のぞみ寮通信

のぞみ通信

2018/06/27

のぞみ通信 2018年6月25日 第238号

各地からの献品たくさん集まりました。のぞみ寮物産展の様子(6月9日フェスティバルにて)

 

「真実に生きたい」 
      ~のぞみ寮の生活指導の現場から確信せざるを得ないこと~
寮長 東 晴也
 最近、「生活指導」が続いています。これは、生徒が学内や寮内のルールを遵守できなかった事態が起き、このままでは在学させられないけれども、退学勧告には至らないケースにおいて行われる指導を、ここ敬和では「生活指導」と呼んでいます。
 私は、未成年が多く集まる共同生活の場において、問題が起こることはある程度は仕方ないことと考えています。人間は失敗しながら成長するからです。「間違った音を出さなければギターは上達しない」のと同じように、失敗や過ちを犯しながら人はゆっくりと成長するものだと思うのです。敬和学園ののぞみ寮生の場合も全く同じです。さらにつけ加えるなら、学校とはそもそも間違うところですし、間違っていいところです。生徒が全く間違わなければ、教師やコーチがいる意味はありません。
 だから、私は「間違っていいんだよ」と言いたい。しかし、大切なのは、間違ってしまった時、その出来事そのものと出来事を起こしてしまった「自分自身に真剣に向き合うことができるか」です。ここをいい加減にすると、せっかくの「出来事」が教えてくれる「私の弱さや至らなさ」に深く気付くことはできません。自分が成長する機会を逃すことになります。もっと言えば、そこで神様が、私に何を為そうとされているかに気付くことができないのです。
 そのために、生徒には、「自分が起こしてしまった事実」に徹底的に向き合わせます。すると、そうしてしまった自分、あるいは、そうせざるを得なかった自分に気付きます。その弱さを持つ自分を認め、許し、「本当はどう生きたかったのか」「これからここでどう生きたいのか」を、教師が導きつつ、自分が歩む道を模索するのです。このために、寮教師は、本当に全力でひとりの生徒に向き合います。
 この作業が、真実であればあるほど、生徒は見違えるほど成長します。生活指導の本質は、ここにあります。その事柄を通し、今までとは違う自分になる。このことが起きた時、はじめてその生徒は何かを「学んだ」ことになるのです。成長したことになるのです。このダイナミックな生徒の変容を目の当たりにした多くの教師は、涙を流しながら「良かったです」と言葉を詰まらせるのです。その姿を私はこののぞみ寮でこれまで何度も見て来ました。
 だから、真実に生きてほしいのです。自分をごまかしながら生きてはいけない。ごまかして生きている以上、「本当の自分探し」はできない。そう思うのです。

 

 

 

 

教育実習生より
 
 「卒業して思うこと」 K.K(光風館45回生)
 私は敬和学園を卒業してから思い出すことが大きく3つあります。
 1つ目は部活動。もっと真剣に練習すればよかったこと、先生の言うことをしっかり聞いていればよかったこと、少し後悔しています。今でも大学でサッカーを続けています。しかし、そこでの部活動は高校の時とは大違い。全国から集まった実力者と共に、汗を流します。サッカー界では有名な指導者から教えてもらいます。人工芝のグランドをはじめ、設備も充実しています。こんな恵まれている環境なのに、敬和でのサッカーが忘れることができません。今でも、敬和のグラウンドで心からサッカーがしたいと思うことがあります。
0626_no03 2つ目は学校生活。学校生活を心から楽しめたことです。苦手な勉強も行事も真剣に取り組みました。学ぶことを楽しむことができました。大学はキャンパスが3つあり、高校とは比べ物にならない規模の大きさです。当然、学生の数も半端ではありません。勉強は自分が選んだ本当に学びたいことを専門的に学ぶことができます。でもなぜか、敬和学園でもう一度学びたいと思います
 3つめは寮生活です。後悔しています。寝ている時間も遊べばよかった。寮でしかできないことをもっともっとやればよかった。もっと語り合えばよかった。もっとぶつかり合えばよかった。もっと気持ちを伝えればよかった。きりがないほど出てきます。
 なんでこんなに、あーすればよかったとか、少しの後悔が出てくるのか?それは、3つに共通して「仲間」の存在があり、その「仲間」がこんな思いをさせているんです。決して悪い意味ではありません。「仲間」が好きで、「敬和」が大好きでこの思いが生まれるんです。敬和の3年間は一瞬でした。でも私には本当に大事な時間でした。同じ想いを後輩たちにしてもらいたいです。
 
 
 
