のぞみ寮通信

のぞみ通信

2018/05/07

のぞみ通信 2018年4月23日 第236号

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「求めなさい ~I Have A Dream.~」

寮長 東 晴也

 本日入寮される第51回生の皆さん、入寮おめでとう。心から歓迎いたします。
 1986年4月、今から、ちょうど50年前、敬和学園の開校式が行われました。宣教師のマシュウズ先生は、「昨日、アメリカでは、われらの偉大な黒人指導者、マルチンルーサーキング牧師が暗殺されました。キング牧師の生涯と働きの大きな意味を、しっかり覚えましょう。今日誕生した敬和学園高等学校が、この問題の多い世界に、平等と正義と平和をもたらす献身的な若者を、どうぞ育ててくださるように」と述べています。
 キング牧師が首都ワシントンに集まる人種差別撤廃を求める20万人の前で語った演説「I have a dream. 」は、あまりに有名です。一部を紹介します。
「私には夢がある。それは、いつの日か、ジョージア州の赤土の丘で、かつての奴隷の息子たちと、かつての奴隷所有者の息子たちが、兄弟として同じテーブルにつく、という夢である。私には夢がある。それは、いつの日か、私の4人の幼い子どもたちが、肌の色によってではなく、人格そのものによって評価される国に住むようになるという夢である。」
  ノーベル平和賞を受賞したキング牧師の思想には、2つの明確な特徴がありました。
 1つは「非暴力主義」です。彼は「暴力で暴力に報いるのは、ただの暴力を倍化させるだけであって、憎しみを消すことは出来ない。私たちの敵意をなくすこと以外に、解決はない」人を赦せるかどうかということは、私たちに与えられた大きな試練です。傷つけられた時こそ、殴られた時こそ、私たちは生き方が問われる。相手を憎んだり、仕返しをしたりしても、相手は変わりません。しかし、自分が変わることはできる。自分の方が変わり、相手を赦し、愛する勇気を持てるかどうかです。
 2つ目は言うまでもなく「キリスト教」です。キリスト教は、聖書で読んですぐ分かるというタイプのものではありません。なぜなら、キリスト教の真理は「ラブレター」のようなものだからです。ラブレターを1回読んで分かったから捨てる、という人はいません。受け取った人は、くり返しじっくり読んで、書いた人の心を分かろうとし、その人の心に応えていこうとします。これが聖書のメッセージの性格です。これを人格的真理といいます。科学的真理ではありません。自分に問いかけ、ラブコールを送って、誘って、一緒に生きようと声をかける真理です。そんなつもりで、ぜひ聖書を読んでみて下さい。
 聖書には「主はあなたの心の願いを叶えてくださる」(詩編37編4節)とあります。神様は私たちの願いに応えたいと思って下さる方です。だから、いままで本当はこう生きたかったのに出来なかったとすれば、これからは「生きたい自分」を生きてほしい。そのための敬和学園であり、のぞみ寮なのです。
 51回生の冒険が始まります。でも一人ではありません。共に生きる仲間がいます。これから共に歩んでいきましょう。ようこそのぞみ寮へ!

(4月3日入寮礼拝より)

 

 

 

 

 

<入寮礼拝より> 「新入生代表あいさつ」

「3年後を目指して」 N.K(光風館1年 燕市)

 いよいよ入寮の日がやってきました。一年前の自分には、この日、この場にいることなど、全く想像出来ませんでした。
 一年前、私はある公立高校に入学していました。毎日ひたすら出され続ける、たくさんの課題。誰も本音を話そうとしない殺伐とした教室の雰囲気。そんな環境に私は耐えることが出来なくなり、何ヶ月かして学校には行かなくなりました。新たに高校を考えようと思い探しましたが、自分の中では踏ん切りが付かず、決めることが出来ませんでした。

