という意味です。映画の登場人物たちは自分にコンプレックスを持ちながらも、「これが私」と胸を張り、堂々としていました。寮生活をするうえで、まだ素の自分をなかなか出せないという人もいると思いますが、自分の素を出すことによって、相手と今までより深い繋がりができるはずです。
 副題の「~自分らしく生きる~」は、他者との繋がりを大切にする寮生活だからこそ、自分らしく生きてほしいという強い思いを込めてつけました。
 「This is Me ~自分らしく生きる~」、この寮テーマを胸に自分の殻を少しでも破ってみませんか?ここには自分を受け入れてくれる仲間がいます。そして共に、繋がりの強いのぞみ寮を作っていきましょう!
 
 

めぐみ館テーマ
 「ドラマティック」 ~この物語はノンフィクション~
 めぐみ館には個性の強いメンバーがたくさんいます。その中でも特に個性が強い50回生は、その強さを何度もぶつけ合って過ごしてきました。時には互いに傷つき合い、寮を辞めてしまいたいと思ったこともありました。しかし、私たち50回生は、今ではめぐみ館と共に暮らす仲間たちが大好きです。振り返ってみるとこの心境の変化が劇的だったから、館テーマを「ドラマティック」にしたのか?と思う人がいるかもしれません。それもありますが、それだけではないのです。

めぐみっ子のドラマチックな演出

 私たちは今まで生きてきた人生全てがドラマティックだと思うのです。これまでの歩みの中でもいろんな人と出会ってきました。そしてこのメンバーで、めぐみ館で共に過ごせている事、これって奇跡と言っていいものだと思います。朝から晩まで、血のつながりのない人たちとの共同生活。これは普通の高校生では経験できないことです。夜な夜な泣きながらミーティングをしたこともありました。他人の喜びを自分の事のように喜んでくれる仲間の存在に気付き、心が温かくなったこともありました。お風呂場にすずめが飛び込んできて、みんなでパニックになり叫び合ったこともありました。寮の中で起こること全てがドラマティックなのです。
 これから起こる出来事もドラマであり、そんなドラマティックな寮生活を日々大切に過ごして行きたいと思います。そして、私たちがのぞみ寮を卒寮するとき、この3年間が事実となって記憶に残るのです。
  「ドラマティック ~この物語はノンフィクション~」私たちがこれからどんなドラマを作っていくのか、皆さんの目で確かめてください。
 
 
 
大望館テーマ
  「阿吽(あうん)」  H.S(大望館2年 神奈川県)                              

大望生の絆?

 皆さんは、大望館にどんなイメージをお持ちでしょうか。かっこいい、面白い、頭がいい、運動ができるなどだと思います。確かにその通りなのですが、そんな大望館にも問題があります。それは、全体でまとまっていないことです。僕たち大望50回生は、他の学年に比べて人数が少なく50回生だけで館を運営するのは厳しいものがあります。例えば49回生がしていた委員会や係は人数が足りなく、50回生だけでは手が回りません。なので51回生の協力が必要です。今年は全員で大望館を作り、各学年だけではなく縦のつながりを意識したいと思います。その中で今年の大望館のテーマは、「阿吽」に決まりました。阿吽とは、出す息と吸う息の出入り、それが合うことを阿吽の呼吸と言います。他にも気持ちや調子を合わせることなどに用いられます。究極のコミニュケーションは語らずにして語ることだと思っています。他者と呼吸を合わせるには相手のことを知ることが大切だと思います
 これから大望50回生は阿吽を極め、新しいことに大胆に挑戦し、躍動する年にしたいです。大望館全体としては阿吽をテーマに、まずは2年生から息を合わせ全員で協力し、より良い館を目指して頑張りたいと思います。
 
 
 
みぎわ館テーマ
 「おかえり、ただいま、みぎわ館」  Y.H(みぎわ館2年 三条市)
 「みぎわ館を、帰ってきたくなる場所にしたい」私たちはそう思っています。「家に帰りたい。」そう言って泣いている仲間がいるのは、仕方がないと分かっていても寂しいし、なかなか外れない未帰寮プレートを見ると心が痛くなります。そして、やむを得ずみぎわ館を去って行った仲間の顔が浮かび、なんとも言えない気持ちになります。もう、そのような思いはしたくない。だからみぎわ館にしかできない雰囲気でみんなを迎え入れたい。その思いで新しいみぎわ館テーマを決めました。

アットホーム雰囲気で作成しました

 新しいみぎわ館のテーマは、「おかえり、ただいま、みぎわ館」です。単純で当たり前のことかもしれません。でも、これが私たちの大切にしていきたいことです。「ただいま」を言う前に「おかえり」と迎え入れてくれる仲間がいることを忘れないで欲しいのです。寮は誰にとっても最初は初めましてからのスタートです。でも、私たちは、アパートのように区切られた場所で好きなように生活するのではありません。共に、本当の仲間となるために全力で楽しみ、真剣に考えたいのです。誰かとうまくいかないことも、寮を煩わしく思うこともあります。しなければいけないことを後回しにしたり、言いたいことを口に出すのをためらうこともあります。
 色々な失敗や行き違いもありますが、共に過ごす上でみぎわ館全員に一人ひとり違う良いところがあることを知っています。だから、大丈夫。私たちは今以上に素敵なみぎわ館をつくることができます。私たち50回生だけではできませんが、みぎわ館全員でならできると信じています。
 
 
 