「生き生きと過ごす」     F.N(めぐみ館45回生)
 高校生の時、教育実習生が自分の寮にやってくると、私は実習生に対する興味と、日常が崩されることに対する、ちょっとした煩わしさを感じていました。けれども、教育実習生と仲良くなり話をするようになったと思うと、その実習生はもう帰らなければならない日となっていました。
 このような自分の実体験から、私がめぐみ館に来ることを煩わしいと思っている子もいるだろうと覚悟をして寮に入りました。
 最も気を付けたことは、できるだけ自分の部屋にいる時間をなくすことです。自分の部屋にいては、めぐみ館のみんなと話す機会が限られるうえに、実習生に興味のある生徒だけと対応するようで、受け身になりすぎると考えたからです。そして何よりも、使ったことのない実習生部屋より、四年前に使っていたラウンジや寮事務室のほうが、より居心地がよかったことが大きな理由です。
 自分が寮生であった頃は、自分の学年とのみ話をすることが多かったのですが、実習生としてめぐみ館に入ると、全ての学年と親しく話ができました。45回生と49、50、51回生に学年の開きを感じましたが、めぐみ館の根本は変化をしていない、変化をしたならば、いい変化をしていると感じました。寮内の雰囲気や先輩と後輩との関係がより温かいものになっています。実習生の私にはそのように見えても、実際に寮生として生活しているめぐみ館のみんなは、不満や直すべきところがあると感じる人がいることも知りました。
 めぐみ館をより良い館に変えることができるのは今寮で生活をしている人だけです。ぜひ後悔のないように頑張ってほしいと、卒業し毎日が全力だった寮生活を振り返りながら思います。
 もう生徒ではない私を温かく迎え入れ、ウェルカムボードも作ってくれ、一緒に過ごしてくれたことに感謝します。

 

 

 

寮生リレー(フェスティバル活動を通して)
 
「他者の役に立てることが大切で幸せなこと」 T.K(光風館3年 新潟市)
 僕がフェスティバルで一番努力したことは、パネル活動です。フェスティバル期間中は毎日活動に参加して、パネルを完璧に完成させる想いで暑い日差しにさらされ、雨の時には教室に運び、活動していました。一番苦労したことは、活動中に突然雨が降ったことです。幸いにも、パネルが濡れることは防げました。
 僕はこの三年間全て、パネル部門に入って活動しました。パネル部門を選んだ理由は、絵が好きだったからということもありますが、パネルチーフの力になれるように頑張りたかったからです。
0626_no04 フェスティバル一年目、最初は大変でしたが活動していくうちに楽しくなっていきました。そして、見事パネル1位を取った時、チーフが涙を流し喜んでいた姿は、今でもはっきりと覚えています。それから僕は、フェスティバル活動でパネル部門を選び続けました。二年目もパネル1位を取り、今年三年目も見事1位を取ることが出来ました。三年連続でパネル1位を取り、しかも今年の僕ら六甲連合は、総合優勝を果たしたので、言うことなしでした。
 今回の経験は、学校全体を通して諦めずに目標を達成するために頑張ること、みんなで協力し頑張ることを学びました。僕は三年間のパネル活動で完成する楽しみややりきった気持ちを味わえて、フェスティバルを三年間楽しむことが出来て、とても幸せでした。三年間連続1位を取り、三年間パネルチーフが涙を流し喜んでいた顔を僕は忘れることがないでしょう。
 僕はこの三年間のフェスティバルで他者の役に立てることがどれほど大切で幸せなことかを感じました。後輩たちもフェスティバル活動を通して、大切なことや幸せなことに気付くことが出来るかもしれません。ぜひ、フェスティバルを楽しみ、幸せなことを感じてほしいと思います。
 
 
 
「仲間と共に成し遂げた喜びの中で」 S.C(めぐみ館3年 神奈川県)
 私はダンスチーフを務めました。踊ることが大好きだったこと、また47回生のダンスチーフにとても憧れていたことがダンスチーフになりたいと思ったきっかけでした。明るくて元気でみんなを上手にまとめている姿に魅かれ、「私が3年生になったら絶対にダンスチーフをやりたい」と心に決めていました。念願叶ってダンスチーフになることが出来ましたが、今年からフェスティバルのルールが大きく変わり、ダンスチーフは二人から一人になり、とてつもなく大きな不安を抱えながらのスタートでした。
0626_no02 ダンスメンバーに迷惑をかけないようにと、早いうちに振りつけをスタートしました。総合チーフがめぐみ館でしたので、夜遅くまで一緒に振りを考え、仕上げることが出来ました
 いざ練習が始まりダンスメンバーに振り付けを説明すると、「どういうこと?」「早い!」と伝えたいことが伝わらないことが多くあり、振り付けの意見が合わず悩んだり、大きな壁に何度もぶつかりました。
 フェスティバル前は、周りから「雲仙すごいね」と言われていましたが、他の連合の様子を見る心の余裕はなく焦りを感じながら本番を迎えました。結果は「5位」。ショックでした。その場で涙が止まりませんでしたが「雲仙よかったよ」「私にとって雲仙のダンスが一番だったよ」、といろんな人から保護者の方まで声をかけてもらい、穏やかな気持ちになってきました。
 結果は5位でしたが、何かを成し遂げたのは初めての経験でした。今まで何かを責任をもって、最後まで取り組むことからは逃げてばかりの自分でしたが、「やりきることが出来た」ことを実感しています。これから生活の中でも大きな糧となるだろうと自信をもって言える私が、今ここにいます。
 