0423_no02 ある時、親が「敬和の会」という会に参加してきました。「人間そのものを育ててくれる学校だ」と聞いた時、この敬和学園に興味が湧きました。その後、学校見学をさせていただき、前校長先生のお話を聴いたり、寮の先生から寮を案内していただいたりしました。その中で、先生と生徒との温かな距離感、学校の明るく、のびのびとした雰囲気、目に見えるものも見えないものも、すべてが今までの高校生活に感じたことのないものでした。この時、初めて「この学校に通ってみたい」と思いました。
 ただ、私の家は新潟県燕市にあります。家から通うことは出来ません。「寮に入らなければならない」と聞き、はじめは少し戸惑いもありました。身の回りのすべてを、自分と寮の仲間とで協力して行わなければなりませんし、多くの時間を寮の仲間と過ごすことになります。自分の思うようにいかないことや、ぶつかり合いなどもあるのではないかと想像出来ます。でも、その一つひとつの経験がこれからの自分の人生のためになるだろうし、ひとりで生きていく力を手に出来るだろうという想いもあり、寮に入ってみようと思いました。一年前の自分には、想像も出来なかった状況に今います。振り出しに戻ることになりますが、これが自分自身を大切にした結果です。
 これからの高校生活で、しっかりとした目標を立て、人との関わりを大切にし、卒業する時に「悔いのない三年間だった」と言えるようになっていたいと思います。

 

 

 

<入寮礼拝より> 「歓迎の言葉」

「出会った仲間と共に」  S.K(めぐみ館3年 東京都)

 新1年生、51回生の皆さん、御入寮おめでとうございます。49・50回生は、皆さんがのぞみ寮にやって来る日をとても楽しみにしていました。
 皆さんの姿を見ていると、二年前の自分の姿が思い出されます。二年前、そこに皆さんと同じように座って入寮礼拝を受けていた私ですが、とても緊張していて、話が全く耳に入ってこなかったことを今でも覚えています。私は入寮礼拝の次の日からインフルエンザに罹ってしまい、まわりの同級生より五日遅れて寮生活をスタートしたのです。これだけ聞けば私の寮生活は、あまり良くないスタートから始まったように思えるでしょう。でもそんなことはありません。寮の先輩、同級生、先生たちは、インフルエンザから復活したばかりの私を温かく迎えてくれ、周りのみんなより遅れて不安で仕方なかった私に優しく接してくれました。同級生との遅れも心配することなく、すぐに打ち解けることができました。
 皆さんには、すでに温かい寮の仲間がいます。それは今皆さんの隣に座っている同じ学年の仲間と、後ろに座っている先輩たちです。寮生活はつらいことや悲しいことも、もちろんありますが、それを吹き飛ばしてしまうくらい、楽しいことやうれしいこと、幸せなことがたくさんあります。つらい時や悲しい時に支えてくれる仲間もいます。今は緊張と不安でいっぱいだと思いますが、私たちもここまで過ごしてきました。
 皆さんの寮生活がとても充実するものであり、たくさんの温かい仲間に恵まれ、「のぞみ寮」に入寮して良かったと思える日が来ることを願いつつ歓迎のあいさつとさせていただきます。

 

 

 

<入寮礼拝より> 「保護者代表あいさつ」

「入寮させるに当たって」      保護者代表(めぐみ館保護者 大阪府)