光風館テーマ
  「空欄」   K.J(光風館2年 三条市)
 光風館50回生のテーマは、「空欄」です。これを見て、「手抜きだろ、ふざけているのか」と言う人がいると思いますが「その通り‼」ではありません。
 これは光風館50回生11人で話し合った結果です。テーマを決めるミーティングで「どんな館にしたいか?」とひとりずつに聞きました。その結果、「ひとりも辞めない館にしたい。キレイな館を目指したい。自分を素直に出せる館にしたい。落ち着いて寝たい」など、みんな違ってとても良い答えがたくさん出ました。その答えのどれを基準にしてテーマを決めようか、考えました。

緊張しながらも一生懸命です

 そんな時、元副ブロック長から良いテーマが出てきました。それがこの「空欄」です。どれかを基準にしたテーマだとそれだけに偏ったり、ほかが疎かになったりします。しかし、「空欄」には自分のテーマを入れることにより、多方面から光風館を良く出来るのではないか、そう考えました。たしかに、みんながバラバラなテーマだったらまとまりがつかなかったり、問題の解決にまで至らなかったりすることもあるかもしれません。しかし、僕は光風館全体が自立して、自分の館の問題点、そして長所を伸ばせるようなテーマをそれぞれが持つ。
 この形こそが人を、光風館を成長させてくれると信じています。決してテーマを決めることを面倒くさかったり、手を抜いたりしたわけではありません。僕たち光風館の成長を信じて、見守っていてください。
 
 
 
<新しい仲間を迎えて>
「寮生活で深めたい友人とのつながり」  G.M(めぐみ館2年 新潟市)
 寮体験の後、私はすぐ入寮を決めました。寮体験の時は、ちょうどテスト1週間前だったため、連日勉強に追われながら、あわただしく1週間が過ぎていきました。
 入寮を決めた一番の理由は、寮生の友人が多いことにあると思います。友人たちから寮でのたくさんの出来事を聞いており「寮ってすごく楽しそう」という気持ちが日に日に大きくなっていきました。
 二番目の理由は、仕事の都合で家族の帰宅が遅く、さみしく思うことも多くありました。家族の仕事柄、出張や泊まり込みのこともあり、そんな日は親せきの家で過ごすことも多くありました。だんだん学校に行きたくないと思ったり、部活動に支障が出てきて悩んでいたところ、担任の宮本先生に寮生になることを勧めてもらいました。

2年生レクリエーションにて

 実は中学3年生の時にオープンスクールでめぐみ館を見学したことがありました。私の寮に対するイメージは「怖くて、暗い」でした。寮生活は私には無縁のものだと思っていました。
  でもめぐみ館に入ってはじめに感じたことは、意外と怖くない!ということでした。寮体験を通して、私にはこの環境があっていると感じました。普段の私の人間関係はSNS上のやり取りがとても多く、用件や頼み事、相談などもすべてインターネットによるものでした。相手の前に立ち、目を見て話す。そんな当たり前のことも面倒がってやりませんでした。ですが、寮体験を通して、やさしい先輩、頼もしい同級生、かわいい後輩のみんなに囲まれて過ごす中で、友達というのは本当こういうことなんじゃないかな。と思いました。
 めぐみ館のみなさんと出会えたことを心から嬉しく思っています。敬和生活も折り返しですが、めぐみ館のみんなともっと、もっと仲を深めて過ごしていきたいです。
 
 

教師から一言
「想い」のバトンを次の世代へ  小林 渚(みぎわ館担任)                              
 朝晩は寒くなり、日中はお日様の日差しがとても心地よく、さわやかな秋を感じるこの時期は、新しいのぞみ寮の歴史が刻まれていくことを実感する時でもあります。
 のぞみ寮の世代交代。今年も2年生達の熱意にたくさん心揺さぶられました。新しいブロック長や副ブロック長、各委員会のメンバーを2年生中心に各館から選出することや、新しい1年間の活動テーマを各館や委員会で決めることは毎年同じです。でも、毎年感動させられる場面は様々で、時に予想もしていない展開が起きることもあります。選出に至るまでの生徒達の悩みや葛藤も毎年様々です。悩みながらも、「この委員会に入りたい」「自分にはやりたいことがある」と、力強く主張する2年生の姿や、そんな後輩を陰で支える3年生の頼もしさ、エネルギー溢れる2年生達に自分達もついて行こうとする1年生達。そんなのぞみ寮生の姿を見ていると、改めて世代交代とは、仕事の内容を引き継ぐだけでなく「想い」のバトン渡しであることに気づかされます。
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1年生オリエンテーションより

 49回生が活躍したこの1年で見せてくれた姿は、日を重ねるごとに、また仕事をこなしていくごとに、ひと回りもふた回りも凛々しくなっていきました。時に厳しい表情で先輩として大事なことを伝え、時にお兄さんお姉さんとして後輩たちの声に優しく耳を傾けてくれたからこそ、私たちの生活がここにあります。日々、泣き笑い、悩み、ぶつかり合いながらも、一瞬一瞬を共に生活している仲間とさらに充実したのぞみ寮生活を目指したい。その想いが、各館にあるルールの見直しや課題解決の取り組みへの原動力となっていたことは間違いないでしょう。
  「さらに充実したのぞみ寮の生活を」というこの想いそのものは、きっと今までも変わらず受け継がれてきたものだと思います。それぞれの委員会での運営内容や方法、各館で話し合われるミーティングの内容はその年その場にいる寮生達で考えられていきます。でも、「より良い生活を」というこの想いそのものは変わらないのだと、私自身改めて気付かされました。
  50回生がリードする新しい歴史の一ページに、私自身が生徒達と共に過ごしていけるこの恵に日々感謝していきたいと思います。そして、生徒一人ひとりが見せる表情や成長がより輝く一年になることを心から祈りたいと思います。