毎日の礼拝

校長のお話

2018/08/29

「人はつながっている」(コリントの信徒への手紙一 10章16~17節)

「スマホ見ながら運転」自転車ではね男性死亡

24日に新聞各社に掲載されたニュースです。

 茨城県つくば市の県道沿いの歩道で6月、歩行者の団体職員男性(当時62歳)が、無灯火のマウンテンバイクにはねられて死亡する事故があり、県警が、運転していた同市の男子大学生(19)を重過失致死容疑で水戸地検土浦支部に書類送検した。
大学生は事故直後、男性宅を訪れて妻(62)に謝罪し、スマートフォンを見ながら運転していたと説明したという。
 県警の発表によると、事故は6月25日午後8時45分頃に発生。
男性は正面から来たマウンテンバイクにはねられて頭を強打し、26日未明に死亡した。
マウンテンバイクにはライトが取り付けられていなかった。
 男性の妻が大学生や県警から受けた説明によると、事故当時、大学生は両耳にイヤホンをつけ時間を確認しようとスマホを操作しており、進路前方にいた男性に気付かなかったという。

 

 

 みなさん、想像力を働かせてください。この事故で誰が何を(どのようなものを)失ったでしょう?62歳の男性は命を失いました。少なくとも妻がいたようです。お子さんやお孫さんはいらっしゃったのでしょうか。62歳でまだまだ元気に働いていたと思われます。職場の仲間たちの動揺は計り知れませんし、この男性が働く、仕事の成果も同時に失われました。夫婦で語らうことも夫婦げんかもできません。家族の団らんは今までと同じようにはなりません。
この男性の妻は夫を失った悲しみで体調を崩したかもしれません。心のバランスを保てなかったかもしれません。この男性には兄弟や姉妹がいたかもしれません。親族もいたでしょう。友人だっていたはずです。
この男性に連なる人々がこの男性を失った悲しみを抱えることになりました。

 

 一方、マウンテンバイクに乗っていた大学生はどうでしょう。人ひとりの命を奪ってしまったその罪悪感を恐らく一生抱え続けなくてはなりません。19歳という未成年ですから賠償金は保護者に支払い義務が生じます。近い将来満18歳に成人年齢が引き下げられます。そうすれば高校生であっても賠償責任は本人に生じます。自転車通学の人、自分にもあり得る話です。この親子そしてご家族はどのような心持ちで過ごすのでしょうか。
そしてこの19歳の青年はこれからどのように人生を歩んでいくのでしょうか。

 

 マウンテンバイクにライトをつけていれば。イヤホンをつけていなければ。スマホを見なければと後悔をし続けて生きるのでしょうか。これらのことは多分今までにたくさん人から言われていたことなのです。でも自分は大丈夫だと行動に移してこなかったのです。少なくとも敬和学園では何度も自転車の乗り方やスマホのマナーについて皆さんにお知らせをしています。
後期が始まるこの機会にもう一度生活を点検してください。
 ひとりの命はかけがえがなく取り替えがききません。そしてその命は多くの命と密接につながり強く結びついているのです。あなたは独立したひとりでありながらたったひとりではないのです。

 

 夏休み中に事故や事件に巻き込まれたり、心配事ができた人は相談してください。助けを求めてください。敬和学園にはあなたの話をきちんと聞いてくれる人が必ずいます。最も良い方法を一緒に考えることもできるはずです。学内は相談しにくい人は外部の相談機関を利用してください。あなたの暮らしや命が脅かされているのなら迷わず逃げたり休んだりしていいのです。

 

 この夏は災害も多く、家族や親しい人を突然失った人が多くいた悲しい夏でした。誰かがぽつんと死んでしまうわけではないのです。その人に連なるすべての人が悲しむのです。ですからもう一度想像してください。あなたは一人ではありません。いま孤独感に満ちあふれていたとしても一人ではありません。つながりを確かめてほしいのです。

 

 敬和はキリスト教の学校です。聖書が示す生き方を本気で実現しようとしている学校です。神様はかけがえのないひとりとしてあなたをこの世に送り出しました。今日の聖書箇所では学校も一つの体なのだと考えることができます。私は一人ひとりに幸せになってほしいと願っています。

寂しい人がいたら、悲しみを抱えている人がいたら、悩みの中にあえいでいる人がいたら寄り添うことのできる学校でありたいと思っています。

 

 今日から後期が始まります。
あなたの悩みや悲しみには神様が寄り添ってくださいます。神の力は人を通して現れます。つらいときこそ神様はあなたにふさわしい担い手を送ってくださいます。「助けて」「手伝って」といえる勇気を出してください。
あなたの弱さと共に歩む後期の学園生活が始まります。
よろめきながら悩みながら迷いながらご一緒に歩んで参りましょう。