 なんとか無事に入寮の日を迎えることができました。今日、入寮生全員が揃って寮の先輩や先生たちとも初めて顔を合わせることができました。一月の入試と合格発表から二カ月半。入寮生も家族も期待と不安でドキドキしながら準備をしてきて、本来ならば今日は緊張のピークを迎えているはずです。ところがどうでしたか? 初対面なのに、まるで以前からの知り合いのように名前で呼び合えています。お互い、緊張や不安よりも「本物にやっと会えた!」というワクワク感の方が強かったのではないでしょうか。
 先月、のぞみ寮から手紙が届きました。てっきり事務連絡かと思って開けてみると、各館全員の写真や担当の寮の先生からのメッセージが入った書面と一緒に、小さな封筒が同封されていました。それは同室になる先輩たちからの、心のこもった手紙でした。更に寮から電話もかかってきて、同室の先輩たちと直接話しができた人も多いと思います。私も正直ビックリしました。のぞみ寮は、入寮の前からここまでやってくれるのかと。
 この事前のやり取りがあったからこそ、緊張や不安も和らいで、いい雰囲気で今日の「初対面」ができたのだろうと思います。入寮する本人はもちろんですが、様子を見ておられた家族のみなさんも安心されたと思います。
 私事ではありますが、私自身も敬和の卒業生なんです。30数年前に卒業した12回生です。もちろん時代は違いますが、みなさんと同じように敬和学園と寮生活を経験した一人です。実は、今日の入寮生の保護者さんの中にも、私と一緒に寮生活をしていた同級生がおります。親子二代で同級生になりました。そして同じく同級生だった友人の息子さんも、ここに寮生としておられます。ちなみに、事務の瀧澤さんは私の一年先輩だったりします。そんなわけで、入寮生の保護者という立場なのですが、懐かしいやら何やらで、ちょっと複雑な心境でここに立っております。ただ言えるのは、私たちの時代よりも、今ののぞみ寮の方が、間違いなく楽しそうだということ。私たちの時代では入寮もぶっつけ本番でしたし、先輩も厳しかったんです。私が入寮した日は、先輩が怖かったのと、むちゃくちゃ緊張していた記憶しかありません。
 新しく迎える入寮生に思いを馳せて、まだ見ぬ人に心を込めてメッセージが書けることは凄いことだと思います。こんなことが、いつから始まったのかは知りませんが、のぞみ寮は確実に進化しています。時代を重ね、歴代の先輩たちが積み重ねた良い意味での伝統が引き継がれながらも、一人ひとりを大切にする関わり方や優しさが、今は更に深まっているんだろうなぁと感じます。
 さあ、入寮生のみなさんは今日から新鮮な生活が始まります。最初はしんどいでしょう。でも、あっという間に慣れていきます。落ち着いてきたら、それぞれ寮生活の楽しみ方を見つけていきます。多分ほとんどの人はホームシックになる暇もないと思います。どちらかと言えば、心配なのは本人よりも私たち家族の方でしょうか。
 明日の入学式後、家族は家に帰ります。多分しばらくの間、わかっていても無意識に家の中でこどもを探してみたり、名前を呼んでしまったり、そのうち心配になってきて「うちの子、大丈夫ですか?」なんて寮に電話をかけたりすると思います。心配というより、家族の方が寂しくなるんでしょうね。でも、保護者として送り出す以上は、寮の先輩たちや先生方、そして本人を信頼して三年間しっかり見守っていきたいと思います。ただ、寮生活という生活の中では綺麗事だけではなく、いろんなこともあるかと思います。たとえ何か問題があったとしても、しっかりと一人ひとりに向き合っていくのが、のぞみ寮であり敬和の教育だと思っています。私たち家族も、近くからまた遠く離れた地から、いろんな形で応援していきたいと思っています。入寮されるみなさんは、見守ってくれている家族の存在を感じながら、のびのびと、敬和での寮生活と学園生活を味わってください。成長を楽しみにしています。
 最後になりましたが、のぞみ寮の先輩のみなさん、一年前、二年前の自分たちのことを思い出しながら、かわいい新入寮生を向かい入れてやってください。
 そして寮の先生方、今日から64名の個性豊かな仲間が加わりました。これからの三年間、いろんなこともあろうかと思いますが、辛抱強く付き合ってやってください。どうかよろしくお願い致します。

 

 

 

 

<新入生を迎えて>

「1年生を迎えて気がついたこと」  Y.R(みぎわ館3年 新潟市)

0423_no03 そろそろ私がみぎわ館に入って半年になります。不安そうな顔で入寮してきた1年生を見ていると、私が入寮した時のことを思い出します。学校で仲良くしていた友人が数名いる中に、私は途中入寮してきました。知っている人がいたとはいえ、ほとんどが知らない人たちの中で生活するのは、どういう風に過ごしていいのか分からず、とても不安でした。しかし、そんな私に先輩や後輩、同級生、時には他の館の人が話しかけてくれたことがとても嬉しかったのを覚えています。
 その時と同じか、それより不安そうな顔をしている1年生を見ていると、私がしてもらったようにしてあげたいと思うのです。そうなると、あらためてコミュニケーションが必要になることに気が付きました。しかし、私はコミュニケーションをとることが得意ではありません。それでも、一年生のほうが私よりも緊張していることは確かなので、緊張している自分の心に折り合いをつけながら、後輩達と接しています。
 「自分の辞書を通して言った言葉と相手の辞書を通して思った言葉は違う」
 私はこの言葉が好きです。私の思うコミュニケーションは、自分の言葉と相手の辞書の差が少なくなるように会話をすることです。私はコミュニケーションが得意ではないけれど、相手との辞書の差を埋めていくことを目標に、残りの寮生活は自分ができる範囲の中で、最大限にのぞみ寮生と交流を深めていきたいと思います。