 
 
寮生活を送る中で
 
「ミーティング」  S.H(大望館1年 魚沼市)
0626_no05 僕が、大望館に入寮してから驚いたことは、寮内の学年別ミーティングがあったことです。ミーティングでは、皆がしっかりと意見を出し合い、この学年をより良くしていこうという活気に溢れていて楽しいものです。
 ですが、良いミーティングばかりではありません。時には、先輩から注意を受けるミーティング、時には、同級生内の喧嘩に発展しそうになります。時には、「ミーティングするぞー」と言っても「めんどくせー」や「かったるいわー」などの消極的な発言が目立つ時もあります。
 今を踏ん張った先に、成長した姿があると思います。楽な道を選ばず、困難から逃げずに、最高の51回生をみんなと目指したいです。
 
 
「多くの決まり事で得られる物」   K.K(大望館1年 神奈川県)
 約二か月の寮生活を過ごしてみての感想は、「色々な決まりが多いなあ」という事です。
 大望館の1年生には、「挨拶」「5分前行動」など多くの決まり事があります。先輩、先生に会ったら挨拶をする。夕飯には、早めに行かなければなりません。初めの頃は、面倒くさいと思っていた決まり事も、時間が立つにつれて慣れてきました。そして、慣れてきたころには、昔の自分と変わっている事に気がつきました。
 多くの縛りがある中での生活は、一見すると窮屈だと思っていました。しかし、人によっては、成長のきっかけになり、自分はここでこれから変わっていくんだと感じることができました。
 
 
「私の分岐点」 K.Y(みぎわ館2年 長野県)
 この寮に入寮を決めた中学3年生の一月。そして、入寮を目前に控え、あと数日しかない不安に、ずっと怖かったのを今も覚えています。また、入寮して出会った50回生のみんなとは、どう関わって、分かり合っていけばいいのかと、入寮したての私は悩んでいました。
 去年は、人と関わることは難しいと痛感した1年で、50回生のみんなとも本当の意味でお互いを知ることができていませんでした。
 小中学校の頃、この問題に出会ったことがなかった私は、ほとんど反射的に守りの体勢をとってガードしていました。ぶつかっていくというのが怖くて、それしかできなかったのだと思います。もしかしたら、みんなもそうだったのかもしれません。このことがみぎわ館50回生の問題であると分かったのは、進級して2年生に上がってからでした。
 ある時に開かれたミーティングでのことでした。仲間の今の現状を変えたいという強い思いに心を動かされ、そして背中を押されたことをきっかけに、今では、みぎわ館50回生のみんなで同じ方向を向こうと努力し始めることが出来ている気がします。
 私自身50回生を信じて、今まで思っていたことや考えていたことを伝えました。言葉が足りなかったかもしれません。でも、伝わっていて欲しいと強く願っています。このミーティングを境に、私は自分の中で何かが変わりだしたと思っています。
 人と関わることは難しい。それは確かにそうです。でも私たちみぎわ館50回生は、分かり合うことができると思います。そうみんなを信じてなりません。
 
 
 
教師からの一言
        山﨑 飛鳥(大望館担任)
 フェスティバル2日目に、開催させていただきました『のぞみ寮物産展』。今年も全国各地、様々な名産物を保護者の皆様から献品していただき、多くのお客様にお届けすることが出来ました。お客様の中には、「毎年この物産展を楽しみにしているんだ」「今年は、家族のために花を買っていくよ」など、多くの喜びの声もいただき、大盛況のうちに終わった物産展となりました。売り上げ総額は、31万円でした。改めまして、ご協力ありがとうございました。 心からの感謝申し上げます。
 今年度のフェスティバルでは、新たに『応援部門』『プロモーション部門』『ものつくり部門』が設立されるなど、例年以上に慌ただしいフェスティバルになったことが、生徒の様子から見て取れました。フェスティバルのことで、私に相談してくる寮生。礼拝消灯時間ギリギリまで打ち合わせのために電話している寮生。学年関係なくそんな姿が数多くみられ、ついには、フェスティバル活動でのぶつけようのないイライラが爆発し、寮務教師と怒鳴り合う寮生もいました。そんな様子がフェスティバル当日まで続きました。特に、人と人との価値観のぶつかり合いが数多くあり、寮生も私も「しんどい」と思ってしまうフェスティバルでした。
 そんなフェスティバルでしたが、終わってみると心も体も成長していることに気がつきます。フェスティバル後のミーティングで「俺は、なんであの時あんなに必死だったのか」「あの時は大変だったなー」 当時の出来事やその時の思いなど、笑いながら自分たちのフェスティバルを振り返っていました。そして最後には、「あの時は、ごめんな」と仲間の健闘ををたたえあっていました。
 今回私が、寮生から教えてもらったことは、『仲間と本気で取り組むこと』の大切さです。仲間と「しんどい」ことに挑戦し、乗り越えた先にある、達成感、成長を共感させてもらいました。のぞみ寮生と共に日々ぶつかり合いながら歩んでいきたいと思います。