 

 

「初めての後輩」  H.S(大望館2年 神奈川県)

0423_no04 僕がもう2年生です。入寮、入学してから今日まであっという間に過ぎきました。一年前の僕は寮にも慣れていけず、ここへ来たことへの後悔しかありませんでした。
 そんな時に心の支えとなったのが教会です。教会の人達が暖かく迎えてくれ祈ってくれたことと、毎週教会に通ったことで、気持ちをリセットし、新しい週を迎えることができました。この経験を生かして二年次は、僕が他者へ祈れる人になりたいと思っています。一年生にも、色んな経験や思いをきっかけに、慣れていって欲しいと僕は、考えています。
 僕たちが2年生にあがり、五十一回生が入ってくるにあたって、2年年生合宿でウェルカムボードを作りました。入ってくる1年生の名前を見るとかっこいい名前が多く、入寮してくる一人ひとりに会うのが楽しみになりました。
 当日、僕たちは皆で生姜焼き弁当を食べ、準備万端な状態でした。そして時間になり作ったウエルカムボードを持ち大望1年生が出てくるのを待ちました。一年前のこの瞬間は、緊張でいっぱいだったのを思い出しました。
 僕の部屋には、二人の後輩が入ってきました。一年しか学年は違いませんが、後輩はかわいいなと思います。
 もうすぐ一ヶ月になろうとしています。これから始まる生活を一緒に楽しんでいきたいと思います。

 

 

 

新職員紹介

 初めまして。4月から寮で一年間働かせていただくことになりました川崎千夏です。私は、三年前に敬和学園高校を45回生で卒業しました。高校時代は、通学生として学生生活を送りましたが寮生の楽しく充実した日々を過ごしている姿に憧れを持っていました。今回、ご縁がありこのような形で寮生の皆さんと過ごせる事を大変嬉しく思います。まだ、未熟者で分からないことばかりですが、一年間をかけて学び成長していきたいです。不安もありますが、寮生の皆さんと過ごす時間が楽しみです。精一杯頑張りますのでこれからよろしくお願い致します。

 

 


 
 教師からの一言

          光風館担任 片岡自由
 51回生の入寮日。ガチガチに緊張している新入生を笑顔で迎え入れる先輩たち。この光景は、いつも私たちの心を温かくしてくれます。「新入生が来る!自分が先輩になる!」という嬉しさと覚悟を持った、その時から「こんなにもグッと表情が変わるのか!」と驚かされることもあります。先輩が新入生を温かく迎え入れる、それは新入生の姿と一・二年前の自分を重ね合わせているからかもしれません。たくさんの期待と不安を胸に迎えた、あの日を経験しているからこそ、新入生の気持ちに共感して、優しく接することが出来るのだと感じています。
 51回生が入寮して三週間が経ち、全体的に寮生活のリズムに慣れてきたようです。いつも同じ時間に食事を摂り、礼拝の時間で仲間の話を聴く。のぞみ寮はこの「いつも通り」を大切にしています。しかし、寮生全員が「いつも通り」を過ごしていても、全員が同じことを感じて、全員が同じ考えを持つことはありません。それがまたおもしろいのです。元気いっぱいで幸せを感じる時もあれば、そうではない時もたくさんあります。新しい仲間との出会いに喜ぶ時もあれば、苦しんでいる仲間に寄り添う時もあります。そして、今まで知らなかった自分に出会う時もあります。そのたくさんの出会いこそが、ひとり一人を大きく成長させてくれるきっかけになると信じています。。寮生の変化に感動し、私たち寮務教師も共に成長していきたいと思います。